二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

文字の大きさ
37 / 94
異世界。

静寂の町「デルメ」②

しおりを挟む
半分以上が死ぬ毒・・・。

昔に日本でも起きた、公害みたいな物??

日本でも、確か公害が原因で亡くなったり、障害を抱えた人が多数出た地域があったはず。

私は、社会の教科書を思い浮かべて考え込んでいた。

「そうだね・・。確かに、僕のいた世界でも公害はあった。
やはりその公害も、自然へ流れ出した毒が原因だった。
水が汚染され、その川の流域に暮らす人々の健康が害された。
同じようなことが、ここの近隣でも起こっている。
魔法石の採石地の付近の村では、原因不明の毒による謎の死が相次いでいるんだ。
ここは、もう砕石場もなくなった。今は年老いた人々だけが静かに暮らしている・・。」

「もう、若い者が出てってからは自分たちの食べる物を作って、その田畑を守るだけの
暮らしです。魔法石の採掘場での仕事を始めなければ・・・。
こんなことにはならなかったのに!!」

町長の奥さんは、小さい体を揺らして悲しそうに呟く。

「町長・・。あの・・。明日日が昇ったら、その採掘場を見せてもらってもいいですか?」

ずっと黙って考え込んでいた様子のアルベルトが、町長へと青い瞳を向けた。

驚いた町長は、びっくりした様子で持っていた皿を取り落としそうになった。

「え・・ええ。しかし、採掘場は立ち入り禁止で、荒れ果てた状態で・・・。
それに、危険な獣も出ますが・・。」

「それでも、自分の目で何が起きたのか・・。ちゃんと確認したいのです。
明日、案内を頼めますか?」

「はい・・。もちろんです。ノア王子も行かれますか?」

「彼が行くなら、私も行きます。町長、それでは明日の朝採掘場への案内をお願いします。」

不安そうな様子の町長は、頷いた。

その夜は、温かいご飯をみんなでご馳走になり町の様子や、毒によって体調を崩した者たちが
薬を服用しても治らずに亡くなっていった悔しさを聞いたのだった。

そんな驚くべき毒の威力に私は驚きを隠せなかった。

食事を終えると、私はエレクトラと一緒の部屋へと案内された。

医魔術書を開きながら、今日の講義を伝授されていた。

トリートの呪文や、体の状態から患部に触れて、そこへと力を送る魔術も教えてもらっていた。

「いつも感心しているんですが、どうしてそんなに医魔術を習得したいのですか??」

風呂上りの私とエレクトラは濡れた髪を乾かしながら、部屋の壁へともたれて髪をタオルドライで
乾かしていた。

「どんな病気の人でも治せる医学に憧れてたのよ。
・・・子供のころから。
私ね、昔心臓の病気を患った男の子に恋をしたの・・。
その子は、手術を受けて治ると言われていたの。
元気になって一緒に出掛けられることを夢見ていたんだけどね、手術の後に亡くなったのよ・・。
その時に、私は医者になろうと思ったの。
どんな病気でも助けられる医術はないって・・。
・・・母には言われたんだけど、わたし、諦めが悪くて。」

「そうなんですか・・。どんな病気も治せる医学か・・・。
魔術はそれに近いですね・・。
でも、どんな条件下でもそれが可能ではないんですよ?
治せない病気や怪我もあります・・。それに、心の強さも求められるんです。」

「心の強さ・・・?」

「病気やケガを治す時に、かなりの精神力も体力も奪われます。
酷ければ酷い程自分も憔悴していくんです。
諦めずに、力を送り続けられる精神力が試されます。
・・・美月様、今夜ももう少し勉強なさいますか?
今夜は、私でよければお付き合い致しますよ。」

エレクトラが黒い髪に、漆黒の瞳を揺らして優しく微笑んだ。

わたしは、彼女の気持ちが嬉しかった。

「うん!!身体が大丈夫なら・・。是非、教えて欲しいわ!!有難う、エレクトラ。」

「いいえ・・。微力ですが、応援させてくださいね。」

エレクトラは医魔術書を取りに行った私の背中を見つめながら、
複雑そうな瞳で悲しそうに笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...