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ポアチエ
23(2/2) おまけ付き 2
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鼻歌を謳いながらリシャールの大きな体がグイグイと詰めてきて、肘掛けとリシャールに挟まれて身を縮こませながら字を書くはめになり、文句を言うがリシャールは上機嫌にサインを書いている。
機嫌が良くなって仕事がはかどるなら良しとしよう。
そう思いながら「ここに。」と、ディーターに指し示される場所にサインをひたすら書く。
だが、進めるにしたがって、気になることが一つ。
ディーダーが、リシャールの書類にも指を当てている。
進めるスピードも、サインを書くだけのおれと同じ。むしろおれより雑で早い。
「え。おれは言われるままにサインしてるけど、リシャール、サインだけでいいの? 」
「ああ。印が要るやつはまた別にしてあるだろ? 」
「はい。とりあえず今日の分はサインだけでよい物だけお持ちしています。」
「えー。また明日もやるのかよ。」
「しかし、ジャン殿のおかけで、本日分はすでに終わりそうですよ。」
文句を言うリシャールにディーターが淡々と返事をしている。
「いやいや。そうじゃなくって、読んで確認とかしないのかって事だよ! 」
「確認? ああ、そういう仕事はすべてディーターと、その他の奴等がやってくれてる。」
「訴状、懇願、承認等、全て采配をリシャール様に伺っていると、ボルドーは愚かエレノア様からお預かりしているポアチエも立ち行きません。この度のダクス等の戦の処理もございます。領土の大まかな雑事は私共が承っているのですよ。」
「まぁ、・・・そうだろうけど・・・。」
「俺はどちらかと言うと戦争屋だからな。適材適所って奴だ。だが、全てに適任を割り当てられないのも現実だな。先日のモルトー内乱がいい例だ。派遣した人間があまりにも酷いと暴動が起きる。皆ディータみたいに為れと言っても無理だろう。俺にやらせても有無を言わせず力でねじ伏せるしかで出来ねえからな。」
「一つの街の規模は数百人程度。ボルドーは都市ですから、1万人程です。小さな子供に、奴隷を含めるともう少し増えるでしょうね。それらの人々の秩序を守る事をリシャール様がなされていらっしゃるのです。力があるからこそ、他国からの武力にも脅かされる事なく、日々暮らして行けているのですから。」
確かにそうかもしれない。
ボルドーからダクス、それから点々としてポアチエと移動したが、何日も歩いてやっとたどりつく街一つ一つに数百人が生活していて、それらの人々を領主がまとめている。
それらの領主の上にいるのがリシャールなのだ。
力を行使することが、抑制にもなるのかもしれない。
そんなことを考えながらしばらく作業しているとリシャールが少なくなった紙の束を見ながらディーターを呼ぶ。
「ある程度目処もついたし、なんか食い物持ってきてくれ。」
「かしこまりました。」
そう言われて顔を上げてみた窓の外はもう夕暮れに差し掛かろうとしていた。
ーーーあとがきーーー
リシャール事務処理中。
ジャンの考えるのは、正解の見えない、「かもしれない」です
機嫌が良くなって仕事がはかどるなら良しとしよう。
そう思いながら「ここに。」と、ディーターに指し示される場所にサインをひたすら書く。
だが、進めるにしたがって、気になることが一つ。
ディーダーが、リシャールの書類にも指を当てている。
進めるスピードも、サインを書くだけのおれと同じ。むしろおれより雑で早い。
「え。おれは言われるままにサインしてるけど、リシャール、サインだけでいいの? 」
「ああ。印が要るやつはまた別にしてあるだろ? 」
「はい。とりあえず今日の分はサインだけでよい物だけお持ちしています。」
「えー。また明日もやるのかよ。」
「しかし、ジャン殿のおかけで、本日分はすでに終わりそうですよ。」
文句を言うリシャールにディーターが淡々と返事をしている。
「いやいや。そうじゃなくって、読んで確認とかしないのかって事だよ! 」
「確認? ああ、そういう仕事はすべてディーターと、その他の奴等がやってくれてる。」
「訴状、懇願、承認等、全て采配をリシャール様に伺っていると、ボルドーは愚かエレノア様からお預かりしているポアチエも立ち行きません。この度のダクス等の戦の処理もございます。領土の大まかな雑事は私共が承っているのですよ。」
「まぁ、・・・そうだろうけど・・・。」
「俺はどちらかと言うと戦争屋だからな。適材適所って奴だ。だが、全てに適任を割り当てられないのも現実だな。先日のモルトー内乱がいい例だ。派遣した人間があまりにも酷いと暴動が起きる。皆ディータみたいに為れと言っても無理だろう。俺にやらせても有無を言わせず力でねじ伏せるしかで出来ねえからな。」
「一つの街の規模は数百人程度。ボルドーは都市ですから、1万人程です。小さな子供に、奴隷を含めるともう少し増えるでしょうね。それらの人々の秩序を守る事をリシャール様がなされていらっしゃるのです。力があるからこそ、他国からの武力にも脅かされる事なく、日々暮らして行けているのですから。」
確かにそうかもしれない。
ボルドーからダクス、それから点々としてポアチエと移動したが、何日も歩いてやっとたどりつく街一つ一つに数百人が生活していて、それらの人々を領主がまとめている。
それらの領主の上にいるのがリシャールなのだ。
力を行使することが、抑制にもなるのかもしれない。
そんなことを考えながらしばらく作業しているとリシャールが少なくなった紙の束を見ながらディーターを呼ぶ。
「ある程度目処もついたし、なんか食い物持ってきてくれ。」
「かしこまりました。」
そう言われて顔を上げてみた窓の外はもう夕暮れに差し掛かろうとしていた。
ーーーあとがきーーー
リシャール事務処理中。
ジャンの考えるのは、正解の見えない、「かもしれない」です
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