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第二部 新たな出逢い。そして――。

三十一発目 ((幼女+幼女)+(幼女+幼女+幼女))の答えは、たわわがいっぱい。――はい?

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 岩人形ロックゴーレムが倒された直後、隠れ潜み操っていたと思しき、茶色の頭巾付き外套フードマントを着込んだ者が馬に乗って逃走する。

「――逃がすわけないでしょ!」

 ヨメさんがすかさず放った矢の雨が地面へと突き刺さり、逃走する馬の行手を遮った。

「HYHYHEEN!」「な、何ぃっ⁉︎」

 突然、降り注いだ矢に驚いた馬が、急停止からいなないた所為で、放り投げられるように宙に舞うその者。

「チェックメイトに御座います」「くっ……」

 落馬し地面に叩きつけられ、酷い格好で呻いているところを、セバスちゃんが容赦なく足蹴にし、持っていたステッキうなじへと突きつけ捕らえたのだった――。


 ◇◇◇


「ほっほっほ。血も涙もない悪虐非道で名の知れた貴方様が、そのように身を隠して更には逃走……堂々と悪事も働けぬとは。お恥ずかしくはないので御座いましょうか?」

 捕縛された者の頭巾を捲りあげ、隠された素顔を覗き込んだ途端、蔑む金眼でそう告げるセバスちゃん。

「き、貴様……たかが執事の分際で、このドアク=マックローを愚弄するか!」

 悪態を吐く、その者。

 肥え太った寸胴な体躯に加え、生理的嫌悪感を抱かせるに相応しい醜悪な面構えだったおっさんは、どうやらそんな名前だったらしい。

「――はて? ドアク=マックロー様に御座いますか? ワタクシの存じ上げない御方の名に御座いますね。――確か貴方様は、キーモ=チッチョイコスキー卿と存じ上げて御座いますが?」

 独特の金眼を細め口髭を摘んで愉悦に浸る、ちょっとヤバさテラMAXな怖い笑顔でそう告げる。

 どうやらセバスちゃんの知っている者のようで、更には偽名だった模様。

「なっ⁉︎ く、くっそっ⁉︎ なんで遠い昔に捨てた恥ずかしい真名マナを貴様が如き知っているっ⁉︎ ――貴様、一体、何者だっ⁉︎」

 醜悪な面を更に悪化させて、激しく言い捨てる詰問ときた。

 どうやらなまら恥ずかしい名前だったようで、偽名を騙っていたご様子。

「ワタクシめはあくまでも執事如きに御座います。先ほど貴方様もそう仰いましたでは御座いませんか? 『たかが執事の分際で』と。それで間違いは御座いません、キーモ=チッチョイコスキー卿。ほっほっほ」

 いつもの執事然とした優雅な所作で、口髭を摘んでのおっほっほ。
 でも片眼鏡モノクルから覗く、白目が黒い独特の金眼は鋭さを増し増しで、全然、笑ってないけど。

 顔合わせの時にセバスちゃんの正体は、魔に連なる者と聴いている。
 俺の予想ではきっと、執事の皮を被った山羊悪魔なんだろうと思う。
 セバスちゃんの人となりからすれば、聴けば教えてくれるのだろうけど、聴いたが最後、絶対に聴かなきゃ良かったと後悔する予感がしてならないのは何故だろうか?

