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1話 員数外の召還者
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「うわっ!イタッ!」
突然、椅子の感触が無くなり、硬い地面へと僕は尻餅を付いた。
「きゃあ!」
「何だ!」
「うぉっ!」
一体なんだ!?椅子が壊れたのか?でも他にも悲鳴が聞こえたような?僕の部屋には誰も居なかったはずだけど?
「イタタタタ」
そう思って見回してみると、見たことも無い場所に見たことも無い人達がたくさん居た。
「何これ?」
僕の近くには、三人居た。赤髪の学ラン男に、青髪の三つ編みめがねのセーラー服の少女、それに茶髪の畳んだ柔道着を背負った熊のように大きなブレザー男。
「ああん?」
赤髪の学ランは、いかにも粗暴な雰囲気にあふれ僕が近寄りたいと思うような容姿ではない。今は暫定的に赤髪君と呼ぼう。
「どこよ!ここ!?」
青髪の子は、野暮ったいめがねを掛けていて、いかにも出来そうな委員長とか生徒会長とかの雰囲気を纏った女の子だ。この子も近寄りがたい。この子は青髪さんだな。
茶髪の熊のような男は、いかにも武道をしていますというガッチリとした体格をしており、ひょろりとした自分としては、ちょっと距離を置きたい。茶髪君で。
そして混乱している僕らを取り囲むように、中世の映画に出てきそうな聖職者の服や、王侯貴族っぽい人達が居た。大きく六つのグループがあるらしく、聖職者の一団に、豪華なドレスや鎧を着た一団が三つ、更にはジャラジャラと勲章をつけた一段が一つ。そして最後に他の集団と比べると明らかに地味な服装の一団が居た。その誰もが、僕達を値踏みするような目で見ている。
下を見てみれば、魔法陣らしきものが書かれており、ゆっくりと光が弱まっていた。
逆に上を見上げてみれば、二十メートル位はありそうな高いドーム型の天井が見えた。それは、歴史の教科書とかで見た名のある教会の天井と似たようなつくりをしている。
ここは、宗教施設か何かかな?
「おお!勇者様が四人召還されたぞ!…四人?召還されるのは三人ではなかったか?」
その声は、ゴテゴテと勲章をつけた一団の方から聞こえてきた。
召還?召還って言ったかあの人?
「おいテメェ!俺に何しやがった!ここはどこだ!答えろボケェ!」
訳も分からずキョロキョロと回りを見ていた赤髪君がポケットに手を突っ込み、声を張り上げる。慣れているのかその声は良く通っていた。
やっぱりお近づきにはなりなくない人だなと僕は思った。
他の二人は、おろおろとしており、この二人も状況を掴んでいるようには見えない。
しかし、同じように中世っぽい服をきている人達も何か戸惑っているようだった。何か手違いの用な物があるようだ。
もしかしてこれ、異世界召還?
自分がメインにしているのはロボット物だが、異世界物の話も嫌いじゃない。とはいえ、自分がそんな事に巻き込まれるとは思っても見なかった。
そんな中、一際豪奢な聖職者っぽい服を着た男が代表するように両手を広げて前に出てきた。
「勇者様方!どうか、話を聞いて下さいませ。この世界を救ってくださいませ!」
その台詞言うのお姫様じゃないのかよっ!
