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Episode03:I don't like you
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「今回のコラボ商品見た?」
TOMOKAが案として送ってきたメイク用品の資料は、何度も見た。
「はい。拝見させていただきました。素敵だと思います」
「おべっかはいいの。本音を聞かせて」
「本音を言うと……ちょっとROSSETTOにしては、敷居が低いというか、シンプルというか」
「そこなのよ!」
手を大きく叩いて、TOMOKAは興奮したように身を乗り出した。
「そこですか?」
「今回はあえてROSSETTOの商品の売りとは違った路線で提案してみたの。テーマは育児で時間のない人や、やむを得ない事情で華美な格好ができない人達が、それでもあなたは綺麗になれるって意味を込めて」
「はい」
TOMOKAの言葉を、萌衣はメモ用紙にメモしていく。
「それなのに、派手なモデルを使ってしまったら、彼女らは私たちには派手すぎるって敬遠しないかしら?あの広告で彼女たちに私のメッセージは届くかしら?」
萌衣が想像していた以上に、萌衣側とTOMOKA側の認識がずれていたようだった。
こんな風に綺麗になりたいという姿を想像して、商品を買ってもらうことが化粧品会社の目的とするところだ。
しかし、TOMOKAの場合はもう少し違った視点を持っているようだ。
ROSSETTOはロメーヌが、絹江の弱い肌に合うと見つけて作った口紅がスタートだ。
誰かが誰かを想う気持ちが商品となり、その気持ちを汲み取って購買者が商品を購入する。
いつの間にか大きな企業となったROSSETTOの商品は、流行や時代の変化もあり華美さが目立つ商品も少なくない。
TOMOKAの視点は、今のROSSETTOにとって必要な視点だと萌衣は思った。
「確かにおっしゃる通りです。認識がずれていたようで、大変申し訳ありませんでした」
深く頭を下げて萌衣は謝罪の言葉を述べる。
「こちらこそ、広告が厳しいだなんて上から目線で物を語ってしまって申し訳ないわ。大手企業とのタイアップで、熱が入りすぎちゃったみたい。もしかしたら、私の提案した商品は、ROSSETTOには釣り合わないと言われてしまった気がしちゃって」
自嘲気味に言うTOMOKAに、萌衣は大きく首を振った。
「そんなことありません!私も、大きな企画が実はこれが初めてなので上手くTOMOKAさんの気持ちを汲み取れていなかったですが、確かに言われてみれば、私も自分には釣り合わないと諦めた経験あります。もう一度いちから一緒に考えなおしましょう!」
ガタっと席を立って力説する萌衣に、TOMOKAは呆気にとられていたようだった。
「意外と熱血タイプなのね、清水さん。メッセージでは淡泊そうな印象だったけど」
「え?あ、えっと……そうですか?」
「ええ。でもありがとう」
「いいんです。成功させたいです。私、この仕事」
「ところで、ちょっといい案があるのだけど、あなたの上司のミスターブラウンは許してくれるかしら」
突然ジャンの名前が出てきて、困惑する。
ジャンはROSETTTOの会社の社員であり、萌衣の先輩なのでTOMOKAと一緒に仕事をしたことがあったのかもしれない。
ただ、彼女の言い方に、なぜかジャンに対しての親しさのようなものを感じたのだ。
気のせいであればいいと思ったのだが、ジャンがTOMOKAの好きな食べ物を知っていたことを思い出し、疑念が疑念を呼び起こす。
二人はいつからの知り合いなのだろう。
「大丈夫だと思います。余程のことでなければ、自由にやらせていただいておりますので」
「なるほどね……。ということは、あなたと話がまとまったら、好き勝手やってもいいって話よね。ところで、清水さん、この後もう少し時間あるかしら?」
「え、あ、はい」
帰国するのは明日の昼だ。
今日一日はTOMOKAと話し合いをするために、時間を設けてある。
