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18. 余命11日①
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金貨を運び終えてから数時間、私は食堂に来ていた。
「「いただきます」」
夕方の6時になり、揃って食事を始める。
いつも通り賑やかで私も楽しく会話に参加しているのだけど、相変わらずシエル様のお兄様は一才口を聞いてくくれなかった。
私が話しかけても全て無視。正直言って、いい気分ではなかった。
でも、私は住まわさせて頂いている立場。文句を言うことは出来ない。
「レティシアさん、何か悩み事でもありますの?」
「いえ……特には」
「私達が原因ですの……?」
答えても答えなくても無礼になりかねないこの状況。
思い切って、こう答えてみた。
「実は、とある方にずっと無視されていまして……」
「お兄様、ですわね。あれはお兄様が不貞を疑われないようにしているだけですので、気にしないでくださいまし」
目も合わせてくれないのは、そう言う理由だったらしい。
血の繋がらない令嬢が同じ屋敷で暮らしてれば、不貞を疑われる理由には十分すぎる。
だから……
「私、邪魔でしたのね……」
……思っていた以上に迷惑をかけていると思えてしまった。
「一応言っておくが、僕の婚約者はこの場にいる」
「はい……?」
初めて声をかけられたのだけど、言っている意味が分からなかった。
でも、答えはすぐに明らかになった。
「お久しぶりですわ、レティシア様」
シエル様のお兄様──ソーラス様の婚約者、リゼ・アーマスク侯爵令嬢が優雅に一礼してくれたから。
「貴女がソーラス様を狙っていたら追い出してもらうつもりでしたのに、全く興味がないみたいだったから安心しましたわ」
「そうでしたのね……」
少し……いや、ほとんど話が理解出来なくて尋ねてみれば、こういうことだった。
リゼ様も私と似た境遇だったらしく、は公爵邸で暮らしていた。
そこに、シエル様から私を招き入れたいと提案があった。
リゼ様は最初は拒否しようとしたそうだけど、私の今境遇を聞いて受け入れてくれた。
でも、不貞が起こらないとは言い切れないから、侍女に扮して私を探っていた。
うん、納得は出来る。理解もできる。
でも、気に入らない点が1つだけあった。
「変装を見抜けなかっただなんて……」
侯爵令嬢として、伯爵家以上の方々の名前と顔は覚えさせられたはずだった。
それなのに、簡単なメイクとウィッグ、服装が変わったと言うだけで見抜けなかった。
それが悔しかった。
だから、今夜は貴族全員の顔と名前が載っている本を読み返そうと決めた。
夕食から1時間。湯浴みを終えて夜着に着替えた私はベッドに入って貴族年鑑を見ていた。
この貴族年鑑は、貴族になりすます不届き者を撲滅する目的で作られていて、今手にしている上巻には伯爵家以上の一族全員の写真と名前が載っている。
当然だけど、私の写真もここに載っている。
もちろんそのページは飛ばして、次のページを開く。
そんな時、マリーが部屋に入ってきて、不思議そうな様子でこう口にした。
「お嬢様、貴族年鑑なんか読み返して、どうされたのですか?」
「リゼ様の変装を見抜けなかったから、覚え直しているの」
「えっと、あれは侍女の技術が凄すぎるせいです。お嬢様の努力不足ではありません」
そうは言われたけれど、今から止める気には全くなれなくて……
「お嬢様、そろそろ寝てください」
……気が付けば、時計は夜の11時を指していた。
「もうこんな時間なのね……。ごめんなさい、もう寝るわ」
「分かりました。おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみ」
そんな会話を交わし、目を閉じる。
眠気はあっという間にやってきて……。
……。
「本当にこのままでいいの?」
目の前に、私と同じ姿をした少女がいた。
「あと11日で死んで、本当にいいの?」
「どういう、こと……?」
「元凶を見つけて」
尋ねてみると、そんな答えが返ってくる。
「元凶……?」
「うん、元凶」
理解が出来なかった。
そもそも、この少女は一体誰なの……?
不思議に思って、聞いてみた。
「ねえ、貴女は誰?」
「私? 私は貴女よ」
「どういう意味……?」
私が知らないことをこの少女は知っている。だから、その言葉の意味は理解出来なかった。
「貴女とは違う世界にいるのが私。これで分かった?」
違う世界? どういうことなの?
