二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

遠い世界の君に。(アルベルト視点)★R-18指定

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「あ・・ああぁっ。もう、もう・・。無理だよっ・・!!」

深く、突き刺して華奢な腰を押さえた僕は何度もそこへ熱杭を打ち付けた。

「・・これっ・・。あぁあぁっ。可笑しくなるくらい・・気持ちいいっ・・!!」

大きな胸を揺らして恍惚な表情を見せる彼女の艶やかさに、僕は体勢を変えて
彼女を持ち上げて何度も攻め立てる。

思考が飛んでしまうような快感と、繋がった熱く搾り取られるような感覚に翻弄されていた。

何度目かの果てを迎えて、僕は荒い息を吐いて彼女の上へと倒れた。

初めて重なった時は、我慢が効かずにすぐに果ててしまい恥ずかしい思いをしたのに・・。


互いの唇が腫れるほど、キスを繰り返した。

白くて、柔らかい神話の女神のような体を何度堪能しても・・。

果てることなく、欲望は滾った。

今までの自分では考えられないぐらい激しく、切実に彼女を求めた。

手の届かなかった彼女に、触れて唇を重ねる。

切ない瞳で僕を見る、その透き通るような深い碧に魅せられてる。

諦めて押し殺した言葉や、見えた裏の感情を飲み込むことばかりの人生に
僕は、生きている実感さえも失われていた。

強請(ねだ)るような、そんな言葉も初めてだった。

甘い声と、嬌声を聞く度に彼女の全てを自分のものにしたくなる・・。

離れたくなくなる気持ちが強くなるのに・・。

美月の体が急にその支えを失い、ガクリと項垂れる。

ガクリと、意識が落ちた彼女をそっと抱き寄せて毛布の中へと入れる。
スヤスヤと眠る吐息の音・・。

長い睫毛が揺れていた。

彼女が自分の目の前にいて・・。
重なる温度に、震えるほどの強い快感を感じていた。

そんな夢みたいな現実が、自分の人生に起こったことに信じられない
思いで窓の外の月を見た。

彼女の瞼に、そっと唇を落とした。

「愛してる・・。きみと、離れたくないな・・。」

彼女の頭を腕に乗せて、ぎゅうっと抱きしめた。
温かくて、彼女の優しい匂いがした。

遠くなる意識と共に、僕は深い眠りについた。



意識を取り戻した僕は、昨日の朝と同じようコテージのベッドで目を覚ました。

横には、腕の重みを感じてホッとする。

昨日の朝、目を覚ました時には心許ない場所での目覚めに不安を覚えていた。

「おはよう・・。美月。」

昨日の朝から、日付が変わるまで何度も体を重ねた僕らは、疲れ果てて眠りについた。

恥ずかしそうに、ちょこんと頭を出した彼女が頬を赤らめて僕を見上げる。

「・・・はよう。」

毛布の中でモゾモゾと動く彼女が可愛い。

「朝ごはん、作るよ?食べれそう???」

美月は、サイドテーブルに綺麗に畳んだ新しいドレスに手を伸ばした。

「もう少し、このままでもいい?」

滑らかな素肌をそっと後ろから抱きしめると、体がピクッと反射した。

恥ずかしそうに、僕の方を振り返ると小さく頷いた彼女の頬に口づけをした。

「アルベルトは、甘えん坊で、甘々で、執拗で・・・。
・・・絶倫なんだね。」

は??

絶倫って・・?

驚いた僕の顔を、少し睨んだ美月はカラーコンタクトの替えがないので
今日も、あの美しい瞳で見下ろしていた。

「違うよ・・。美月だからだよ。ずっと触れたかった女の子が自分の世界に現れたんだよ?
覚えてるかな・・。初めて会った日のこと。」

「初めてって・・・。あの、事故チュー、唇泥棒事件の日?」

おいおい・・。
ネガティブなイベントになっているんだけど。

「あのな・・。酷すぎる形容すぎて、目覚めが悪いってば・・。
もう少し、真面(マトモ)な表現ないのか?」

悪びれない彼女に、ベッドの上で抱き合ったままで話を続けた。

「母の・・。「エリカ」の話を聞いてたから?異世界からの少女への憧れがあったとか!?」

「知っていたんだよ・・。
僕も、イムディーナと同じ神官の位を持つ、魔術騎士だ。
父の父上であった同じ名前の「アルベルト」と同じね。
幼い頃から、魔力も高く神官の修行も8歳で難なく終えた・・。
そこからは、ガリラディア神殿にはよく通うようになった・・。
エリカや君の成長を見ていたイムディーナと一緒に、あの神殿で君たちを見ていた。」

酷く驚いた様子の美月のポカンとした顔が、また可愛い。

「嘘??アルベルトはわたしを・・・ずっと前から知っていたの?」

「うん・・。実際に君たちを見た日、母や父に伝えたらすごく喜んでね・・。
ずっと、自分を責めていたからな・・。
幸せに暮らしてると聞いても、実物を見たわけでもないし。
全てを話すことは無かったけど、元気で暮らしていることを伝えたんだ。
君が6歳の時から、知っている・・。ずっと、現物の君に会いたかったんだ。」

「・・・信じられない。
・・・なんだ。
そういう事だったんだ。でも、少し嬉しい・・。私をずっと見守ってくれたなんて。」

「そうだな。僕は、ずっと見てきたから・・。
君たち家族の仲の良さは、よく知っているんだ。温かい仲良しの家族。
憧れだったよ。
だから、君を家族の元に返さなきゃいけない・・・。」

声が小さくなっていく。

しぼんでいくような気持ちを、奮い立たせて声に出した。

「この温かい温もりも、いつかは手放さなければいけないものだと理解している・・。」

ぎゅうっと強く抱きしめると、僕の背中に回された手の温かさに驚く。

言葉を紡ぐことが出来ずに、続く言葉を飲み込んだ。

「好きだよ、アルベルト・・。自分の命よりも、大切だと思うの・・・。貴方のこと。」

彼女の、揺れる瞳に僕の心ははち切れそうに大きく動く。

離れたくない。

そんなものを手に入れた怖さを初めて知った。

その感情を知っていた彼女は、ずっと・・。
ここから逃げたかったんだと理解した。

誰も愛することなく、いつかその対象を失うことを恐れていたんだ。

理屈で知っていても、心で理解するのとは違っていた。

僕も不安で堪らない・・。

目を閉じた僕の頬に、彼女の手が触れた。

驚いて見開いた視界に彼女の美しい瞳が細められた。

「アルベルトに出会って、わたし少しだけ変わったの。
いつか、失ったとしても・・・。
今を後悔したくないって初めて思ったの。」

<だから、貴方と今を一緒にいたい・・。
一緒に生きたい。この先、どんな選択が待っていても。>

美月の心の声は、強く、ハッキリと僕の耳に響いた。

「・・・僕もだ。君と一緒がいい・・。明日も、明後日もこうやって君の隣で目覚めたい。」

何度も、見ないようにした想いと向き合った。

気のせいだと、いつかあっちの世界へと帰る人間なのだからと・・。
言い聞かせてきたのに。

僕の心を捉えて離さない彼女に、僕は今を捧げる。

運命が決するその時まで、彼女の手を離さない・・・。
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