ぞんびぃ・ぱにつく 〜アンタらは既に死んでいる〜

されど電波おやぢは妄想を騙る

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◇第一部◇

第十九話 再びホームセンターへ。

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「佐藤さん、ちょっと田中さんと鈴木さんとで、ホームセンターまで行ってきます」

 実は佐藤さん、俺の部屋にまだ居たり。
 そして朝食を作ってくれていたり。

「だったらお弁当にしちゃいますね。おにぎりなら嵩張らないし」

 両手をポンと打ち、和かに笑う。
 直ぐ様、タッパーを用意しておかずを詰める。
 そして、おにぎりを作り始めた佐藤さん。


 この気遣ってくれる感が凄く嬉しい。


「――今日も……その……あの」

 恥ずかしいので、俯いて言い淀む俺。

「――えっち、ね」

 少し照れ気味になって笑いかけてくれた。


 ああ、堪らん……。このまま――。


「いかんいかん、帰ってからのお楽しみに取っておいて準備せねば、うん」

 頭を振って煩悩退散な俺!
 自分のリュックを引っ張り出して、せっせと持っていく物を準備し、作業着なツナギに着替え終える。

「はい、お弁当。気を付けてね――ん」

 お茶の入ったペットボトルと、作ってくれた弁当を差し出して、軽く口付けしてくれた。

「行ってきます」「行ってらっしゃい」

 俺からも頬っぺたに軽く口付けして、挨拶を返した。


 気分はもう新婚だな、俺。


「愛妻弁当とは、羨ましい限りだ」

「ホントに」

 玄関から出ると、ニタニタと笑って待ち構えていた、田中さんと鈴木さん。

「アンタらなぁ……」

「――もう、恥ずかしい」

 呆れる俺と、身悶えして照れまくる佐藤さんだった。


 ◇◇◇


 アパートから歩いて直ぐ近くにある、輸入車ディーラーへと、ひとまず向かうこととした。

 タンクに乗り換えた際、置きっ放しの七三式を回収して置きたかったからだ。

「鈴木さんは運転できましたよね?」

「一応は大丈夫ですよ」

「儂は免許証は返納しておるで無理だな」


 退廃した世界に、免許は関係ないでしょ?


「荷物を運ぶのにトラックが欲しいんですよ。途中までは俺が運転手しますんで、その先は交代お願い出来ますか? 俺はトラックを運転するので」

「了解です。久しぶりに運転するので、ちょっとドキドキしますけど」

「大丈夫ですよ、事故っても。誰も文句は言いません」

「言えてる」

 道中、気の抜けた会話をしながら輸入車ディーラーへと向かい、七三式を無事に回収。
 少し迂回することにはなるが、宅急便の詰所へとそのまま向かった。

 そこで目的の貨物トラックを入手して、打ち合わせ通りにホームセンターへと向かい、事故も邪魔もなく無事に辿り着く俺達一行だった。

 七三式と貨物トラックを搬入口へと乗り付け、シャッターを開けて中に入ると、以前のままで何ひとつ変わりはない。

 どうやら軍曹がきっちり益虫の仕事を熟してくれているようだ。

「大丈夫そうですけど、気は抜かないように」

 念の為、犬の野良ゾンビを撒き餌代わりに広い場所へと転がし、軍曹への差し入れとしておく。
 皆に一応は警戒しておく旨を伝え、太陽光パネルと蓄電機のあるリフォームコーナーへと足を運んだ。

「あのデッカい蜘蛛、あの腐った犬で満足してくれるかな……大丈夫かな」

「鈴木さん、蜘蛛ぐらいでビビりおって。イケメンが台無しだぞ?」

「田中さん。蜘蛛って言ってもですよ、僕ら並みの大きさなんですよ」

「なんと⁉︎ それは是非に見てみたいな」

 とかなんとかと、駄弁り合ってついてくる二人。


 警戒もクソもないのな。


 程なく、目的の売場に辿り着く。

「このパネルなんですけど。一応は全部持って帰ります。あとそっちの大きな蓄電機全部。太陽光での発電量が低い時に賄いますんで。それらを繋ぐ配電線や電工用の道具も――」

 運び出す太陽光パネルと、大量に積んである蓄電機を指し示し、二人に指示をする俺。

「これはまた重労働だな。……確かにゾンビ手が要る」

 流石の田中さんも運び出す量に面食らったようで、腐った顰めっ面になってしまった。

「えっと、僕は非力なんで。田中さん、頑張って下さい」

 田中さんの肩をポンと叩き、速攻で諦める鈴木さん。


 免許を返納するお年寄りより、非力な若者って――笑えん。


「んじゃ、パネルは後回しで。俺と田中さんで蓄電機から運んで、鈴木さんは電工用――」

「配電とか工具なんて、僕にはさっぱりですよ!」


 アンタ……何しについてきたん?


「しゃーない。手分けしては無理っぽいか。地道に皆で運ぶとしますか」

「鈴木さんは、帰ったら儂とトレーニング決定だな。拒否権はないぞ?」

「うひぃ……勘弁して下さい」

「田中さんに激しく同意。流石に……ちょっとは鍛えた方が良くね?」

「山田さんまで⁉︎ ――ああ~、帰ったら地獄だ」

 疲れないんだから、死ぬほど鍛えてもらって下さい、鈴木さん。


 死んでる身体だけどな?


 何往復も売場と車を行ったり来たりと、淡々と仕事を熟していく。

 太陽光パネルは特に破損し易いので、一枚一枚を慎重かつ丁寧に運ぶことになり、予想以上に時間を費やしてしまうこととなった。


 ゾンビな二人は疲れないので作業自体は延々と続けられるも、正しく人である俺はそうはいかない。
 ちょいと弁当休憩を少し挟んでもらってから、電材売場へと足を運んだ。


 そして配線などの電材、専用工具、ヒューズなどをテキパキと集めてカートに突っ込んでいく俺。

「流石に機械に強い山田さんですね。僕には何がなんだか、もうさっぱり」

「儂は少しは手伝えるぞ? 戦後は自分で家を建てたり補修しておったからな? ――こっちの防水かつ金メッキタイプが良いな」

「戦後って……田中さん、失礼ですけどおいくつ?」

 戦後と聴いて、恐る恐る尋ねてみた俺。

「ゾンビになる最期の歳で……確か百二十歳は超えてたな……数えるのが面倒で途中で止めた」


 語られる驚愕の事実。


「田中さん、ゾンビになる前は妖怪だったんですね」

 と、真顔でボケる鈴木さん。
 酷い言われようだな、田中さん。


 そして鈴木さんは天然ボケ担当だったんだと、驚愕の事実を今知ったわ。


「百歳以上でその身体……そりゃ腐っても元気なわけだ。――俺、今すげぇ納得した」

「充分長生きしたからな? 儂はいつ朽ちて終わりが来ようとも後悔はせんよ」

 香ばしいポーズで腐った筋肉をピクピク蠢かせ、キモい健康アピール。


 何処ぞのボディビルダーも真っ青だな。


 そんなたわいもない会話を続けながら作業を熟すも、結局、丸一日も費やす結果となった――。



 ――――――――――
 退廃した世界に続きはあるのか?
 それは望み薄……。
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