魔物使いの仲間と歩む異世界生活

シュミ

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ゴブリンとの会話

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 俺とコメ丸はボスに連れられ、中央にある寝床へと招かれた。
 寝床は枝を中心に目掛けて斜めに立て掛けた四角錐型の構造で、その上を葉っぱで覆い屋根を作っていた。しかし少し雑さが目立つ。中に入ると床には気持ち程度の葉っぱが敷かれており、地面よりは幾分か柔らかい。

 ボスは地面に座ると、お腹が膨らんでいる女のホブゴブリンを肩で支える。

「妊娠してるのか?」

『ああ、その通りだ』

 すると俺たちの後にもう一体、ホブゴブリンが入ってきた。そのホブゴブリンは他二体とは違い、身長は低く、腰も曲がっており、木で作った杖を着いて歩いている。見るからにおじいちゃんといった感じの風貌をしていた。

『長老、どうしたんだ?』

『ボスも怪我をしとると思って見に来たんじゃが、どうやら来て正解だったようじゃのぉ』

『すまん。いつも世話になるな⋯⋯⋯⋯⋯』

『良いんじゃよ。ほれ、怪我を見せてみ』

 ボスはコメ丸に激突されて、腫れた顎を見せた。

 長老はボスの隣に座ると、杖を傷の方に向けた。

『<癒しの光ヒール>』

 長老がそう言うと杖の先から緑の光が出て、ボスの傷ついた腕を癒し始めた。

「悪い事をしたな⋯⋯⋯⋯⋯」

『謝ることでは無い。戦いは全力でぶつかってこそだからな』

 このボス、すごく男らしい。
 なんか憧れるな。

 そうして数分たち、ボスにあった傷は完全に癒えた。

『ありがとう長老』

『ワシに出来ることをしたまでじゃよ』

『なあ、長老。そこの人間も次いでに治療してやってくれ』

「いいのか?」

『ああ。昨日の敵は今日の友、ってのは言い過ぎかもしれないが、まあそういう事だと思って受け取ってくれ』

「ありがとう」

 俺はボスの【破勁ハッケイ】を食らった際に負ったであろう傷を見せた。

『<癒しの光ヒール>』

 長老の杖から出る緑の光により傷が癒えていく。

「これは治癒魔法なのか?」

『治癒魔法と呼べるほどの治癒能力はないですが、似たようなものです。これがワシに与えられた力なのです』

 治癒魔法より劣っているから、ボスの顔にある傷は跡が残っているのか。
 だとしても傷を癒せるのは凄い。

『すげぇなじいさん。ホブゴブリンで魔法が使えるやつなんて相当珍しいだろ?』

 コメ丸も感心しているようだ。

『そういうお前もスライムというには、あまりにも強すぎるぞ』

 ボスはコメ丸に対してそう言う。

『まっ、オレは特別なスライムだからな!』

 そう言ってドヤ顔をするコメ丸。

「俺のスキルでインチキしてるだけだよ」

 俺はニヤリと笑みを浮かべてそう言う。

『お、おい、ユウ! ほんとの事言うなよ⋯⋯⋯カッコつけられねぇじゃねぇか⋯⋯⋯⋯!!』

 そう言って少し拗ねるコメ丸。

 するとボスは俺の方を見て首を傾げながら言った。

『ところでお前たちはどうして俺らの―――ゴブリンの言葉がわかるんだ?  亜人って訳じゃないんだろ?』

 亜人なら言葉が分かるのだろうか。

「【クレナの加護】ってのを持ってるんだけど。それのおかげだよ」

『『『クレナ様の⋯⋯⋯⋯⋯!?』』』

 彼らが驚いた顔をして言った。

『⋯⋯⋯⋯何者なんだお前』

 やはりクレナという女神の事はホブゴブリンたちも知っているらしい。

『だがこれで言葉が伝わる謎は解けた。それで人間―――』

「ユウでいいよ」

『ユウ、話をすると言っていたが何か聞きたい事でもあるのか?』

「ん。1つ聞きたいんだけど、どうしてこんな人里に近いところに住んでるんだ?  危険なのはわかるだろ?」

『ああ⋯⋯⋯⋯⋯』

 どこか悔しそうな表情を浮かべてそう言うボス。何かを抱えているような、そんな印象を受けた。

「⋯⋯⋯出来ることなら早くここから離れた方がいい」

 ゴブリン達がここに住んでいる限り、クエストは消えず冒険者が寄ってくるだろう。
 それなら早いところ住処を変えるべきだ。

「俺はたまたま魔物の言葉が分かるからこうやって話し合いが出来ているが、他のやつはそうもいかない。仲間を―――家族を殺されたくないならすぐにでも住処を変えるべきだ」

 俺がそう言うとボスは難しい顔をして言った。

『⋯⋯⋯⋯ああ、分かっている。だが出来ないんだ。少なくとも今はな⋯⋯⋯⋯』

「どうして?」

 するとボスはまずここに住むことになった理由から話し始めた。

『元々俺たちはこの森のもう少し深い場所にある、洞窟辺りで暮らしてたんだ。でもある日、何故か双角狼ラグールの群れが俺たちの住処を襲ってきた。もちろん俺たちは戦った。この顔の傷はその時に出来たものだ。だが勝てなかった。仕方なく俺たちは洞窟を捨て、追ってくる双角狼やつらから必死になって逃げた。そのせいで嫁と長老の体調が悪くなってな。だからここで暮らすしかなくなったんだ⋯⋯⋯⋯⋯⋯』

