二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

文字の大きさ
75 / 94
異世界。

取り戻した青い瞳。

しおりを挟む
漆黒の髪を揺らして、青い瞳を向けた父王の登場。

その凛々しさに、アルベルトは震える瞳でその姿へと視線を向けた。

「・・・父上。来て下さったのですね。」

ドォォォオオォォン・・・。

アルバに向けて、離れた距離から神力の光の球を繰り出したカイザルは
その体を天井へと叩き付けると薄く笑った。

「お前は、誇り高きわが父と、親友アルベルトの名を継ぐ大切な王子だ。
お前だけは、死んでも守る・・・。
そして、お前が次の王となるべく力を目覚めさせる為に私は来たのだ!!」

・・・力を目覚めさせる??

驚いた表情で、見上げた父にアルバが苦し気に顰めた顔でふらりと立ち上がった。

「憎き・・。憎き男!!お前のせいで私たちは国を失った!!
あの日オルカの鏡を持って惨めな思いで国を出た日から・・・。
お前を倒しシェンブルグを・・。
この世界の全てを滅ぼし我が物にすることをだけを生きがいにしてきたのだ。
・・・お前の国の王子達に、「孤独」という名の呪い続ける事だけが
私の生きる糧となったのだ!!!こんな所で死ぬわけにはいかぬのだ!!!
立て・・!!兵たちよ、とっととあいつらを始末しろ!」

アルバの歪んだ表情と、憎しみで支配された心は救いがない・・・。

エミリアンは、その言葉に苦く笑う。

流れ込んでくる心は痛々しく、吐きそうになるような絶望の闇が心に在った。

自分の父を手にかけて、次は自分の母を・・・。

どんな気持ちで生きてきたのか。

そんな事、考えるまでもない!!

もう1人の父のように、読める心から孤独になっていた自分を励ましてくれていた優しく、思慮深い宰相・・。。

そんなエミリアンにこれ以上、苦しみを背負わせてはいけないんだ・・。

「父上、魔術師たちはいくら切っても起き上がります!!奴らを頼みました・・。
僕は、死にません。アルバは、この僕が魔術騎士団長の名に置いて討伐させて頂きます!!」

青い瞳は眇められ、アメジストの釣り目を睨み付けた。

瞳を揺らすエミリアンに、心で伝える。

エミリアンは、驚いて僕の横顔を瞳を揺らして黙って見つめていた。

「解った。無理はするなよ、アルベルト・・。」

口角を上げると、クレイドルとアレクシスと共に起き上がる敵に剣戟を浴びせていく。

アルベルトは、魔力が半分以上消失して重くなった体をゆらりと起こした。

さっきまでついていた肩の傷は消えていた・・・。

闇の魔術なのか、薬の力なのか分からない。
だけど、こいつは不死身のように傷や体の外傷の全てをコントロール出来る力を持っていた。

闇・・。

自分の隣にもいつもあったもの。

孤独の中が、心地よかった自分を変えてくれる出会い・・。

あの青く美しい金の光彩を持つ姫を想う。

「行くぞ・・!!」

黒い長剣を力強く構えて、マントを翻して腰を入れる。

ニヤリと口元に笑みを浮かべたアルバが、するりと起き上がり面白そうに笑った。

細身の長剣を胸の前で構えると急に胸元の黒いペンダントから光が現れた。

パァァァッ・・・。

「な・・なんだ!?どうした・・。」

一瞬その光に気を取られたアルバが、体勢を崩した瞬間に僕は力を込めて剣を振り下ろす。

次の瞬間、ペンダントの石にピシッとヒビが入りだした。

その瞬間に、天井に空いていた穴が小さく縮み出した。

ブシャッ!!!

肩から胸にかけて大きく切り裂くと、恐ろしい表情と低く醜い声を上げたアルバは漆黒の玉を僕の胸へと放つ。

それを、片手で吹き飛ばすと眉間を顰めて僕を睨みながら苦しそうに仰け反った。

僕だったら・・・。

大事な装置を何処に隠すか。

きっと、僕なら肌身離さずに身に着けているだろう。

「そこだぁぁぁぁああ!!!!」

黒い剣は胸のペンダントを突き刺し、石が割れて粉々に砕け散る。

「な・・なにを・・。」

アルバは瞠目して、胸元の形を失くしたペンダントを見下ろして青ざめた。

その瞬間

縮んでいた真っ黒い穴の奥から光が放たれる・・。

眩い光と共に、歌が耳に届いた・・・。

あの日、川のせせらぎと共に聞こえてきた愛しい人の歌。

幼い頃は飽きることなく、いつも素晴らしい音色を風に乗せ歌を口ずさむ大きな青い瞳の可憐な少女。

いくつになっても、その心を映すような透明で優しく、力強い歌だった。


アルバが、その歌に震え上がり顔を歪めていた。

「耳を・・耳を塞げ!!!お前たち、歌を聴いては・・・。」

・・・ドスッ。

心臓に剣が突き刺さり、アルバは驚きに目を見開いた。

信じられない表情でアルベルトの姿を見た。

「・・・お・・前。またしても・・。」

「憎み続ける事も辛かっただろう・・。ゆっくり眠れ。カディールの元へ逝くのだ。」

その言葉に、眉間に無数の皺が刻まれて頬には涙が伝った。

「・・・何も・・わからぬ・・くせに。本当の・・孤独を・・あじわ・・え。」

アルベルトは、表情を変えずその言葉を黙って聞いていた。

ブスリと、抜かれた剣に体をぐらりと揺らした。

大きな音と共に、その場に頽れたアルバはエミリアンを見た。

「本当にお別れですね。さようなら、・・・母上。」

痛みと共に、揺れる釣り目のアメジストがゆっくりとその輝きを失っていく。

魔術師たちも、耳を塞ぐ命の前に光輝く歌と共に金色の光を受けてその場へと倒れていった。

こと切れた人形のように、重なり倒れた兵たちは二度と起き上がることはなかった。

黒い穴が消え去る前に、光の玉が現れイムディーナと美月・・。

そしてアルベルディアの兵たちが無傷で現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

処理中です...