「もう時間切れみたい。頑張ってね、レティシアちゃん」
まるで最初からそこにはいなかったかのように、目の前の少女は姿を消した。
そして……。
……。
「お嬢様、起きてください!」
私はマリーに叩き起こされた。
「「いただきます」」
夕方の6時になり、揃って食事を始める。
いつも通り賑やかで私も楽しく会話に参加しているのだけど、相変わらずシエル様のお兄様は一才口を聞いてくくれなかった。
私が話しかけても全て無視。正直言って、いい気分ではなかった。
でも、私は住まわさせて頂いている立場。文句を言うことは出来ない。
「レティシアさん、何か悩み事でもありますの?」
「いえ……特には」
「私達が原因ですの……?」
答えても答えなくても無礼になりかねないこの状況。
思い切って、こう答えてみた。
「実は、とある方にずっと無視されていまして……」
「お兄様、ですわね。あれはお兄様が不貞を疑われないようにしているだけですので、気にしないでくださいまし」
目も合わせてくれないのは、そう言う理由だったらしい。
血の繋がらない令嬢が同じ屋敷で暮らしてれば、不貞を疑われる理由には十分すぎる。
だから……
「私、邪魔でしたのね……」
……思っていた以上に迷惑をかけていると思えてしまった。
「一応言っておくが、僕の婚約者はこの場にいる」
「はい……?」
初めて声をかけられたのだけど、言っている意味が分からなかった。
でも、答えはすぐに明らかになった。
「お久しぶりですわ、レティシア様」
シエル様のお兄様──ソーラス様の婚約者、リゼ・アーマスク侯爵令嬢が優雅に一礼してくれたから。
「貴女がソーラス様を狙っていたら追い出してもらうつもりでしたのに、全く興味がないみたいだったから安心しましたわ」
「そうでしたのね……」
少し……いや、ほとんど話が理解出来なくて尋ねてみれば、こういうことだった。
リゼ様も私と似た境遇だったらしく、は公爵邸で暮らしていた。
そこに、シエル様から私を招き入れたいと提案があった。
リゼ様は最初は拒否しようとしたそうだけど、私の今境遇を聞いて受け入れてくれた。
でも、不貞が起こらないとは言い切れないから、侍女に扮して私を探っていた。
うん、納得は出来る。理解もできる。
でも、気に入らない点が1つだけあった。
「変装を見抜けなかっただなんて……」
侯爵令嬢として、伯爵家以上の方々の名前と顔は覚えさせられたはずだった。
それなのに、簡単なメイクとウィッグ、服装が変わったと言うだけで見抜けなかった。
それが悔しかった。
だから、今夜は貴族全員の顔と名前が載っている本を読み返そうと決めた。
夕食から1時間。湯浴みを終えて夜着に着替えた私はベッドに入って貴族年鑑を見ていた。
この貴族年鑑は、貴族になりすます不届き者を撲滅する目的で作られていて、今手にしている上巻には伯爵家以上の一族全員の写真と名前が載っている。
当然だけど、私の写真もここに載っている。
もちろんそのページは飛ばして、次のページを開く。
そんな時、マリーが部屋に入ってきて、不思議そうな様子でこう口にした。
「お嬢様、貴族年鑑なんか読み返して、どうされたのですか?」
「リゼ様の変装を見抜けなかったから、覚え直しているの」
「えっと、あれは侍女の技術が凄すぎるせいです。お嬢様の努力不足ではありません」
そうは言われたけれど、今から止める気には全くなれなくて……
「お嬢様、そろそろ寝てください」
……気が付けば、時計は夜の11時を指していた。
「もうこんな時間なのね……。ごめんなさい、もう寝るわ」
「分かりました。おやすみなさいませ」
「ええ、おやすみ」
そんな会話を交わし、目を閉じる。
眠気はあっという間にやってきて……。
……。
「本当にこのままでいいの?」
目の前に、私と同じ姿をした少女がいた。
「あと11日で死んで、本当にいいの?」
「どういう、こと……?」
「元凶を見つけて」
尋ねてみると、そんな答えが返ってくる。
「元凶……?」
「うん、元凶」
理解が出来なかった。
そもそも、この少女は一体誰なの……?
不思議に思って、聞いてみた。
「ねえ、貴女は誰?」
「私? 私は貴女よ」
「どういう意味……?」
私が知らないことをこの少女は知っている。だから、その言葉の意味は理解出来なかった。
「貴女とは違う世界にいるのが私。これで分かった?」
違う世界? どういうことなの?
「もう時間切れみたい。頑張ってね、レティシアちゃん」
まるで最初からそこにはいなかったかのように、目の前の少女は姿を消した。
そして……。
……。
「お嬢様、起きてください!」
私はマリーに叩き起こされた。
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