長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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夜明けの蒼い月

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いよいよ明日はアメリカに行く由紀子とそれを見送る一夜は、仕事が終わり一緒に成田のホテルに行こうと、会社のビルのテナントのカフェで待ち合わせをしていた。
一夜は席に座って、スマホでネットニュースを見ている。
そこに栞と知之がカフェに入ってきた。デートをする約束をしていて、その前にコーヒーを飲みに来た。
人事部なので、知之も一夜の事は知っている。知之は一夜が栞を見つめたのを気づいた。
栞が一夜に微笑んだ。お互い軽く会釈すると栞と一夜はすれ違う。

「知り合い?」

気になって知之は尋ねる。

「ええ。あの人がまだ日本に来たばかりの時、社長が人事部に世話係を一人出すように言われて、それで私が選ばれて彼のお手伝いをしたの」

もう遠い過去のことだったので、栞はふつうに話した。
一夜の世話係は、人事部的に表向きは数日の手伝いだったので、栞がそんな役目に付いていたことも知之は忘れていた。
しばらくして、花束をたくさん抱えた由紀子が一夜の側による。
栞はじっとその方向を見た。
美しい花々に囲まれた美しい人は、一夜と並んで、周りが注目するほど似合っていた。一夜は由紀子の花束を持ってあげると、由紀子の腰に手を回しカフェを出て行った。
きっと恋人同士なのだろうが、二人の関係が本当はどんな関係かは分からなかった。しかし栞は素直にその姿を見送れた。

「すごい絵になってたね、あの二人。確か、社長秘書で日本本社からアメリカ本社の役員秘書になる人だ」

知之がそう言うと、栞もその情報を思い出した。
でも、自分には関係ないと知之を見つめた。

「とも君、今夜何食べたい?やっぱり今夜はとも君の部屋でご飯作る」

栞の手料理が食べられると分かって知之は嬉しかった。二人はもう一夜と由紀子の存在を忘れていた。
一夜も栞が幸せそうで心から栞と知之を祝福した。そして由紀子の肩を抱くと、成田空港のホテルに向かうためタクシー乗り場へ向かった。
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