ぞんびぃ・ぱにつく 〜アンタらは既に死んでいる〜

されど電波おやぢは妄想を騙る

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◇幕 間◇

おまけ 俺の日記。

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 大いなる厄災と呼ばれる天災によって、甚大な被害を受けたこの世界に、駄目押しで畳み掛けるが如く、パンデミック感染爆発が発生。

 隕石衝突によって、大規模災害に晒されて疲弊しきっていたところに、これだ。

 当然、世界の生きとし生けるものに、免疫力も抵抗力も残されてはおらず、瞬く間に感染拡大する。

 全世界規模で伝播したは、地球上の生けとし生けるものを、あっと言う間に喰い尽くし、蝕ばんでいった――。

 程なく、文明社会は崩壊の一途を辿ってしまうこととなる――。


 世界を終わりに導いた存在。
 とは、生物に害をなす――、

 微生物と言うの名の、


 人喰いバクテリアで有名な細菌……まぁ、その名前も本当は正しくは無いのだが――。
 最も一般的なのはA群連鎖球菌つー……種類なんざどうでもいいな。

 細菌は生物の肉を食らうのではなく、毒素を出して宿主の組織を液状ゲル化、つまり、崩壊させるものが殆ど。


 要は――のだ。


 医学で言う、壊死性筋膜炎と呼ばれている症例が有名。

 壊死性筋膜炎を引き起こす原因である、劇症型の細菌は、数多くの種類が実は現実社会に蔓延って――、


 ま、難しい話は置いておこう、うん。


 それら地球上に蔓延っていた細菌が、襲来した隕石によって突然変異を促され、未曾有の脅威の微生物――細菌と化した。


 生きとし生けるものを、生きたままに腐らせるのも脅威ではあるが、何より――、


 死んだものまでを動かしてしまう。


 そんな細菌が猛威を振えばどうなるか――答えは簡単だよな。


 そう、この廃れた世界に徘徊する、生ける屍――ゾンビを産み出す結果に繋がってしまうのだった。


 そうして産み出されたゾンビは、たったの二種――。


 まず、自我の残っている者。

 滅びの道を辿る前の人類と同じ。
 独特の社会を形成して、生き残った人と共存共栄を図ろうとすることになる。

 生前の記憶を持ち、社交辞令的挨拶なども交わし、近所付き合いもちゃんと熟せる。


 単に種族名が、人類からゾンビ類に変わっただけだ。


 スーパーで見掛けた軍曹アシダカクモが自我を保っていたことから、動物、虫などでも同じことが言えるだろう。
 腐っている以外は、何ひとつ変わらない。


 そして、自我のない者。

 ただ蹌踉めき揺蕩うだけの害悪と化した存在となった。

 ホラー映画さながらの動きでフラフラと町を徘徊し、誰彼かまわず無差別に襲いかかってくるゾンビとなる。
 野良犬、猫、虫に至るまでもが同じ。


 それらを便宜上、野良ゾンビと呼んでいる。


 植物では見たことはないが、食虫植物などはきっと襲ってくるんだろうな、うん。


 そして、井戸端会議で日和っているゾンビな隣人達の現状をつぶさに実況したり、こんなを書いている俺は――。


 この腐った世界において、
 この界隈で、唯一生き残った――、


 今現在、正しく人と呼べる者、だ。


 自我の残っているゾンビらと協力し、害悪である自我のない野良ゾンビらを淘汰していく運命を、無理矢理に背負わされた――。


 ただの元・世捨人ひきこもりだよ。


 そんなわけで、この愉快極まるゾンビ達な住人達と、ひょんなことから出逢い、なんの因果か生活を共にしている、頭のおかしい人でもあったりする――。


 もしも俺がたった一人でこの腐った世界を生きることになっていたら、気が狂うか発狂かして、早々にリタイアしていたことだろうと思う。


 彼らと出逢い、生活を共にしたからこそ、俺は今も生き続けられているのだ。


 だが、このまま生き続けられる見込みは、万に一つも絶対にないと言える、過酷で絶望的な状況が続いている。


 人は、生きる為には――食べなければならない。
 なのに、残された食糧は限られているからだ。


 世紀末、或いは暗黒世界――デイストピアさながらの様相と化したこの過酷な世界で、俺はいつの日か終わりを迎える。


 その最期の時が来るまで、今日もしがなく生き抜いていくだけだよ――。


 そして、この日記は、
 俺がこの腐った世界で――、


 憎めない愉快なゾンビらと、
 生涯を共にする愛する一人のゾンビと、
 がむしゃらかつ、懸命に過ごした……、


 ただの記録――日記だ。


 誰に読まれることもないだろうが、
 俺の生きた証として――、



 ここに書き残しておく。



 ――――――――――
 退廃した世界に続きはあるのか?
 それは望み薄……。(完)
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