思わず叫びそうになったが何とか耐える。
その男はどう見ても30を過ぎており、口には立派な髭を貯えている。豪華さがイコール偉さならかなりの高位の人だと思える。
だが、周りには、その台詞が相応しそうなお姫様っぽい子が居るのに何故彼女が言わないのだと思わずにはいられない。
「突然有無を言わせずお呼びだてして申し訳ありません。ですが我々も現在切羽詰っているんです。どうかお力を貸してくださいませ!」
「力を貸せだぁ?テメェ一体何様だ!」
そんな男に対し、赤髪君は、畏れる事無くねめつける。
さすがヤンキーこんな状況でも怖いもの知らずだ。
「失礼しました。私は、タッファ教の教主様から大司教の位を授かっておりますガウスと申します。今回勇者様方を召還する儀式の責任者を任された者です」
そんな赤髪の態度を気にした風も無くガウスと名乗った男性は頭を下げた。むしろ嬉々としている。
「召還?つまり俺らをこんな所に呼んだのはテメェか!」
「左様でございます」
凄む赤髪に、ガウスと名乗った大司祭は笑顔のまま平然と答えた。
「勇者様方をお呼びした理由は、もちろんご説明をさせていただきます。ただ、話は少し長くなるので座って話せる場所までご案内したいのですがよろしいでしょうか?」
「チッ。案内しろよ。何処の誰だかシラネェが、お前達もそれでいいだろ?」
赤髪君は、振り返りこちらのほうを向いて言った。目つきは鋭く、いかにも喧嘩っ早そうな奴だ。はっきりって僕の通っている高校に居たら、絶対に遠巻きにして近づかないだろう。
「ええ、いいわ」
「ああ、かまわん」
「ではご案内しましょう。こちらです」
「あのっ!」
案内を始めようとした時、僕は声を上げた。
視線が僕に集中する。
「何か履く物を貸してくれませんか?ここに来る前は自分の部屋に居たから靴を履いてなくて…」
視線が今度は僕の足元に集中する。他の三人は、外にいた時に召喚されたのか靴をはいていたが、僕は自分の部屋にいたから履いていない。石造りの床だったので足が冷たい。
「おい!履物を適当に用意しろ」
「分かりました!」
ガウス司祭が指示を出すとすぐにスリッパのような物が出されたので僕は、それを履いた。
「では、改めてご案内しましょう」
僕がスリッパを履くと、案内を再開された。
赤髪は気にした様子も無く、肩を怒らせながら案内を始めたガウス大司教の後ろを付いていく。その後ろを僕達が付いていく。
大きな両開きの扉が脇に居た二人の兵士によって開かれ、そこを通り抜ける。
僕達が扉から外に出ると扉は閉められた。
豪華な服を着た集団たちは付いて来ないようだ。
扉の先は廊下になっており、廊下の窓から少しだけ外が見えた。空は青く、綺麗に手入れをされた庭園が見える。これだけ見れば世界が危機に陥っているとは思えない程だ。
「ステータス」
僕は廊下を歩いている間に、誰にも聞こえないように小さな声で呟いた。しかし、僕の視界にステータス画面が映る事は無く、ただ自身のやった行為の恥ずかしさに内心転げまわる。
この世界はラノベの様にステータスがある様な世界ではないのかもしれないな。
僕達が通されたのは、真ん中に大きなテーブルが置かれた会議室のような部屋だった。壁には、地図と思われる絵が額に入って掛けられていた。
「お座り下さい」
部屋に待機していたメイドさん達により、椅子を引かれ、僕らは席に着く。
赤髪君は、どっかりと、青髪さんはスッと手馴れた様子で、茶髪君と僕は他人に椅子を引いてもらう経験が無いので戸惑いつつ座った。。
メイドさん達が、手際よく僕らの前に紅茶が入ったカップを置いて下がる。
「じゃあ説明してもらおうじゃねぇか」
「はい…では説明させていただきます…」
ガウス大司教は、鷹揚にうなずくと話し始めた。
それは、昔話だった。
昔、この大陸には今と同じように多くの国々があった、その大陸の中で交易をしたり戦争をしたりとそれなりに繁栄していたそうだ。
ところがある日、大陸の西の海から大量の化け物が現れ人々を襲い始めた。その数は圧倒的であっとう言う間にその化け物が上陸した国は滅んだ。
人々は、全てを喰らい破壊するその化け物をアポリオンと呼んだ。
アポリオン?どこかで聞いた事がある名前だな?何だったかな?
