二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

揺れ始める月。

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月に照らされた、ビー玉のように蒼い瞳の王子が現れる。

王子の正装をしていたアルベルトは、白い詰め襟に金のボタンに刺繍が施され、肩には立派なタッセルや、色とりどりの勲章が縫い付けられた。

そこに赤いトウザーズを穿いて、長い足をバルコニーの端に寄りかかった姿勢で私を見下ろした。

 「私の世界では、ある一定の周期になると太陽が月を隠してしまう皆既日食と呼ばれる現象が現れます。
月と太陽の二つが重なって、真っ黒な月が現れるんです・・。それと似た月だなって。」

「そうか・・。
あの月は、私が産まれた日に現れた。
22年前のことだ・・。
不気味な黒い月に、世界中がパニックになった。我が父と母も・・。」

あの月は、アルベルトが産まれた日に現れたの!?

私は、驚くべき内容の告白に目を大きく見開いて金の髪をサラリと揺らし、哀しそうに笑う王子を見上げる。

産まれた日に、漆黒の月も産まれた・・!?

なんか・・・。

格好いい!!
使命や運命を背負った王子ってやつ!?

ヤバっ。映画みたい!!

 「・・・何でだよ。お前は能天気だな!!
世界中が騒いで、未来を憂いたんだぞ?
イムディーナが、僕の誕生を祝って、あの銀色の月を浮かべたんだ・・。
あれがなければ、世界中は今も漆黒の月だけが輝いていたかもしれない。
僕が生まれた日に生まれたあの月は、不安を煽る存在でしかないのだ・・。」

呆れたように、頬を染めながらそっぽを向いた王子は吐き捨てるように言った。

私は、そんな王子の側によって不思議そうに見上げた。

「漆黒の月を、悪しきものとするか、・・何かを伝えるためのお告げをもたらす、
警告の月とし、未来への希望をもたらすものと取るか。
・・それは見た者の心次第ではないですか?」

逆に不思議そうに、見下ろしたアルベルトは眉を寄せて驚くような表情を浮かべる。

「私の世界では、皆既日食は皆が楽しみにその様子を観測するものです。
お祭りみたいに、その様子を今か今かと待つのですよ?
その月が、次第に背後の太陽に照らされて再び光を放つ瞬間を私は見たことがあります。
今まで見たことのある、どの月よりも美しい光でした・・・。
暗闇はいつかは明けます!!
隣に並ぶあの銀色の月よりも、美しい光景をいつか目にすることが出来るかもしれませんね・・。」

 銀色の月を見上げる。
その優しい光よりも、美しい光景を私は知ってる。

海外では、皆既日食の時に現れる大きな指環のような光を見ながら、プロポーズする。

・・なんてのがあるくらい!!

どんなに美しいダイヤよりも、忘れられない一瞬の美を心に焼き付けられるような光景・・。

いつか、この世界であの一生忘れられない奇跡の光景を目にする事が出来るかな? 

漆黒の月が、誰もが目を疑うくらいに光輝く月の光を放つその時を・・。 
 

私は茶色い瞳を大きくアルベルトへと向ける。

そっぽを向いていた筈の、美しい海のような蒼い瞳は激しく揺れていた。

「変な女だ。」

「・・はぁ!?似非王子(えせおうじ)に言われたくないですよ!!
何ですか、さっきの詐欺師演技!?
胡散臭すぎて、二度見しました!」  

「また、無礼な言葉を・・。別にあれは公の場での私の努めのような・・。」

「演じてばかりいるから、いちいちどれが
自分か解らなくなるんですよ!?
悩みながら、無理してひきつった笑いを浮かべてないで、そのままでいればいいんですよ。
ルナ様も、貴方が婚約者をお一人も未だに選べてないから心配してましたよ!?」

「余計なお世話だ・・。
・・お前こそ、男性恐怖症などと言いながら知らぬ男と楽しそうに踊っていたではないか!?」 
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