「よ、良くも抜け抜けと~っ⁉︎ き、貴様! 絶対に殺すっ! チッチョイコスキー家の名に賭けて、その身に思い知らせてやる!」

 吐き捨てるような怒号のあと、後ろ手で縛られた指だけを動かし、空に向けて真っ直ぐ下品な指輪を身に着けた中指をおっ立てた。

「へへへ……死ね、死ね死ね、死ねぇー!」

 その瞬間、あまりにも下品なその指輪から、形容し難い嫌悪感を醸し出すヤバさテラMAXなモヤっとした靄が、モヤモヤ増し増しと噴き出て周囲に拡散していくときた。

「情報を引き出せればと、捕縛に留めたのは失態に御座いました。――タダヒト様、お叱りはあとで。お早く」

 咄嗟に俺の隣に湧いた……ゲフンゲフン。現れたセバスちゃんは、そのまま俺を引っ捕まえて馬車まで一瞬で跳躍した。

「ちょっ⁉︎ お叱りってなんの――え?」

 なんで俺が叱らねばならんのかと問おうとする間もなく、一刻を争う緊急事態へと急変する。

「そこなァ~、クソ爺ィ! 吐いた唾ァ飲まんとけよォ~、オラーッ! お前らもォ、死ねェ、死ねよゥ! お前えらァ、皆ィんなァ~殺してやるゥ! フハハハハハ……」

 言葉遣いが豹変し、姿も豹変していく。
 三下雑魚風味のチンピラのように叫び声をあげ、醜く肥え太った身体は次第に腐り、異臭を放ち溶け崩れてしまった――。

 否、元々から生理的嫌悪感を覚えるほどに醜く肥え太った豚だったからさ、ドロドロになった程度ではさして動じないよ、俺?
 冷静にツッコミ入れてる時点でそんな程度にしか感じない。
 随分とメンタルが鍛えられたな俺。
 御二方の所為によるところが、その要因なんだけどもさ、うん。


 それよりもお空がヤバい、なまらヤバい。


 さっきまで上天気だったにも関わらず、暗雲立ち込める空模様に一変するって方がヤバさテラMAX過ぎん?

 そして空の一部が割れるように切り裂かれ、形容し難い意味不明な真っ黒な穴が、突如、描かれる、と――。


 頭上から得も言えぬ嫌悪感が襲ってきた。


「な……⁉︎ くっ⁉︎」

 それは自分の身体の中を、醜悪な虫が蠢き這いずり回っていくような嫌悪感。
 その恐怖で全身から嫌な汗が噴き出すのが自分でも解る。

 絶望を知るに等しい――死の恐怖。
 それを確実なものと幻視させる――悪意。

 関わっては駄目なやつだと本能で理解した瞬間だった。

 だがしかし。動こうと意識するも、身体が言うことを聴いてくれない。
 どうやら意識とは別に身体が萎縮、完全に竦んでしまった。


 それは空間が割れた場所から現れる、巨大な謎物体の所為によるものと理解した。


 翼竜ワイバーンなんかの比ではない、存在感が半端ない大きさの謎物体。
 それも迷宮の最奥で、スライムだかなんだかが擬態していた――暗黒竜の姿のそれだ。

 細部は微妙に違う気もするし、纏っている気配にしても全く違う。
 スライム然とした崩れかけでもなく、禍々しさを増し増しにしたかのそれそのまんまだった。

 そんな竜が巨大な翼を優雅に羽ばたかせ、頭上から真っ直ぐに舞い降りてきやがるときた。
 動くこともできず、不測の事態にただ様子を見やることしかなかった。

 そんな退っ引きならない状況下で――あることに不意に気付く。


 それは背に乗った三つの小さな影。


 着地した竜が翼を畳み、長い首を下げてスロープ状にしたところで、そこをキャッキャウフフと滑り降りてくる謎の三つの影が――?


 え? キャッキャウフフだと?
 この空気の中で平然と……キャッキャウフフだと?


