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本編

モテる幼馴染の秘密 7

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 唇に全神経が集中したような感覚に、陥った。

(……ぁ)

 マルクスの舌が、俺の唇を割って口腔内に入ってくる。

 ぬちゃりというような水音が耳に届いて、いたたまれなくなった。

「ぁ、あっ」

 そして、腰に回される太い腕。

 ぐっと自身のほうに引き寄せられて、ぴたりと身体が密着する。

 もちろん衣服は着ているので、素肌で密着しているわけではない。

 なのに、心臓がうるさい。どくどく、ばくばく。どう表せばいいかわからないくらい、鼓動が早い。

 口腔内で逃げようとする俺の舌を、マルクスの舌が絡め取った。そのまま唾液を交換するかのように触れ合わされて、舌先を吸われて、身体がびくんって跳ねる。

 こんなのダメだって、わかっているのに――。

(……気持いい)

 頭がぼうっとしてきて、マルクスの手で与えられる快楽を享受したいって、思ってしまう。

 絡めていないほうの手で、マルクスの衣服を強くつかむ。俺の手は、自分でも驚くほどに震えていた。

 さらには、もっともっと快感が欲しいって、脳が訴えてきて。その所為で、おずおずと舌を差し出して、自らマルクスの舌に絡めた。

 瞬間、マルクスの身体が震えたのがわかった。

「……調子、乗るけど」

 唇をほんの少しだけ離す。吐息のかかる距離で、マルクスが甘くそう囁いた。

 俺の目を見つめて、そう言ってくるマルクス。

 その声にじんと身体の芯が熱を持って、忘れようとしていた気持ちがどんどん膨れ上がる。抑えきれなくなる。

(本当は、ずっと好きだった……)

 本当の俺は、ずっとマルクスのことが好きだった。

 いつからとか。そんな明確な時期はわからない。ただ、多分マルクスよりも自覚は早かったと思う。

 けど、身分が違うとか。似合わないとか。

 余計なことばっかり考えて、この気持ちにはふたをすることにしたのだ。

 ……まさか、両片想いみたいな関係だったなんて、想像もしていなかったけれど。

「なにも言わないっていうことは、いいっていうことか?」

 マルクスが俺の額にこつんと自身の額をぶつけて、そう問いかけてくる。

 ……ダメ。嫌だ。無理だ。

 喉元まで出かかった言葉が、つっかえて出てきてくれない。

 むしろ「好き」とか、「いいよ」とか。「好きにして」とか。

 そんな言葉が出てきそうになって、ぐっと息を呑んでこらえた。

「……好きに、すれば」

 結局、俺の口から出てきたのは可愛げなんてかけらもない言葉。

 でも、マルクスにはそれでよかったらしい。奴は俺の身体を、ソファーの上に優しく押し倒す。

「本当、無理だったら言ってくれ」
「んっ」

 俺の返事を聞く前に、マルクスがまた唇を重ねてきた。

 今度はちゅっと音を立てて、ついばむようなキスを交わす。

(……熱くて、柔らかい)

 今日初めて経験したキス。感触は、柔らかくて熱い。

 単純な感想かもしれないけれど、俺にとっては重要なことだった。

(マルクスの唇って、甘い……)

 もしかしたら、幸福感から味覚がおかしくなっているのかもしれない。

 なんて思いつつ、マルクスとどちらともなく唇を重ね合わせる。

「……口、開けて」

 何度か唇を重ねていれば、マルクスが小さくそう告げてくる。

 逆らう意味もなかったから、俺は言われた通りに唇を開いた。うっすらと開いた唇に、マルクスの舌が強引にねじ込まれる。

「んっ、ん」

 先ほどよりも荒々しく、口腔内を舐め回される。

 マルクスの舌は、これっぽっちも優しくない。乱暴で、荒くて、気遣いなんてちっともない。

 でも、なんだろうか。

 ……マルクスの余裕のなさが伝わってくるみたいで、少し嬉しい。

(……ってか、ちゃんと反応してるじゃん)

 太ももに当たるソレは、確かに熱を持って硬くなっているのがわかった。

 ……反応しないなんて、嘘じゃんか。

(それとも、キスしてる相手が、俺だから――?)

 俺だから、反応してくれているのか。そうだったとしたら……うん、女々しいかもだけど、嬉しい。

 無意識のうちに、そう思っていた。
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