多くの国々がアポリオンに滅ぼされる中、それでも大陸にある各国は、利権や覇権の為に一致団結する事は無く、多くの無辜の民が死んでいった。
それを悲しんだ炎の神と水の神と木の神の三柱は無辜の民を救う為に、それぞれの神の力を宿した三人の勇者をこの世界へと遣わせた。
三人は、元々別の世界の人間であったが、神々のたっての願いという事で、この世界へとやってきた。神々は三人にそれぞれ力を与えた。神の力を受けたため、髪の毛がそれぞれ赤青茶と色が変わったそうだ。
勇者達の成果は目覚しく、三人の勇者の力によって国々はまとまり、何とかアポリオンを追い返す事に成功したそうだ。
アポリオンを追い返すと勇者は、奴らは又来ると不吉な予言と、再び現れた時に新たな三人の勇者を召還する事が出来る召還陣を残して故郷へと帰って言ったらしい。
その話を聞いた各国は、勇者が去った後、二つの組織を作った。一つは人類同盟と呼ばれるアポリオンが再来した時矢面に立つ軍事組織。もう一つは、アポリオンの脅威を後世に伝え、再びアポリオンが現れた時に勇者召喚の儀式を行うためのタッファ教という宗教団体。
目の前に座っているガウスと言う人は、このタッファ教という宗教のお偉いさんと言う事だ。
ただこのタッファ教宗教とは言うものの、教義とかは殆ど無い宗教なのだそうな。
タッファ教の目的は勇者召喚の儀式の継承と実施、そして召喚後の勇者のサポートする事。宗教を名乗っているのは、その方が後世に残りやすいだろうとタッファ教を立ち上げた初代教皇の思い付きだったそうだ。
それから千数百年の時がたった。
長い時が経るにつれ何時しか人類同盟は形骸化し、アポリオンは御伽噺の中だけで語られる存在となった。
だが、アポリオンの再侵攻が開始された。まるで人類がアポリオンの存在を忘れるまで待っていたかのように。
前回とは違い人類は、多少時間は掛かったものの一致団結する事が出来た。時間の代償として大陸の半分を失う事になったが。
一致団結した事を確認したタッファ教によって保守管理されていた召還陣を使い勇者召還の儀式が行われた。
「そして、現れた勇者が貴方様方なのです」
「なんじゃそら?」
「信じられん」
赤髪君と茶髪君があっけに取られた表情をしている時に青髪さんが質問した。
「…一つ聞きたいんだけど…私達って元の世界に帰れるの?」
帰れる?かという召還者にとって聞かずにはおれない質問だ。
「確定的な事はいえませんが、よろしいでしょうか?」
「はい」
「我々に伝わる話では、三人の勇者様は元の世界へと帰ったとありますから、何がしか帰る手段があるかと思います。ですが、そのあたりの事は詳しく残ってないのです」
"我々に伝わる話"かー。情報操作されている可能性も考えないとだろうなぁ。
「そーなのかー。ん?」
その時、僕の頭に疑問がよぎった。勇者は赤青茶の三人。僕の目の前には、その伝説どおりの髪の色を人物が三人。
待て。じゃあ僕は?
僕は、自分の前髪を掴んで見える場所まで引っ張る。そこには何時もと変わらぬ黒髪があった。
「あのぉ。彼ら三人は、その伝説どおりの髪の色をしてるんですけど僕の髪の毛は黒のままなんですけど?」
そう言うと、自分の髪の色が変化していた事に気付いていなかったのか、他の三人も自分の髪の色の確認をし始めた。
「えっ!?何これ!私の髪が青くなってる!」
「うおっ本当だ。赤くなってやがる!?」
「えっ?っつ!本当だ!」
丸坊主に近い短髪をしていた茶髪君は、自身の髪を引っこ抜いてまで確認している。
「本来、召還される勇者は3人のはず。4人召還されるとは聞いたことも無い。逆に貴方が何者かこちらが聞きたいくらいです」
ガウス大司教が、冷めた目で僕を見た。
僕の問いにガウス大司教が答えてくれてるけど何故かこの人の僕に対する当りがきついような気がする。気のせいじゃないよな?
それに本来召還される数より多い場合って大抵不遇主人公の鉄板じゃないか!おいおいおい、僕死んだわ。
つまり、ガウス大司教が俺を白眼視してるのは、俺がイレギュラーな存在だからか!理解した!けど納得したわけじゃないぞ!
