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2. 脱出
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無事にパーティーの場を後にした私は、すぐに王宮に与えられていた部屋に向かった。
私物のほとんどは既に持ち出していたけれど、最低限必要なものは残していて、それを回収する必要があったから。
「お嬢様、おかえりなさいませ。随分と早かったですね?」
部屋に入ると、子爵家で暮らしていた時からの専属の侍女アイリスが出迎えてくれた。
ちなみに、雇っているのは私という扱いだから、彼女も一緒にここを出ることになる。
「婚約破棄されたから、もうここにいる必要は無いもの。さっさと荷物をまとめてここを出るわ」
「婚約破棄したのではなく、されたのですか?」
「一方的に悪者にされて婚約破棄されたのよ」
聞き返してくるアイリスに説明する私。
「そんな、いくらなんでも酷すぎます!
荷物ならもう纏めてあります。焦った国王陛下に引き留められない内に逃げましょう」
「ええ、すぐにここを離れましょう」
こんなことを話しながら部屋を後にする私達。
アイリスが怒ってくれるのは少し嬉しかったけれど、焦った国王に追っ手を向けられるのは時間の問題だから、先を急ぐことを優先した。
パーティー会場は今頃大騒ぎになっている筈だけど、王宮内には広まっていないようで普段通り静かな廊下を足速に進んでいく。
王宮を出てすぐに、馬車が止まっている……ということはなく、子爵家の馬が4頭待機していた。
「お嬢様、お待ちしておりました。準備は出来ております。
直ぐに出発しましょう」
「ええ。荷物は任せてもいいかしら?」
「もちろんです」
そんなやり取りをし、馬に跨がる私。
他の貴族なら馬車に乗るのが当たり前だけど、私達にそれは出来ないのよね……。
理由は単純で、子爵家までの道が整備されていなくて、馬車だと通り抜けることが出来ないから。
悲しいことに、それだけうちは王家から下に見られている。
街道の整備は国が行なっていて、私達貴族が勝手に整備出来るものではないから、今もこの状況が続いてしまっている。
「では、私が先導いたします」
「分かったわ」
護衛とそんな会話を交わしてから、私達は王宮前から出発した。
それと同時に、王宮の方が騒がしくなってきて、なんと騎士団が建物から出てきた。
「罪人はまだ中にいるはずだ! 元聖女を逃すなよ!」
「「はっ!」」
そんな声が聞こえてきて、悪寒を感じてしまった。
何がどうなったのか、私は罪人にされてしまったらしい。
連れ戻しに来るだけという予想は、大きく裏切られてしまった。
「お嬢様、もしかしたら全力で逃げる羽目になるかもしれません」
「少し急ぎましょう。馬には申し訳ないけど、早めに王都を出た方が良さそうね」
そうして今までよりも速く馬を走らせる私達。
夜になり人通りが少なくなっていたお陰か、すんなりと王都を抜けることが出来た。
しかし……ヒュンという風切り音がしたと思ったら、目の前の護衛さんの方でドスっという鈍い音が聞こえた。
「ぐっ……お嬢様、敵襲です……」
そう口にする護衛さんの肩には矢が刺さっていて……咄嗟に後ろを振り向くと、銀色に光るものが目の前まで迫っているところだった。
私物のほとんどは既に持ち出していたけれど、最低限必要なものは残していて、それを回収する必要があったから。
「お嬢様、おかえりなさいませ。随分と早かったですね?」
部屋に入ると、子爵家で暮らしていた時からの専属の侍女アイリスが出迎えてくれた。
ちなみに、雇っているのは私という扱いだから、彼女も一緒にここを出ることになる。
「婚約破棄されたから、もうここにいる必要は無いもの。さっさと荷物をまとめてここを出るわ」
「婚約破棄したのではなく、されたのですか?」
「一方的に悪者にされて婚約破棄されたのよ」
聞き返してくるアイリスに説明する私。
「そんな、いくらなんでも酷すぎます!
荷物ならもう纏めてあります。焦った国王陛下に引き留められない内に逃げましょう」
「ええ、すぐにここを離れましょう」
こんなことを話しながら部屋を後にする私達。
アイリスが怒ってくれるのは少し嬉しかったけれど、焦った国王に追っ手を向けられるのは時間の問題だから、先を急ぐことを優先した。
パーティー会場は今頃大騒ぎになっている筈だけど、王宮内には広まっていないようで普段通り静かな廊下を足速に進んでいく。
王宮を出てすぐに、馬車が止まっている……ということはなく、子爵家の馬が4頭待機していた。
「お嬢様、お待ちしておりました。準備は出来ております。
直ぐに出発しましょう」
「ええ。荷物は任せてもいいかしら?」
「もちろんです」
そんなやり取りをし、馬に跨がる私。
他の貴族なら馬車に乗るのが当たり前だけど、私達にそれは出来ないのよね……。
理由は単純で、子爵家までの道が整備されていなくて、馬車だと通り抜けることが出来ないから。
悲しいことに、それだけうちは王家から下に見られている。
街道の整備は国が行なっていて、私達貴族が勝手に整備出来るものではないから、今もこの状況が続いてしまっている。
「では、私が先導いたします」
「分かったわ」
護衛とそんな会話を交わしてから、私達は王宮前から出発した。
それと同時に、王宮の方が騒がしくなってきて、なんと騎士団が建物から出てきた。
「罪人はまだ中にいるはずだ! 元聖女を逃すなよ!」
「「はっ!」」
そんな声が聞こえてきて、悪寒を感じてしまった。
何がどうなったのか、私は罪人にされてしまったらしい。
連れ戻しに来るだけという予想は、大きく裏切られてしまった。
「お嬢様、もしかしたら全力で逃げる羽目になるかもしれません」
「少し急ぎましょう。馬には申し訳ないけど、早めに王都を出た方が良さそうね」
そうして今までよりも速く馬を走らせる私達。
夜になり人通りが少なくなっていたお陰か、すんなりと王都を抜けることが出来た。
しかし……ヒュンという風切り音がしたと思ったら、目の前の護衛さんの方でドスっという鈍い音が聞こえた。
「ぐっ……お嬢様、敵襲です……」
そう口にする護衛さんの肩には矢が刺さっていて……咄嗟に後ろを振り向くと、銀色に光るものが目の前まで迫っているところだった。
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