1度だけでも会えたなら、私達には天使がいるのだと言いたい

瑠渡

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最終話

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父とは一生会わないと思っていた

お母様を、記憶がないと言えど裏切った人だ。
私は恨んでいたのだと思う。

だがあの日、馬車ですれ違う時にチラッと見えたシュン先生の隣にいる人が……

泣きそうな顔で私を見ていた

「父だ」と、直ぐにわかった

そして私を認識したのだなと、わかった。
その瞬間、何か私の心が弾けとんだ。

お母様から「メアリ」と呼ばれた感覚だった。

本当は、ずっと父に会いたかったんだ

私が、その気持ちを確信した瞬間だった

馬車に座りながら涙が頬を伝わる

前に座るカイロ殿下と、ノマイロン様があたふたし始め、私の隣に座るアイリス王女殿下が抱きしめてくれた。

「メアリ、どうしたの?」

「父を見かけました。いえ、私をそっと見に来たようです。
どうしたんだろう?母を裏切った父に一生会えなくて良いと思っていたのに、泣きそうな父の顔が見えたら、私は嬉しかったのです。
やっと会えたんだと思えました」

「メアリ、メアリの思うようにして良いのよ」



次の日、私はシュン先生の前に立ったのだ。







父と母の墓前で会ってから、ハリオットラ国へ帰っても父は私と会いたがった。
なので時間が許される時は、公爵邸へよく遊びに行かせてもらった。
新聞紙行進の仲間も、呼ばれて一緒に公爵邸で過ごすこともあった。
(王女殿下の婚約者、ナミル様も新聞紙からはみだしているが一緒である)

ある日、父が夜会へ行こうと言った。
「娘を自慢したい!」そう言って笑った。
王家の夜会なので、カイロ殿下達も呼ばれている


父は喜んで私のドレスとアクセサリーを頼み、そして出来上がったドレスを見れば、父と母の色のドレスで、私の顔が少しひきつったのは仕方ないと思う。
私のドレス姿を見て、「メアリ、なんて美しいんだ。モリスに良く似ているよ」そう言ってまた父は目頭を抑える。



レントロンド国の王族、側近達、エトリガット公爵家の父とシュン様

夜会会場へ入った瞬間、凄い騒ぎになった。
そりゃー、そうだわね。
美丈夫、王女様も美女だし。

私は父とファーストダンスを踊った。
「娘と踊れるなんて幸せだ」そう言って2曲目も離さない。
3曲目に入ろうとした所で近づいてきた女性がいた。

「リュド、久しぶりね」

「あぁ、久しぶりだね」

その人は綺麗な人だったが、何か勝ち誇ったような人だった。

「リュド、また前みたいに仲良くしたいわ。これから話さない?」

「いや、娘と来ているから遠慮するよ」

「娘?……」

その人は私をジーッと見て驚いた顔をした。

「まさか!」

「あぁ、私の娘だよ。君があの時、嘘を僕に吹き込まなければ産まれた時から一緒にいられたかもしれないね」

そう伝えた瞬間、キッと私を睨み、「失礼するわ」そう言って立ち去った。


「お父様?」

「彼女は元、奥さんだった人だよ。
僕に愛想つかして出ていった人だ。元王女だから王宮へ帰り、良い縁談をもらい再婚した。だが嫁いで直ぐに、第二夫人が嫁いできたらしい。王命で婚姻させられたが、旦那には元より誓いを立てた恋人がいた。
だが陛下の命は絶対だ。
だから彼は恋人を第二夫人として娶った。そして、第二夫人が懐妊した。別れたくても醜聞になってしまうからどうするのだろうね。
だからか?元旦那の僕に声をかけてきたのは?