「でもよ~。戦うってんなら、俺とそこの大男ならともかく、この女とそこのもやしに戦いなんて無理じゃねぇか?どう見ても強そうに見えねぇぞ」
もやし…。分かってはいたが、人に言われるとぐさりと心に来る。まぁ確かにそう言っている赤髪君は、喧嘩なれしてそうな細マッチョで、茶髪君は、いかにも格闘技をやっていますというがっしりとした体格をしている。一方僕は、平均的な身長に、赤髪君に言われたように肉付きの悪い体をしている。
「それは大丈夫です。炎の勇者様。勇者様方には神のお力が宿られております」
「そんな力が宿ってるものかね?俺には全然そんな気はしねぇがな」
赤髪君は、自分の手を見つめながら言う。
「私もです。自分にそんな力が宿っているとは思えません」
青髪さんも不安そうにしている。
「では、早速それを確かめにいきましょうか。ちょっと遠出になるので竜車に乗って行きましょう」
突然、椅子の感触が無くなり、硬い地面へと僕は尻餅を付いた。
「きゃあ!」
「何だ!」
「うぉっ!」
一体なんだ!?椅子が壊れたのか?でも他にも悲鳴が聞こえたような?僕の部屋には誰も居なかったはずだけど?
「イタタタタ」
そう思って見回してみると、見たことも無い場所に見たことも無い人達がたくさん居た。
「何これ?」
僕の近くには、三人居た。赤髪の学ラン男に、青髪の三つ編みめがねのセーラー服の少女、それに茶髪の畳んだ柔道着を背負った熊のように大きなブレザー男。
「ああん?」
赤髪の学ランは、いかにも粗暴な雰囲気にあふれ僕が近寄りたいと思うような容姿ではない。今は暫定的に赤髪君と呼ぼう。
「どこよ!ここ!?」
青髪の子は、野暮ったいめがねを掛けていて、いかにも出来そうな委員長とか生徒会長とかの雰囲気を纏った女の子だ。この子も近寄りがたい。この子は青髪さんだな。
茶髪の熊のような男は、いかにも武道をしていますというガッチリとした体格をしており、ひょろりとした自分としては、ちょっと距離を置きたい。茶髪君で。
そして混乱している僕らを取り囲むように、中世の映画に出てきそうな聖職者の服や、王侯貴族っぽい人達が居た。大きく六つのグループがあるらしく、聖職者の一団に、豪華なドレスや鎧を着た一団が三つ、更にはジャラジャラと勲章をつけた一段が一つ。そして最後に他の集団と比べると明らかに地味な服装の一団が居た。その誰もが、僕達を値踏みするような目で見ている。
下を見てみれば、魔法陣らしきものが書かれており、ゆっくりと光が弱まっていた。
逆に上を見上げてみれば、二十メートル位はありそうな高いドーム型の天井が見えた。それは、歴史の教科書とかで見た名のある教会の天井と似たようなつくりをしている。
ここは、宗教施設か何かかな?
「おお!勇者様が四人召還されたぞ!…四人?召還されるのは三人ではなかったか?」
その声は、ゴテゴテと勲章をつけた一団の方から聞こえてきた。
召還?召還って言ったかあの人?
「おいテメェ!俺に何しやがった!ここはどこだ!答えろボケェ!」
訳も分からずキョロキョロと回りを見ていた赤髪君がポケットに手を突っ込み、声を張り上げる。慣れているのかその声は良く通っていた。
やっぱりお近づきにはなりなくない人だなと僕は思った。
他の二人は、おろおろとしており、この二人も状況を掴んでいるようには見えない。
しかし、同じように中世っぽい服をきている人達も何か戸惑っているようだった。何か手違いの用な物があるようだ。
もしかしてこれ、異世界召還?
自分がメインにしているのはロボット物だが、異世界物の話も嫌いじゃない。とはいえ、自分がそんな事に巻き込まれるとは思っても見なかった。
そんな中、一際豪奢な聖職者っぽい服を着た男が代表するように両手を広げて前に出てきた。
「勇者様方!どうか、話を聞いて下さいませ。この世界を救ってくださいませ!」
その台詞言うのお姫様じゃないのかよっ!