「ちょっと違うお店に行って、飲みながら話し合わない?素敵なバーがあるのよね」
TOMOKAが案として送ってきたメイク用品の資料は、何度も見た。
「はい。拝見させていただきました。素敵だと思います」
「おべっかはいいの。本音を聞かせて」
「本音を言うと……ちょっとROSSETTOにしては、敷居が低いというか、シンプルというか」
「そこなのよ!」
手を大きく叩いて、TOMOKAは興奮したように身を乗り出した。
「そこですか?」
「今回はあえてROSSETTOの商品の売りとは違った路線で提案してみたの。テーマは育児で時間のない人や、やむを得ない事情で華美な格好ができない人達が、それでもあなたは綺麗になれるって意味を込めて」
「はい」
TOMOKAの言葉を、萌衣はメモ用紙にメモしていく。
「それなのに、派手なモデルを使ってしまったら、彼女らは私たちには派手すぎるって敬遠しないかしら?あの広告で彼女たちに私のメッセージは届くかしら?」
萌衣が想像していた以上に、萌衣側とTOMOKA側の認識がずれていたようだった。
こんな風に綺麗になりたいという姿を想像して、商品を買ってもらうことが化粧品会社の目的とするところだ。
しかし、TOMOKAの場合はもう少し違った視点を持っているようだ。
ROSSETTOはロメーヌが、絹江の弱い肌に合うと見つけて作った口紅がスタートだ。
誰かが誰かを想う気持ちが商品となり、その気持ちを汲み取って購買者が商品を購入する。
いつの間にか大きな企業となったROSSETTOの商品は、流行や時代の変化もあり華美さが目立つ商品も少なくない。
TOMOKAの視点は、今のROSSETTOにとって必要な視点だと萌衣は思った。
「確かにおっしゃる通りです。認識がずれていたようで、大変申し訳ありませんでした」
深く頭を下げて萌衣は謝罪の言葉を述べる。
「こちらこそ、広告が厳しいだなんて上から目線で物を語ってしまって申し訳ないわ。大手企業とのタイアップで、熱が入りすぎちゃったみたい。もしかしたら、私の提案した商品は、ROSSETTOには釣り合わないと言われてしまった気がしちゃって」
自嘲気味に言うTOMOKAに、萌衣は大きく首を振った。
「そんなことありません!私も、大きな企画が実はこれが初めてなので上手くTOMOKAさんの気持ちを汲み取れていなかったですが、確かに言われてみれば、私も自分には釣り合わないと諦めた経験あります。もう一度いちから一緒に考えなおしましょう!」
ガタっと席を立って力説する萌衣に、TOMOKAは呆気にとられていたようだった。
「意外と熱血タイプなのね、清水さん。メッセージでは淡泊そうな印象だったけど」
「え?あ、えっと……そうですか?」
「ええ。でもありがとう」
「いいんです。成功させたいです。私、この仕事」
「ところで、ちょっといい案があるのだけど、あなたの上司のミスターブラウンは許してくれるかしら」
突然ジャンの名前が出てきて、困惑する。
ジャンはROSETTTOの会社の社員であり、萌衣の先輩なのでTOMOKAと一緒に仕事をしたことがあったのかもしれない。
ただ、彼女の言い方に、なぜかジャンに対しての親しさのようなものを感じたのだ。
気のせいであればいいと思ったのだが、ジャンがTOMOKAの好きな食べ物を知っていたことを思い出し、疑念が疑念を呼び起こす。
二人はいつからの知り合いなのだろう。
「大丈夫だと思います。余程のことでなければ、自由にやらせていただいておりますので」
「なるほどね……。ということは、あなたと話がまとまったら、好き勝手やってもいいって話よね。ところで、清水さん、この後もう少し時間あるかしら?」
「え、あ、はい」
帰国するのは明日の昼だ。
今日一日はTOMOKAと話し合いをするために、時間を設けてある。
「ちょっと違うお店に行って、飲みながら話し合わない?素敵なバーがあるのよね」
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