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異世界。
開かれた扉。
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その一幕を苦い思いで見ている者がいた。
ブラックホールのハッタリが見抜かれて、装置ごと壊された。
漆黒の月は、あの女が死んだ事により闇の呪いが解かれる・・。
おそらく今夜、本来の月が空に輝いてしまう。
ギリッと唇を噛んで、苛立ちを隠すように息を吐く。
赤い絨毯の上でキラッと光る、黒い石を拾い上げる。
何かを思い出したように、顔を上げた。
元王妃、アルバが消え去った場所のすぐ側で、そこから一瞬だけその場から姿を消した。
アルベルディアの兵と、カイザルが寄越したアルベルトの部下である魔術騎士団の精鋭
達が合流し、コンビクションタワーの中へと調査に向かう。
水の間は、このタワー内の奥深くに隠されている・・・。
それをエレクトラに扮した、エリカは鋭い瞳で見つめていた。
「・・・この先です。」
イムディーナの案内で、コンビクションタワー内の奥へと進んだ
私たちは、大きな扉の前で息を飲んだ。
真っ暗なタワーの地下通路の奥へとやってきた私たちは、光を灯しながら
ゆっくりと通路を進んでここへと辿り着いた。
兵たちは、入り口で待機させて旅のメンバーと王族のみでこの場所へと足を運んだ。
遥か頭上までの高さの鉄製の重厚な扉の前で、イムディーナが詠唱を始めた。
何の模様も浮き出ていない、ただの鉄扉にうっすらと文字が浮かび出す。
私は、緊張の面持ちでその様子を眺めていた。
ポウッ・・。
と楔形の模様が中央に浮かぶと重い鉄の扉は左右に同じ速さで開かれていく・・。
ギギギギ・・・。
目の前には、滝のような流れを湛えた壁と、水がびっしりと床に溜まった空間が
現れた。
そこには、置石が数個置かれているだけのだだっ広い空間だった。
私たちは手元の光を消して、部屋の中から差し込む眩い光を部屋の外から黙って見つめていた。
ドドドドド・・・。
そこに、エムディーナは入って行く。
神官であるアルベルトも、後ろに続いて置き石を慣れた様子で進んでいく。
「・・あった。やはり、ここに隠されていた。」
滝の後ろにある鏡をゆっくりと持ち上げたイムディーナは、その対面の滝の中に置かれた
鏡を持ったアルベルトを見てゆっくりと頷いた。
「・・・あれが、タロスの鏡とオルカの鏡なのね。」
これで、月の選択が出来る。
私は自分の世界へと帰り着くことが出来るんだ・・。
そっと鏡を持ちながら歩いてくるイムディーナとアルベルトを見守っていた。
アルベルトの青い瞳は落ち着きを見せていた。
愛しいその瞳を、私は焼き付けるように見つめた。
「離れたく・・ないな。」
ボソッと私が呟いた瞬間だった。
「カチャ・・。」
何故だか、背後から嫌な音が聞こえた。
「それでは、死んであの世で一緒に暮らしたらどうですか??」
拳銃の薬きょうを回す音だと気づいて、私は防御の魔法を咄嗟に繰り出した。
私は睫毛を瞬かせて、体を翻した瞬間の事だった。
ブラックホールのハッタリが見抜かれて、装置ごと壊された。
漆黒の月は、あの女が死んだ事により闇の呪いが解かれる・・。
おそらく今夜、本来の月が空に輝いてしまう。
ギリッと唇を噛んで、苛立ちを隠すように息を吐く。
赤い絨毯の上でキラッと光る、黒い石を拾い上げる。
何かを思い出したように、顔を上げた。
元王妃、アルバが消え去った場所のすぐ側で、そこから一瞬だけその場から姿を消した。
アルベルディアの兵と、カイザルが寄越したアルベルトの部下である魔術騎士団の精鋭
達が合流し、コンビクションタワーの中へと調査に向かう。
水の間は、このタワー内の奥深くに隠されている・・・。
それをエレクトラに扮した、エリカは鋭い瞳で見つめていた。
「・・・この先です。」
イムディーナの案内で、コンビクションタワー内の奥へと進んだ
私たちは、大きな扉の前で息を飲んだ。
真っ暗なタワーの地下通路の奥へとやってきた私たちは、光を灯しながら
ゆっくりと通路を進んでここへと辿り着いた。
兵たちは、入り口で待機させて旅のメンバーと王族のみでこの場所へと足を運んだ。
遥か頭上までの高さの鉄製の重厚な扉の前で、イムディーナが詠唱を始めた。
何の模様も浮き出ていない、ただの鉄扉にうっすらと文字が浮かび出す。
私は、緊張の面持ちでその様子を眺めていた。
ポウッ・・。
と楔形の模様が中央に浮かぶと重い鉄の扉は左右に同じ速さで開かれていく・・。
ギギギギ・・・。
目の前には、滝のような流れを湛えた壁と、水がびっしりと床に溜まった空間が
現れた。
そこには、置石が数個置かれているだけのだだっ広い空間だった。
私たちは手元の光を消して、部屋の中から差し込む眩い光を部屋の外から黙って見つめていた。
ドドドドド・・・。
そこに、エムディーナは入って行く。
神官であるアルベルトも、後ろに続いて置き石を慣れた様子で進んでいく。
「・・あった。やはり、ここに隠されていた。」
滝の後ろにある鏡をゆっくりと持ち上げたイムディーナは、その対面の滝の中に置かれた
鏡を持ったアルベルトを見てゆっくりと頷いた。
「・・・あれが、タロスの鏡とオルカの鏡なのね。」
これで、月の選択が出来る。
私は自分の世界へと帰り着くことが出来るんだ・・。
そっと鏡を持ちながら歩いてくるイムディーナとアルベルトを見守っていた。
アルベルトの青い瞳は落ち着きを見せていた。
愛しいその瞳を、私は焼き付けるように見つめた。
「離れたく・・ないな。」
ボソッと私が呟いた瞬間だった。
「カチャ・・。」
何故だか、背後から嫌な音が聞こえた。
「それでは、死んであの世で一緒に暮らしたらどうですか??」
拳銃の薬きょうを回す音だと気づいて、私は防御の魔法を咄嗟に繰り出した。
私は睫毛を瞬かせて、体を翻した瞬間の事だった。
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