思わず叫びそうになったが何とか耐える。
その男はどう見ても30を過ぎており、口には立派な髭を貯えている。豪華さがイコール偉さならかなりの高位の人だと思える。
だが、周りには、その台詞が相応しそうなお姫様っぽい子が居るのに何故彼女が言わないのだと思わずにはいられない。
「突然有無を言わせずお呼びだてして申し訳ありません。ですが我々も現在切羽詰っているんです。どうかお力を貸してくださいませ!」
「力を貸せだぁ?テメェ一体何様だ!」
そんな男に対し、赤髪君は、畏れる事無くねめつける。
さすがヤンキーこんな状況でも怖いもの知らずだ。
「失礼しました。私は、タッファ教の教主様から大司教の位を授かっておりますガウスと申します。今回勇者様方を召還する儀式の責任者を任された者です」
そんな赤髪の態度を気にした風も無くガウスと名乗った男性は頭を下げた。むしろ嬉々としている。
「召還?つまり俺らをこんな所に呼んだのはテメェか!」
「左様でございます」
凄む赤髪に、ガウスと名乗った大司祭は笑顔のまま平然と答えた。
「勇者様方をお呼びした理由は、もちろんご説明をさせていただきます。ただ、話は少し長くなるので座って話せる場所までご案内したいのですがよろしいでしょうか?」
「チッ。案内しろよ。何処の誰だかシラネェが、お前達もそれでいいだろ?」
赤髪君は、振り返りこちらのほうを向いて言った。目つきは鋭く、いかにも喧嘩っ早そうな奴だ。はっきりって僕の通っている高校に居たら、絶対に遠巻きにして近づかないだろう。
「ええ、いいわ」
「ああ、かまわん」
「ではご案内しましょう。こちらです」
「あのっ!」
案内を始めようとした時、僕は声を上げた。
視線が僕に集中する。
「何か履く物を貸してくれませんか?ここに来る前は自分の部屋に居たから靴を履いてなくて…」
視線が今度は僕の足元に集中する。他の三人は、外にいた時に召喚されたのか靴をはいていたが、僕は自分の部屋にいたから履いていない。石造りの床だったので足が冷たい。
「おい!履物を適当に用意しろ」
「分かりました!」
ガウス司祭が指示を出すとすぐにスリッパのような物が出されたので僕は、それを履いた。
「では、改めてご案内しましょう」
僕がスリッパを履くと、案内を再開された。
赤髪は気にした様子も無く、肩を怒らせながら案内を始めたガウス大司教の後ろを付いていく。その後ろを僕達が付いていく。
大きな両開きの扉が脇に居た二人の兵士によって開かれ、そこを通り抜ける。
僕達が扉から外に出ると扉は閉められた。
豪華な服を着た集団たちは付いて来ないようだ。
扉の先は廊下になっており、廊下の窓から少しだけ外が見えた。空は青く、綺麗に手入れをされた庭園が見える。これだけ見れば世界が危機に陥っているとは思えない程だ。
「ステータス」
僕は廊下を歩いている間に、誰にも聞こえないように小さな声で呟いた。しかし、僕の視界にステータス画面が映る事は無く、ただ自身のやった行為の恥ずかしさに内心転げまわる。
この世界はラノベの様にステータスがある様な世界ではないのかもしれないな。
僕達が通されたのは、真ん中に大きなテーブルが置かれた会議室のような部屋だった。壁には、地図と思われる絵が額に入って掛けられていた。
「お座り下さい」
部屋に待機していたメイドさん達により、椅子を引かれ、僕らは席に着く。
赤髪君は、どっかりと、青髪さんはスッと手馴れた様子で、茶髪君と僕は他人に椅子を引いてもらう経験が無いので戸惑いつつ座った。。
メイドさん達が、手際よく僕らの前に紅茶が入ったカップを置いて下がる。
「じゃあ説明してもらおうじゃねぇか」
「はい…では説明させていただきます…」
ガウス大司教は、鷹揚にうなずくと話し始めた。
それは、昔話だった。
昔、この大陸には今と同じように多くの国々があった、その大陸の中で交易をしたり戦争をしたりとそれなりに繁栄していたそうだ。
ところがある日、大陸の西の海から大量の化け物が現れ人々を襲い始めた。その数は圧倒的であっとう言う間にその化け物が上陸した国は滅んだ。
人々は、全てを喰らい破壊するその化け物をアポリオンと呼んだ。
アポリオン?どこかで聞いた事がある名前だな?何だったかな?