「えぇっ⁉︎ いや、まさか、そんな……冗談だろ⁉︎」

 最後の一人が勢い余って尻餅をつき、今にも泣き出しそうに肩が震えちゃってるそれ。

 慌ててとっとこと寄り添って、なんか慰め始めちゃってるそれとそれ。

 巨大な漆黒の竜を背景に、なんか場違いにあたふたしてる三つのそれら。

「GUOAHAAAー!」

 鎌首状に頭をもたげあげ、大きく翼を広げて吠えたところで、竜を背に三人が横並びに勢揃いした。そして――。


「たれちち、じゃ!」

 うん、確かに垂れてるね。

「はみちち、だわ!」

 うん、確かにギリギリだね。

「ぐすっ……したちち……にょ……ぐすっ」

 うん、確かに下半分が丸見えだね。
 痛いの我慢して頑張って言えたね。


 被っていた漆黒の頭巾付きの外套フードマントを一斉に捲り上げ、甘ったるくも甲高い声で高らかに名乗りをあげる謎でもなんでもない、見覚えバッキバキな幼女然としたその子らは最後に――。


「「われら、まおーぐん、してんのーが、さんにん! たわわさんれんせい、すいさん――」

「ぐすっ――」

 其々の幼い手に収まる、身の丈もあるヤバさテラMAXな禍々しい武器を、これまた其々に独特な香ばしさで振り抜き――。

「じゃ!」「だわ!」「にょ……ぐすっ」

 激しく、なまら激しく、ばいんばいんと、最後に可愛いらしく決めのポーズを披露するときた!

「え~っと……」

 わぁ~、上手、上手……って、拍手してどーすんだよ! 阿呆か俺?

「ほっほっほ、これは良い余興に御座います」

「神なのっ⁉︎ ねぇ、あれは神なのっ⁉︎」

「ある、なの?」「ねぇね、です?」


  ――って、皆んなもかよっ⁉︎


 はい、幼女きましたー。
 相変わらず酷いネーミングセンスの幼女きましたー。
 其々が悪役っぽい衣装と言うかな、なまらキッツキツな装備に身を包んでの幼女きましたー。
 正しい意味でのあかん感じ増し増しなヤバさテラMAXの武器を其々に構える幼女きましたー。
 敵役っぽいお約束な名乗りを可愛らしくあげてのご登場で幼女きましたー。


 しかし……四天王が三人ってどうなん?


 泣いてる子は除外するとして、堂々と名乗りをあげたよね?
 難しい言葉を噛まずに言えたのはとても偉いけども、四人だから四天王なんだよ?
 あと一人は見えない誰か――エア幹部?
 全員でやってきたら魔王軍指揮系統が瓦解――幼女だけにそれはないな、うん。
 ま、そこ勢い良くツッコんだら犯罪――ゲフンゲフン。って、前にもあったな、このくだり

 うん、これはあれだな、きっと。
 教会や託児施設とかで恒例行事――園児によるお遊戯会のノリだな、うん。
 まぁ、そんなほっこり気分にさせられるやつだ。
 至高の御方たる幼乳神様と、それはもう瓜二つな幼女らが一生懸命って、うん。
 もうね、魔王軍四天王がどーとか、なんだそれはとか、清々しいほどにどーでも良くなる尊さだよ。


 最早、草生やすWWWしかないでしょ、これ。


 ――って、悠長に自閉症っぽく俺自身に語りかけ、同意を求めてる場合ではないだろ、俺!
 ほっこり気分で、絶賛、脳内シンキングしてるそんな時でもないんだ、俺!
 とにかく全員泣いちゃうかもなので、ツッコミは軽くスルーを決めることにして――。

「幼魔乳族……だと? 絶滅したんじゃ……しかも至高の御方たる幼乳神様と瓜二つの容姿で三人もだと? まさかの血縁者……幼女増えるって最高かよ。たわわイッパラダイスいっぱいの楽園じゃ――ゲフンゲフン」


 嬉しすぎる想定外に、ふと頭を過ぎる不適切な思いを含む言葉までが、不意に口をいて溢れるのだった――。


「俺はチッチョイコスキー家に連なる者ではない。――ザコティン家、最後の生き残り。ちなみに恋愛対象はお姉さんで――」

 俺はすかさず、それも必死に否定した。



 ――――――――――
 現れたのは……たわわ三連星。しかも幼魔乳族。
 幼乳神様、イッパラダイス⁉︎ ∑(゚Д゚)
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