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異世界。
現された本性。
しおりを挟む漆黒の闇夜に馴染む黒い色・・・。
マスクで顔の殆どが隠されていたが、鋭い視線と剥き出しの闘志に私の額に嫌な汗が滲む。
アルベルトは、私の手を掴み地面へとゆっくりと降り立った。
「お前たち・・。何者だ?
・・どうやっていつも私達の行く手を先回りし、執拗に追いかける?」
「その女を渡してもらおう。・・我々にとって必要な者だ!!シェンブルグの王子に傷を
つけたくない。素直に渡せば、戦わずして済むのだぞ?」
スラリと背の高い男が、私たちの目の前に現れた。
アルベルトと変わらぬぐらいの背丈・・。
190㎝近くはある、その高さに私は目を見張った。
金色の瞳が、闇夜に照らされた。
イムディーナのような澄んだ金色の瞳・・・。
「渡せるか・・・!!死んでも渡さない!!」
アルベルトは、右手を天に翳す。
光を放った瞬間に、剣を呼び寄せて輝きを放つ剣が何もない宙に姿を現す。
口角を上げ、黒いずっしりとした長剣を前に構えた。
「あ・・・あぁぁぁぁ!?」
「・・・どうした?」
目があった瞬間、私の顔色の白さにアルベルトは驚いていた。
私・・・。
剣忘れたし!!
しかも、呼び寄せるスキルないんですけど!?
さっきうっかり、アルベルトの部屋に魔術辞典借りようと思った私は
風呂上りの簡素なドレス姿で帯剣せずに出かけた。
そんな阿保さ加減に、自分で自分にガッカリしていた。
パァァア・・。
頭を抱えていた私の前に、キラリと光る細身の長剣が現れる。
「・・・お前の剣呼んどいた・・。危機感よろしく!!」
少し呆れた様子のアルベルトが、私を見て笑った。
「ありがとう!!!危機感ね・・、慣れないけど頑張るわ!!」
私も剣を構えて敵を睨んだ。
その瞬間だった。
「森羅万象(しんらばんしょう)・・!!!!」
アルベルトが、唱えた瞬間に周りの景色は一変する。
森の木々がザワッと激しく揺れだし、風がうねりを上げる・・。
「うぅ・・うわぁぁぁあああああぁ!!!」
「・・・さあ、最後まで立っていられるかな?」
青い瞳は、相手の攻撃など繰り出す暇を出さずに自然を味方に楽しむように風を操る。
ヤバっ!!
魔術騎士団団長の実戦・・お初です!!
強い・・!!
アルベルトが2割増しに見えた。
私は何も出番がなく、ただ隣の風使いをポカンとした表情で見上げていた。
その隙に、数人の刺客に囲まれた。
「・・・もう!!折角の模擬魔術なのに・・・。
邪魔しないでよ。・・行け、氷結刀撃!!!」
剣から、氷の礫(つぶて)を放ち、相手の体を凍らせていく。
「ぎゃぁぁぁああ!!!」
敵は、剣を構えた姿勢のまま氷漬けになっていく。
・・・何故だろう。
これを見ると、いつもアルベルトに凍らせられているアレクシスを思い出すわ・・。
「小癪な真似を!!!!女の癖に・・・!!」
「はぁ?女は関係ないでしょう・・!?
ムカっと来た!!・・・ちょっと今の男尊女卑発言取り消してよ!?」
イラッとした私は、思い切り突き上げた。
「・・・チッ!!!ウザったい女だ!!」
吐き捨てるように、身軽に飛び回る男は私の渾身の突きを交わした。
キィィィイイン・・・。
カンカン・・・キィィイン
男尊女卑男と私との、激しい剣戟が始まった!!
少し離れた場所では、余裕の表情のアルベルトが戦いを続ける。
「出でよ、竜巻!!!」
手を翳し、天を仰ぎ、竜巻を出現させた。
「進め・・!!!竜巻よ。敵の全てを飲み込め!!!」
強い風が、1人、また1人と敵を吹き飛ばして行く。
敵を一瞬であっさりと片付けた。
後ろを振り向くと、美月が小柄な敵と剣戟を繰り広げていたので慌てて駆けつける。
「・・・美月、大丈夫か??」
「・・・大丈夫じゃない!!だけど、こいつは私が倒す!!
絶対、土下座させてやるっ!!!!」
「 「 土下座ってなんだ!? 」 」
目を丸くした敵と、横にいたアルベルトの言動が一致した瞬間だった。
・・・カキィィィイン
敵の剣を吹き飛ばした私は、怒りに燃えた目で持っていた剣をのど元に突き出す。
「女だからって馬鹿にして、ごめんなさいと言いなさい!!
ほら、地面に頭をつけて謝るのよ・・!!でないと、このまま刺し貫くわよ?」
「ひぃっ・・。す・・すみません!!」
鳴き声を上げて、土下座をした男を見下ろして嬉しそうに笑った。
「・・・・お前は絶対君主の女帝か。男尊女卑の男が沸点なのか・・。
気をつけて発言することにしよう・・。」
機嫌を良くした美月の腕を掴み、木の上からこちらを見る金色の瞳の男を見上げた。
よく見ると、その瞳の色は違うけど何処かで見たことがある瞳・・・。
「貴方・・。待って・・。何処かで会ったことが・・・。」
私は、只ならぬオーラを放つ人物に問いかけた。
私の言葉に、その男の瞳は細められる。
次の瞬間に、顔の殆どを覆い隠していた黒いマスクが取り去られて銀色の髪がサラリと闇夜に現れた。
「お前・・。まさか!?」
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