ふっ。さぁ、踊ろう!父様とまた踊ってくれるかい?」


「もちろん!」

私は体力が続く限りお父様と踊った。

離れない私達を苦々しく見ている人達がいるなんて知らずに、お互い他の誰とも踊らず夜会を楽しんだ。


その後

学園を卒業するまで休みの日はほとんど公爵邸で過ごした。

父にはやはり、元奥様からの復縁したいと連絡が来たようだが、シュン様を後継にしたことと、自分の娘と残りの人生を楽しむ事にしたと伝えたらしい。
そして陛下には、「僕に再婚の命を出されませんように」と、釘を刺しておいたらしい。





-5年後-




「おかあちゃま!」

「おーちゃま」

そんな声がした

愛しい2人の子供が私めがけて飛んで来る。

トコトコトコ

抱きつきキャキャする

「リューイ、モニカ」


私は父と会った一年後、学園を卒業して直ぐに婚姻した。

「おちおちしていたら、ヤバイから」

旦那様の言葉に???になったが、

「僕と、一生一緒にいてください」
と言われた時は、旦那様に恋していた私は嬉しくて、
「はい!」と直ぐに返事をした。

式は父の国でした。

レントロンド国では騒がれるのも嫌だったし、アレン叔父様家族を、父がハリオットラ国に呼びたかったからだ。

お母様の日記と絵姿を持って来てくれた。

父と再会して、直ぐにお祖父様とお祖母様にも会わせてもらってあった。
2人とも、まさか息子に子供がいるとは思っていなかったので、お母様への返事を後悔したようだ。
あの時、無理してでも会わせたら記憶が蘇り、母を失わずに済んだのではないかと、お2人は悔やまれた。
だが運命だったと、そう皆で話をでした。

婚姻式が終わった後で、公爵邸で晩餐を執り行った。
是非、娘をここから嫁がせたいと言われ、甘える形となった。

その時にアレン叔父様が母の絵姿を椅子に乗せた。
お祖父様と、おばあ様が直ぐに絵姿を見に行き、
「モリスさん、貴女がモリスさんなのね」
「あぁ、リュドの本来の嫁さんだ」
「なんて美しい人なんでしょう。メアリはお母様に良く似ているわ。リュド、モリスさんに会えて良かったわね。私は生きて会えなかった事が残念だわ」そう言ってお祖母様は泣いてしまわれた。

晩餐が少ししんみりしてしまったけれど、私はお祖父様とお祖母様に母を会わせられたようで嬉しかった。


シュンさんも大学の同級生と婚姻した。
とても姉御肌の人で私をとても可愛がってくれている。
シュン様とミッシェル様にもリューイと同い年の息子がいる。2人はとても仲良しだ。



旦那様はまだ大学の薬学部に殿下と一緒に学んでいる。たまに薬学部での研究で、帰って来れない時は、私達は公爵邸へ泊まらせてもらっている。
シュン様の息子はモニカをとても可愛がっていて、兄が2人いるようだ。

今日は4日ぶりに旦那様が帰ってくる。
「2人の時間も大事よ!子供は預かるから」と、ミッシェルさんがウインクする。
子供達と離れるなんて心配だったが、「ジジが寂しいって泣くから今日は帰らない!」
「かえらにゃい!」と言って、私に手を振っていた。

私は1人でタウンハウスへ戻った。
旦那様と2人なるのは、嬉しいような恥ずかしいような………




「ただいま」

「旦那様、お帰りなさい」

「リューイとモニカは?」

「あの、公爵邸でお泊まりなの」

「ふ~ん。じゃあ、今日は僕達だけ?」

「そうなの。子供達に会いたいわよね?迎えに行こうかしら」

「いいよ。今日は2人の時間にしよう」

旦那様の麗しい笑顔からの言葉に、ドキッとしてしまった


食事をし、湯浴みし………



「メアリ、おいで」
旦那様が私を呼ぶ。

私は急に恥ずかしくなってしまい、「旦那様」と小さな声。


「たまには名前で呼んでよ」


「そうね。……ノマイロン」



「メアリ、僕がいつから君に恋したと思う?」

「えっ?わからないわ」

「僕がランチを令嬢と食べていた時、あの時メアリは睨んでたでしょ?」

「殿下の側を離れて食べてたわよね」と嫌みを言ってしまう。

「そう、あの時君は睨んでいたんだけど、瞳がね泣きそうだったんだよ。あの顔を見ちゃ、恋に落ちるよね」

「あの時?」

「あの時恋をして、君を絶対に奥さんにするって決めたんだ。
だから絶対離さないよ」

「えぇ、私は貴方から離れないわ」

「メアリ、愛してるよ」

「私も。ノマイロンを愛してるわ」


2人の夜が始まる







………………………end






毎日更新できなくて、時間がかかってしまいました。汗

後日談を一話書こうと思っています。
また覗いて頂けると嬉しいです。

読んでくださり、ありがとうございました。

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