二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

希望の到来。

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ザクッ・・。

金色の髪を掠める剣先に、さらりと髪が切り落とされた。

キィン!! カキィン!!

アルベルトは、目の前の敵を倒しながらも心は何処かに置き忘れてきたかのような、
現実感を失ったままで今を切り抜けていた。

「ふはははは。
もう二度と戻らぬ異世界の姫を想うのか?
・・難儀なことだ。」

口紅が血のように、赤く存在感を放つ。

ペロリと舌を這わせて舐めた。

「下らない戯れ言を!!
約束したんだ・・。装置を見つけて
お前を倒し、あの月を隠す漆黒の闇を消し去るのみだ!!
二度と、私たちの前に姿を現せぬよう黄泉の世界へと葬ってやる!」

大切に想う彼女が漆黒の闇に吸い込まれて、そう時間は経っていないはずなのに・・。

心の半分以上が彼女と一緒に、闇へと消えてしまったような酷い喪失感を覚えていた。      

「団長・・!!
こいつら切っても切っても起き上がります!!
このままじゃ、我らの魔力が先に尽きてしまいます。」

ルードリフが悲痛な叫び声を上げた。

アルベルディアの兵力の半分以上は、あの黒い漆黒の穴に吸い込まれて消えた。

美月とイムディーナも、あの中へ消えてしまって
ここには、エレクトラ、ルードリフ、クレイドル、アレクシスとノア。

アルベルディアの兵士10人前後・・。

敵の勢力は。元王妃アルバと術者たちが併せて30名程が対面していた。

・・・それだけじゃない。

呪いのような魔術がかけられた相手との闘いに疲弊していた。

切っても、吹き飛ばしても、倒しても起き上がる。

最初は気のせいかと思っていたが、何度も目の前でその奇跡を目にすると納得せざるえなかった。

「お前は・・!!一体こいつらに何をした・・!?」

今の戦局は圧倒的に不利だ・・・。

「カディールが、お前の父に勝とうとして集めた魔術師に開発させた薬を改良したのさ・・。
腕を切り落とされても、もう1本の腕に剣を取り立ち向かう屈強な人形だ。」

なんてことだ・・。

信じられぬセリフに、アルベルトは顔を青ざめた。

僕たちは、美月が戻ってくるまで持つのだろうか?
その戻りはあとどれぐらいかかるのだろう・・。


「アルベルト!!馬鹿っ・・。しっかりしなよ!!
・・・あんたがそれじゃ、士気が落ちるってゆうもんよ。」

エレクトラが、僕の腹に鋭いエルボを入れた。

「・・・は?あ、いや・・。すまない!!」

聞き覚えのあるような、突っ込みにハッと目を覚ます。

目の前に現れた長い長剣の攻撃を、片手で受けて相手の体へと強く蹴りを入れた。

「・・うぐううっ!!!」

嗚咽のような、悲鳴が聞こえた。

ブーツの踵に、マントのタッセル部分が引きちぎれた。

その瞬間に、彼女のペンダントがキラリと光る。

オニキスのような真っ黒な石を象るペンダントが輝きを放っていた。

「アルベルト殿下・・!!装置はやはりここら辺にはないようです・・。
何かに擬態をして隠しているのかと・・。相手は魔術使いです。アルベルト殿下なら
どう隠しますか???」

ノアは、剣を振り上げて白い騎士服のマントをさらりと翻して颯爽と振り返った。

隠す・・。

もしも、魔術でその装置を隠すとしたら自分の身近に置いておかないと心許ないの
ではないだろうか・・。

「・・・ああっ、アルベルト!!危ない!!」

少し遠くで魔術師に、炎の魔法を繰り出されて囲まれていたクレイドルが叫んだ。

「つめが甘い!!!憎き、カイザルの息子・・。アルベルトよ。死ねぇぇぇえ!!!!」

銀色の刃が自分の体目がけて繰り出された。

「くそっ・・。」

一瞬の隙を突いて、鋭い一撃が振り下ろされた。

受けようとしても、追いつかなかった・・・。

・・・・ガキィィイイン。

大きな刃と刃が交わう音が、一階のホールに鳴り響いた。

僕は、閉じられた瞼をゆっくり開けて目の前の黒い衣装に包まれた逞しい背中を見上げた。

「・・・父上!?どうしてここに!?」

アレクシスが、信じられない者を見つけたような声を上げて見ていた。

エミリアンは、私の前で元王妃アルバの剣を受けた。
それを思い切り押しやった。

父上・・!?

宰相エミリアン・・。

吹き飛ばされたアルバは、我が子の登場に目を丸くして驚いていた。

しかし、次の瞬間にはエミリアンの剣が腕を切り裂いた。

「お前・・!!またしても、わたくしの邪魔をするのか!?」

キッと同じ色の瞳で睨み返す母を一瞥して苦い笑みを湛えた。

「一目散に逃げた王妃が、偉そうに何を言う・・。今更のこのことしゃしゃり出て来て
あんたは何がしたいんだ??」

その言葉にグッと詰まって、吊り上がった目でエミリアンを睨み付けた。

「・・・遅くなりました、アルベルト殿下。こいつは私にお任せください!!」

漆黒の髪を揺らして、アメジストの瞳で小さく笑うエミリアンの顔に安堵する。

「エミリアン・・。すまない!!来てくれたんだな。」

「ふう、前の戦いとと同じ状況のようですね・・。
あの人の遺した遺物は、目障り以外の何でもない。」

ノアと、アルベルディアの兵たちも疲弊した面持ちで、エミリアン
の登場に少し安堵の表情を浮かべた。

「・・・絶望的な状況に、先の戦いの勝者が来てくださった事に
少しだけ希望が湧いてきました。」

ノアは、息を吐いて微笑んだ。


「王子たちよく頑張りましたね。
・・・頼りになる助っ人も連れてきましたよ。」

ビュッ・・・

信じられないスピードで、人が壁や天井へと打ち付けられて倒れていく。

「ぎゃあぁぁあぁ。」  「ぐぉっ・・。」

後ろで戦っていたエレクトラ、アレクシス、ルードリフとクレイドルを囲んでいた魔術師たち
数名が、急にその場から吹き飛ばされていった。

彼らも唖然とした表情で、外からの侵入者を見上げる。

「・・・王。我が王が・・来て下さった。」

クレイドルが、震える声でその凛々しい青いラピスの瞳を見上げた。

固く引き結ばれた唇と、鍛えられた体躯。

圧倒的な身長を持つ、祝福の子がそこに光を放って立っていた。

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