二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

想いがあふれる夜①

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王子達の充てられた部屋の前には、エレクトラと美月が立っていた。

驚いた様子の美月の瞳は激しく揺れていた。

「美月・・・。今の、聞い・て・・・・。」

悲痛の表情を浮かべた美月が、唇を引き結んだ。

急に踵を返して走り出した美月の背中に、アルベルトは手を伸ばした。

その手は濡れた長い髪を指が掠めて、掴めなかった。

「クソッ・・。おい、待てよ、美月!!!!行くな・・!!」

悔しそうに、青い瞳を眇めるとエレクトラの横を美月を追って走り出した。

部屋で取り残されていたイムディーナは、取り乱した美月を見て顔を歪めた。
金色の瞳は悔しそうに、開かれた扉の先を見ていた。

「美月?・・・アルベルト殿下!!?待て・・・。我が行く。」

そんな時、咄嗟にイムディーナの前にクレイドルが立ちはだかる。

「お待ち下さい、イムディーナ様!!
少しお話ししたいことがあります。
・・今は、美月をアルベルトに任せてみてはどうですか?」

「・・・っしかし!!誤解したままでは・・・。」

「アルベルトなら、あの2人なら大丈夫ですよ!!そう思いませんか?」

鋭く見上げる緑色の瞳を見て、イムディーナは息を吐いた・・。
少し思案してから、双子の王子へといつもの余裕のある笑みを向けた。

「解った・・。お前たちがそれほどに言うならな。それよりも、話とは?」

優しい表情のアレクシスにも窘(たしな)められて、イムディーナはため息交じりに
勧められた椅子に座した。

さっきまで、そこに居たはずのエレクトラの姿が消えていた事に眉を顰めたクレイドルは
開かれた扉をゆっくりと閉めた。

イムディーナは、その様子を察して部屋に防音の魔術を施して双子の王子に会話を促した。

真っ暗闇の中を美月は走った。

廃墟だらけで、月と星だけが明かりを灯す荒野の宵闇の中を必死に走る。

なんで・・!?

だって、選択をすれば死ななくて済むはずだったんじゃない??

大好きなお父さんとお母さん、那由兄に、奏・・。

家族とまた会って、この世界の話をするんだって思っていた。
もう二度と家族の元へも、私の生まれ育った世界にも帰れないなんて・・。

そんなの・・・。

「・・・美月!!!待てよ。こんな暗闇の中に一人で飛び出したら危ない!!
どんな刺客が潜んでいるか解らないんだぞ!?」

アルベルトが、凄まじい勢いで追いかけてくる。

と、思ったら私の前方斜め横にその姿を確認した。


「なっ!?なんじゃそりゃぁぁぁあ!?」

私の方を振り向いて、走っていた。

目が飛び出しそうになる衝撃を受けて、二度見する。

・・・漫画か!?

超人の域ですけど!?

「ちょっと!?アルベルト・・何なのよ??
さっきは、だいぶ後ろから声がしたのに、何で急にわたしの前にいるんですかっ!?」

「風の魔術で足を速めてみた!!これ、速いな・・。
でもさ、短所があるんだ。
非常に足の回転数が上がる為に・・。足は物凄く疲れるんだ。」

「・・は?それ駄目じゃない!!足、壊れますから!!止まって下さいよ・・。」

涙目になって走る私の前を同じペースで振り向きながら走る。

この光景、傍から見たら怪奇だって・・!!!

「美月が止まったら、止まるよ。急に止まれるか解らないけど・・。」

「自力で止まれるか解らない術を使わないで下さいよ!!・・・無鉄砲なんですか!?」

青ざめた私に、アルベルトは思いついたように笑って私の手を掴んで引っ張った。

「ああ・・。どうせ、短気無鉄砲団長だからな・・。」

「ぎゃぁぁあああぁあ・・・!!!!何するの?浮いてるってば・・・!?」

急に引き寄せられた体は、足先が地面から遠ざかり宙へと浮かび始める。

ぐいっと思いきり抱きしめられた。

「ちょっ・・。えええっ??何なのよ!?」

ふわっと空に浮かんで、手を繋いだまま空を飛んでいた。

アルベルトは、私の瞳を見て優しく微笑んだ。

「空を飛んで見たかったんだろ??どうだ、月夜の空の散歩は???」

「ふ・・ふふ・・。ふざけないでよ!!心の準備ってもんがあるでしょう!!??
ビ、ビックリしたー・・。」

私は腰を抜かした状態のまま、体は宙に浮いていた。

ピーターパンのように、滑るような空の飛び方ではない飛び方で空に浮かぶ。

お見せできない程の残念な体勢だった。

へっぴり腰姿で銀色の月をバックに飛んでいた。

少し先にあった大樹の太い枝に、導かれてそこにアルベルトと並んでゆっくりと座る。

「あそこが、町長さんの家か・・。随分遠くまで来ちゃったね。」

「ああ、ここから見ると荒れ果てた町でも、その上で輝く月と星は美しい。
お前の足の速さに驚いたよ・・。よく食べてるから有り余ってるんだな。」

「・・この不安定な体勢で、貴方に掴み掛っても良いですか??」

「止めろ・・。木が折れる。」

相変わらずの減らず口に、私はイラっとして眉をピクリと動かす。

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