二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

想いがあふれる夜②

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うわぁ・・。
あと一言が多い、この王子に今すぐ蹴りを入れたい・・!!!

「美月、僕が必ず君を家族の元へ帰す。タロスの鏡を
取り返すから、安心して自分の使命を果たすことだけ考えてくれ。」

「・・・何ですか、いきなり。
変な魔法で私の前に現れるし、その癖止まれないって言うし・・。
急に空を飛びだす始末だし・・。誰か知らない人に、盗まれてしまった物まで取り返すと?」

「・・それ位しか、この世界の為に戦ってくれている
君にしてあげることがないからな・・・。」

私は、驚いて隣に並ぶ王子の横顔を見つめる。

「ごめんな。お前の両親も、この世界の運命を決める選択を迫られて沢山悩んだんだろう。
母が、まだ僕が幼かった頃はよく君の母と父の事を思って泣いていた・・。
命を懸けて戦い、最後に2人は選択をして、この世界から消え去った後・・。
自分たちばかりが幸せになったことに何処かで罪悪感を持って生きていたんだ。
あの2人はちゃんと出会えて、幸せになったのか・・。
いつも、2人が幸せであることを祈っていた。
残された人の傷は、深いものだってサフィール義兄さんや、父上を見ていて子供ながらに
痛いほど感じた・・。君も大切な人を亡くして、臆病になる気持ちも解る・・。」

「そっか・・。だから、貴方は理解していたんだ。
残された者の辛さを慮ることが出来るのは・・。
私をちゃんと父と母の元へと、帰そうと思ってくれていたのね。」

青く揺れる瞳を見つめると、胸が苦しくなる。
いつからだろう・・。

アルベルトの優しさが、胸を掴むように痛い。

嬉しいのに、痛い・・。

この痛みは、何処から来るんだろう。

「・・違う!!!
だけど、本当は違うんだ・・。本当の、僕の気持ちは・・。」

ドクン・・。
胸が大きく跳ねる音がした。

私は大きく瞳を見開いて、アルベルトを見つめた。
視線に気づいたアルベルトは私の姿をその青いビー玉のような瞳に映す。

「・・違うって??何なの・・。貴方の気持ちは・・何処にあるの?」

「僕は・・。本音を言うと、君を帰したくない・・。一緒にいたい!!」

激しい感情を出したアルベルトは、切なそうに私を見る。

震える手で、私の頬に手を触れた。

「君とずっとこうやって一緒にいたい・・。
楽しいんだ・・。他愛もない会話も、君の優しい言葉も。
だけど、そんな事を望んでしまっている自分が嫌にもなる。
君を待ってる家族がいるのに・・。
自分勝手な感情を君に向けている自分が、悍(おぞ)ましくなる・・。」

私は、全身が震える不思議な感覚に見舞われて驚いていた。

自覚した心に芽生えた感情・・。

それは悲しい震えじゃなくて、嬉しい震えだった。

・・・だけど。

まだ、駄目だ・・。

「私は怖い・・。また、誰かを好きになることも、その大切な誰かを失うことも・・。」

「そうだよな・・。僕も怖い。もう既に・・。君を失うのが怖いんだ。」

月の光の下でも、ハッキリ解るくらいの真っ赤な顔で、美貌の王子が私を見つめて熱い視線を向ける。

頬に触れる指先の動きにブルリと震える。

その指がそっと私の唇に触れた。

アルベルト・・。

今、貴方の名前を呼んでしまったら。

貴方の気持ちを嬉しく思う、そんな自分を丸ごと認めてしまえたら・・。

どうして、こんなに私は弱虫なんだろう。

   シュッ・・・!!!!

暗闇の中を凄まじい勢いで向かってくる矢を捉えた私は、咄嗟に魔術を繰り出した。

「・・・誰だ!?」

アルベルトも気づいた様子で、私たちの周りにはしっかりとシールドが張られていた。

私の目の前で燃え上がり、落とされた矢の先には多数の黒い装束を身に着け、宵闇に紛れた
刺客たちが立ち並んでいた。
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