公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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80 公爵令嬢は友情を確かめる

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婚約承認の挨拶をしに、お父様と私でお城へ向かった。

到着し、国王様とロナウド王子のもとへ向かう。



「待っていたぞ、アーノルド、フランドール嬢。
よく来てくれた。」

「この度のフランドールへ婚約のお話、誠に有難うございます。
先立てて手紙でお伝えいたしました通り、謹んでお受け致します。」

「先日手紙を受け取って、内容は把握しておる。
いやー、ついに婚約を受けてもらえるかと思うと、嬉しくて嬉しくて。
ロナウドとも、この話はしっかりとしておる。
本人も納得済みだ。」

やっぱり、ロナウド王子も知ってたのか。

「フランドール嬢、お主は良かったのか?」

「反対する理由がございません。」

「うむ、では正式に婚約を決定させる。」

これで私は正式に、ロナウド王子の婚約者になるんだ……

「父上、アーノルド公爵閣下、少しフランとお話しする時間を頂いてもよろしいでしょうか。」

「ああ、もちろん。
お互いの思惑もあるだろう、不安があるなら二人でしっかりと話し合って来なさい。」



ロナウド王子に中庭へ呼び出された。

「フラン、大丈夫か?」

「え、何がですか?」

「顔色悪かったから。
体調悪い?」

「いえ、全然。
ご心配おかけして申し訳ありません。」

「……だったら、婚約の事?」

「…………」

「俺が婚約者なのは、嫌か?」

「そう言う訳じゃないんです!
ただ……」

今まで通りの関係でいられなくなるのが辛いってだけで……

ロナウド王子、セシル様、ポスカ君、リリーちゃん、ケン、レベッカちゃん。

私の大切な友達。

一緒に遊んで、料理を作って、時々馬鹿な事をして叱られて……

友達がほとんどいなかった俺には体験したことのなかった出来事。

皆んなと友達でいられた事があまりにも楽しすぎて、失うには酷すぎる。


「ロナウド王子は婚約の件、いつからご存知だったのですか?」

「いつから?
うーん、父上は随分昔から、フランが俺の嫁に来ればなぁと仰ってたから、いつ婚約の申し出をしたのかは知らなかったけど。」

「そ、そうだったんですか?」

「おう。でも、一緒に過ごした時間が長かったし、父上もフランを気に入ってるから、フランが婚約者になるって言われた時も何となく「やっぱりな」って思ってた。」

「嫌だとは思いませんでしたか?」

「全然嫌じゃないぞ?
フランと一緒にいるのは、楽しいし。」

「……でも、今までのような関係ではなくなってしまうじゃないですか。」


ロナウド王子は前に進もうとしている。

でもまだ、私にはその一歩が踏み出せない。

かけがえのない、大切な時間。

それが全て失われる覚悟を、私はまだ出来てない。


「なんで?
今まで通り、親友としての関係も続けていけばいいだろ?」

「へ?」

「いやいや、逆になんで婚約者になったら親友やめなきゃいけないんだよ。」

「……でも、周りの皆さんはそうは思わないんじゃ。」

「周りの奴らがどう言おうと、俺らが親友なのは変わらないんだ。
それでいいじゃん。」

「……ずっと変わらないでいてくださるんですか?」

「もちろん。
アイツらだって変わらないだろうし。」

「アイツら?」

「セシルも、ポスカも、リリーも、ケンも、レベッカも、ずーっとフランの友達だって言い続けるはずだ。」

「……皆んなも、変わらずにいてくださるでしょうか。」

「むしろ何があっても今まで通りだろ。」


……だとしたら、私は何を恐れていたんだろう?

不安になることなんて何もなかったんだ。

そう思うと、急に力が抜けてしまった。

「おっとと、大丈夫か!?」

よろけてしまって、ロナウド王子に肩を掴まれ支えられた。

「し、失礼しました!
……なんだか、私は一人で勝手に心配事を作ってたみたいです。」

ため息をつきながら思わず頭を抱えた。

「ははっ、相変わらずフランは思い込みが激しいよなぁ。」

「そ、そんな事はありません!
と言うか、相変わらずってどういう意味ですか!?」

「フラン、ポスカに背抜かされてたの、気付いてた?」

「……え?」

「ほらな、ポスカがあんな雰囲気だから、いつまでも小さいまんまだと思ってただろ。」

いつの間にぃー!?

あの小さくて可愛いポスカ君が、私より背が大きくなってただなんて!!

というか、彼が成長するだなんて想像出来なかった……

「なんかもう、思い込みがどうこうより、私が一番小さかった事の方がショックです……」

「前から思ってたんだけど、なんで小さいとダメなんだ?」

「だって、子供だと思われてしまうじゃないですかぁ。」

「でも、俺ら子供だろ?」

「うぐっ、確かにそうですけど。
でも、背が高くなりたいんです!」

「なんで?」

「背が高いとカッコいいじゃないですか!」

「小さくてもカッコいいやつはカッコいいぞ?」

「背が高い方が大人っぽいじゃないですか!」

「俺らはこれから大人になるんだぞ?」

「えーっと、高いところに手が届くじゃないですか。」

「ブフーッワッハッハッハッ!!!」

「何で笑うんですか!?」

「ヒーッヒッヒッ、何だよその理由。
ハァー、笑いすぎて涙出てきた。
そんなの、俺が代わりに取ってやるよ。」

「それは、ロナウド王子は困った人を助ける勇者様だからですか?」

「あぁ、それな。
でも、フランもそうだろ?」

「えっ?」

「自分で言うのも何だけど、初めてフランと会った頃の俺って、めちゃくちゃワガママだっただろ?」

「あぁ、ケンカして大泣きさせた時の頃ですね。
でも、あの頃から徐々に性格変わられましたよね。」

「……いくら幼児の頃だからって、女にケンカに負けて大泣きしたとか、恥ずかしすぎるから誰にも言うなよ?
あの時作った饅頭のおかげで、父上と会話のきっかけが作れたんだ。
あの時フランが友達になってくれてなかったら、今の俺はなかったと思うんだよ。」

「ロナウド王子……」

「あの時だけじゃなくても、俺が困ったときに一番に助けてくれるのはフランなんだ。
だからフランも、俺にとっての勇者なんだよ。」


恥ずかしげもなく言われたその言葉を聞いて、得も言われぬ感情が込み上げて、思わず涙がこぼれ落ちた。

この方が、私の婚約者になるんだ……

「フラン?」

「私、ロナウド王子が婚約者で良かったと思いました。」

「俺も、フランで良かったと思ってる。
これから宜しく。」

ロナウド王子が手を差し出す。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

差し出された手を掴み握り返す。

堅く握手をし、互いの友情を確かめ合う。

……色気ねぇなあ!



この日、私は初めて背が低くて良かったと思った。
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