二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

暗闇の銃声。

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・・・パァァァアアンン

放たれた銃声は、大きな鉄製の扉に穴を開けていた。

「嘘・・。何で銃が・・・。」

「なんだ!?・・・今の銃声は??」

ノアは驚いて、後ろを振り向く。

イムディーナとアルベルトは咄嗟に鏡を、小さくしてポケットへと仕舞った。

エレクトラから、エリカの姿に戻った姫が私の前で神力を使い
球から守ってくれた。

「・・・アデル様をも倒してしまうとは、やはり神に愛された異世界の姫と、シェンブルグ
の王子様は強運をお持ちのようですね・・。」

ジャリっと、重いブーツを動かしながら暗闇の中から銃を持った者が私たちの前へと
歩き出す。

黒い手袋に、緑色の結晶を球にした薬きょうを左手に持った者はにやっと微笑んだ。

「・・・危ないわよ!!今の危うく美月に当たるとこだったわよ。
・・ちょっとあんた、正気なの!?」

「ほう・・。エレクトラに化けたのですか、エリカ様・・・。
神力ならば弾をも避けられるのですね。それは、思っても見ませんでした。
貴方も神の力を頂く姫・・・。さぞ、強運をお持ちなのでしょうね。」

うす暗い闇に溶けるように、男の姿が晒される。

その暗闇の中、血のように赤い瞳が輝いた・・。

「・・・・カディール??」

カイザルが、ボソリと呟いた声を拾ったその男はククク・・っと笑い出す。

「カディール・・。へえ・・。
そいつと私は似た瞳の色を持っているのですか???
通りで愚かな王と呼ばれた男と同じように、通りで私も無力な訳だ・・。あはははは!!」

楽しそうに笑いだすその声の主は、私を睨んで赤い瞳を向けた。

「・・・この世界の未来を明るくされては困るのですよ。
異世界から来た歌姫よ。
この世界は漆黒の闇で恐怖心に支配された、暗黒の世界となり私が支配する・・。
その為には、目障りなんだよ・・・。
お前も、血や力や血統で決まる王族たちなど・・。全て、根絶やしにしてやる。」

コツン・・・。


現れた姿に、正体を知っているエリカ達はゴクリと喉を鳴らす。

旅を共に続けて来た私たちは、照らされた姿に息を飲んだ。

声の感じも、瞳の色も違う・・・。

その悪しき憎悪の瞳でこちらを見る瞳の色はワインのような血の赤がキラリと煌いた。

「・・・皆殺しだ。」

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