二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

ガーネット色の瞳に揺れる。

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背の高く、スラリとした黒色の燕尾服を身に着けた男性が目の前に現れた。
 私の皿に、目の前にあった皿に盛られていた、大きなローストビーフが取り分けられる。

 体を少し固くして、緊張が走ったが、皿の上の芸術的な料理の造形に一瞬でその恐怖がぶっ飛ぶ。

その肉汁の煌きは、ジューシーな赤身と、トロリとかけられたソースに引き立てられて
存在だけで、食欲をそそる見た目だった!!

 「どうも有難うございます!!
うわぁ。これ、美味しそうですね・・・。いただきます!!!」

 見知らぬ男性にお礼を言うと、その肉を頬張り蕩けるお肉に幸せそうに目も口元も蕩けて
締まりのない顔になった。

 「あははは・・!!幸せそうに召し上がるのですね。甘いものはお好きですか?
お菓子もこちらに美味しいものがございますよ?」

 黒い燕尾服姿の男性の顔を、わたしはそこで初めて確認した。

 分かれた銀色の前髪は長めに耳の下までサラリと流れ、後ろはスッキリと切りそろえられていた。

 左目の下にある泣き黒子が印象的だった。
 切れ長の目に、赤紫色の瞳を持つ秀麗な男性が、育ちの良さそうな優しい雰囲気を醸し出していた。

 男らしく引き締まった唇で微笑んでいた。

仕立ての良い燕尾服に私は驚いた。

貴賓たちの中でも、輝くようなオーラを放つその男性の美しさに思わず息を飲む。

絵画の世界で見る、神話の英雄みたいな神々しい美の化身みたいな出で立ちだった。
呆然と見上げて見入るようにその顔を見つめた。

優しく微笑みを浮かべたその男性は、何処かで会ったことのあるような不思議な既視感を
覚える微笑みを向けた。

 「・・・月みたい。・・まるで、銀色の月みたいに綺麗・・・。」

思ったままに口から出た言葉に、私は驚く。

その煌々しい容貌の男性は瞳を細めて、私を見下ろした。

私が手に持っていた皿を、引き抜くとテーブルの上にそっと乗せて私の手を掴んだ。

その急な動作に、全く頭が着いていかない私は混乱した表情を浮かべる。

 「・・ちょっと、離してください!!あの・・。私、触られると・・・。」

まったくの予想外の行動に、私は大きく茶色い瞳を揺り動かした。

男性に触れられれば、直ちに倒れる不憫な体質の発動を危惧して目を瞑る。
 
意識を失うその時を待った・・・。

 「何で?!」

その気配が全然ないことに驚いた。

その男性は、柔らかいガーネット色の熱く切なそうな視線で私を見下ろした。

見たことのない瞳の色と、色気のある熱を宿したその視線に、何故か私の頬はカッと火照る。

どうして・・・?
なんで私、男の人に触られているのに・・・。

状況が呑み込めずに、震える私の指にそっと唇を落として優しく微笑んだ。

「目立つ予定じゃなかったんだけど・・・。参ったな。君のファーストダンスは、僕がもらってもいい?」

 溜息交じりの笑みが、何処か懐かしくて胸が締め付けられる。
 鼓動が速くなった私は、混乱気味に反論した。

「無理ですよ!!踊れないし・・。恥をかかせる自信しかないですから!!!」

「折角の舞踏会だ。一度は踊ってみたくない?旅の恥じはかき捨てだ。おいで!!」

旅の恥じはかき捨て?
この世界でもその言葉を使うの・・?

その男性は私の手を引いてダンスホール中央へと進み出た。

「ちょっと!!!待ってよ・・・。無理ですって!!」

賓客達や、王家の面々は驚いてその2人の様子に視線が集められる。

ダンスホールにいた、アルベルトや双子の王子達は美月が男性に手を引かれて歩いているのを
見て、驚きに目を見張った。

流れる音楽に両手を広げられて、ふわりと体が宙に浮く。

 「わっ・・!!!」

赤いドレスの裾がヒラリと舞い上がり、クルクルと回り出す。

ダンスホールの中央で、男性が私の腰を掴んでわたしを導くように軽い足取りでダンスを踊る。

 「全然、大丈夫だよ・・。とても上手じゃないか?」

 「すごい・・!!!初めて踊ったのに。体が軽い・・・。嘘みたい!!!」

 軽やかに、何処までも体が軽く浮かび上がるように舞い上がる。

 綺麗なガーネットの瞳は蕩けるような笑みを向けて、嬉しそうに私を見下ろしていた。

 胸をざわっと揺らす、その笑顔に少しだけ不安が過った。

楽隊の音楽はワルツを奏でだし、アルベルトは令嬢に次の曲を誘われ疲れたからと
断りを入れた。

 「なんだよ・・。あれ。 」

舞踏会なんか興味ないって言っていたのに・・。

しかも、誰だよ・・。あいつ!!!

隣で踊る令嬢たちが、こっそり見惚れる赤紫の瞳を持つ男の、美月を見下ろす瞳に眉を潜めた。

アルベルトは、自分へとゴッソリと群れた令嬢たちの中に居て
鋭く尖るような視線を、見知らぬガーネットの瞳の男に向けた。

音楽に乗せて、楽しそうに見つめ合う2人の姿を見ていた影がもう1つ。

人だかりが出来ているダンスホールから少し外れたバルコニーへと続く窓に寄りかかり
グラスを片手に持った男が睨むように、注目を浴びている2人のダンスを見つめる。

「あれだけ目立つなって自分で言ってたのに・・・。自分が目立ってるじゃないか。」

 尖った視線を放つ緑色の瞳は眇められ、シャンパングラスを手に取り取った燕尾服姿の男は持っていたグラスをぐいっと飲み干して杯を空けた。
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