 なるほど。
 他の種族に住処を奪われたのか。

 双角狼ラグールって確かあのクソ高い短剣の元になっているやつだよな。

「コメ丸、双角狼ラグールってどれくらい強いんだ?」

『めちゃくちゃ強いぜ。仲間思いで、連携が上手いからな。狙われたら終わりだと思った方がいいくらいだぜ。この森なら文句なしの最上位捕食者だろうよ』

 この森を代表する捕食者か。
 あれ、昨日俺この森の草むらで寝てたよな。
 食われなくてよかった⋯⋯⋯⋯⋯。

『でもおかしいんだ。双角狼ラグールは肉食だけど、比較的温厚な性格なんだぜ。少なくとも他種族の住処を荒らすような真似は絶対しない。あいつらは住処を置かず常に群れで移動する魔物だしな。それにこの森じゃ敵なしだ。そんな事しなくても飯に困る事は無いだろうよ。ましてやアイツらの好みでもないゴブリンを襲うなんて絶対有り得ないことなんだよ』

『ああ、確かにその通りなんだ。だから対応も遅れた。それに双角狼やつらの目的は俺たちを食うではなく殺したがっているようだった。まるで恨みでもあるみたいにな⋯⋯⋯⋯。それにここんとこ、双角狼やつらの気性が荒くなっている気がするんだが、そんな事有り得るのか?』

『いや、有り得ない事だぜ』

 この森に住む彼らですら理解出来ない双角狼ラグールの行動。
 自然の摂理に反した行動という訳だ。
 何か大きな要因がないと起こらないはず。
 例えば、ゴブリンの移住で二日も飯抜きになったコメ丸みたいな感じで、ゴブリンを襲わないといけなくなった要因が。

「ここに住むことになった理由はわかった。移動もしばらくは出来そうにないんだな⋯⋯⋯⋯?」

『ああ、そうだな。ここは近くに川がある。それに食べ物も豊富だ―――』

 生きるために必要なものが揃っているのか。大方、住民を襲ったのは自分たちの食料を守るためだろう。弱肉強食の世界で生きる彼らからしたら当然の事だ。欲しいものは力で奪うしかない。

『―――他の場所を見つけるにもしばらく移動し続けないといけない。だが嫁はこの状態だし、長老もまだ本調子じゃない。それに双角狼ラグールも何処に潜んでいるか分からん。とても長旅に耐えられる状況じゃねぇんだ』

 苦渋の決断というわけか。
 長旅で目に見えて失う命より、危険でもここに住むことを選んだ。

『これ以上、仲間を失うのはごめんだ⋯⋯⋯⋯⋯』

 ボスは拳を強く握り、悔しそうな表情を浮かべてそう言った。

 そんなボスの頬に嫁さんは手を当てる。
 その手は弱々しく、上げるのも辛いのか少し震えている。

『⋯⋯⋯ごめんなさい⋯⋯⋯。私がもっと、しっかりしていれば⋯⋯⋯⋯』

『ち、違う!  お前は悪くない!  この群れのボスとして住処を守れなかった俺が悪いんだ!』

『お二人とも、自分を責めてはいけませんぞ』

「ああ、その通りだ。誰も悪くない」

 そう。誰も悪くないんだ。たとえ住処を奪った双角狼ラグールであっても、そうしなければならない理由があった。だからそれを責めることは誰にも出来ない。なぜならこれは自然で暮らすものの宿命なのだから。それを分かっているからこそ、ボスは自分を責めることしか出来ないのだろう。

 双角狼ラグールの襲撃で相当無理をしたのだろう。ボスのお嫁さんはあまり良い状態とは言えない。彼女にこれ以上の無理をさせるのはお腹の中にいる赤子だけでなく、母体までもを危険に晒すことになる。仮に担架などを使って移動するとしても、行き先は定まっていないし、双角狼ラグールがどこに潜んでいるか分からない。現状、ここから移動するのが最も危険な行為となっている。

 となれば、出来ることは一つしかない。ゴブリンたちがここで安全に暮らせるようにする、という事だけだ。そのためにはとりあえず人間の襲撃を無くさなければならない。
 それを実現するには、このゴブリン討伐のクエストをに終わらせる必要がある。ものすごい矛盾だな⋯⋯⋯⋯⋯。

 だが俺ならその矛盾を実現出来る。
 ギルド穣が言っていた。魔物をテイムした場合でも報酬は支払われる、と。
 つまりはここにいるゴブリン達を全員テイムすれば、実質的に討伐と同じ扱いになり、クエストは完全クリアとなるわけだ。

 考えがまとまった俺は口を開く。

「なあ、お前ら。俺の仲間になってくれ!」

『『『えっ?』』』

 彼らは俺を見つめ、困惑の表情を浮かべてそう言った。
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