多くの国々がアポリオンに滅ぼされる中、それでも大陸にある各国は、利権や覇権の為に一致団結する事は無く、多くの無辜の民が死んでいった。
それを悲しんだ炎の神と水の神と木の神の三柱は無辜の民を救う為に、それぞれの神の力を宿した三人の勇者をこの世界へと遣わせた。
三人は、元々別の世界の人間であったが、神々のたっての願いという事で、この世界へとやってきた。神々は三人にそれぞれ力を与えた。神の力を受けたため、髪の毛がそれぞれ赤青茶と色が変わったそうだ。
勇者達の成果は目覚しく、三人の勇者の力によって国々はまとまり、何とかアポリオンを追い返す事に成功したそうだ。
アポリオンを追い返すと勇者は、奴らは又来ると不吉な予言と、再び現れた時に新たな三人の勇者を召還する事が出来る召還陣を残して故郷へと帰って言ったらしい。
その話を聞いた各国は、勇者が去った後、二つの組織を作った。一つは人類同盟と呼ばれるアポリオンが再来した時矢面に立つ軍事組織。もう一つは、アポリオンの脅威を後世に伝え、再びアポリオンが現れた時に勇者召喚の儀式を行うためのタッファ教という宗教団体。
目の前に座っているガウスと言う人は、このタッファ教という宗教のお偉いさんと言う事だ。
ただこのタッファ教宗教とは言うものの、教義とかは殆ど無い宗教なのだそうな。
タッファ教の目的は勇者召喚の儀式の継承と実施、そして召喚後の勇者のサポートする事。宗教を名乗っているのは、その方が後世に残りやすいだろうとタッファ教を立ち上げた初代教皇の思い付きだったそうだ。
それから千数百年の時がたった。
長い時が経るにつれ何時しか人類同盟は形骸化し、アポリオンは御伽噺の中だけで語られる存在となった。
だが、アポリオンの再侵攻が開始された。まるで人類がアポリオンの存在を忘れるまで待っていたかのように。
前回とは違い人類は、多少時間は掛かったものの一致団結する事が出来た。時間の代償として大陸の半分を失う事になったが。
一致団結した事を確認したタッファ教によって保守管理されていた召還陣を使い勇者召還の儀式が行われた。
「そして、現れた勇者が貴方様方なのです」
「なんじゃそら?」
「信じられん」
赤髪君と茶髪君があっけに取られた表情をしている時に青髪さんが質問した。
「…一つ聞きたいんだけど…私達って元の世界に帰れるの?」
帰れる?かという召還者にとって聞かずにはおれない質問だ。
「確定的な事はいえませんが、よろしいでしょうか?」
「はい」
「我々に伝わる話では、三人の勇者様は元の世界へと帰ったとありますから、何がしか帰る手段があるかと思います。ですが、そのあたりの事は詳しく残ってないのです」
"我々に伝わる話"かー。情報操作されている可能性も考えないとだろうなぁ。
「そーなのかー。ん?」
その時、僕の頭に疑問がよぎった。勇者は赤青茶の三人。僕の目の前には、その伝説どおりの髪の色を人物が三人。
待て。じゃあ僕は?
僕は、自分の前髪を掴んで見える場所まで引っ張る。そこには何時もと変わらぬ黒髪があった。
「あのぉ。彼ら三人は、その伝説どおりの髪の色をしてるんですけど僕の髪の毛は黒のままなんですけど?」
そう言うと、自分の髪の色が変化していた事に気付いていなかったのか、他の三人も自分の髪の色の確認をし始めた。
「えっ!?何これ!私の髪が青くなってる!」
「うおっ本当だ。赤くなってやがる!?」
「えっ?っつ!本当だ!」
丸坊主に近い短髪をしていた茶髪君は、自身の髪を引っこ抜いてまで確認している。
「本来、召還される勇者は3人のはず。4人召還されるとは聞いたことも無い。逆に貴方が何者かこちらが聞きたいくらいです」
ガウス大司教が、冷めた目で僕を見た。
僕の問いにガウス大司教が答えてくれてるけど何故かこの人の僕に対する当りがきついような気がする。気のせいじゃないよな?
それに本来召還される数より多い場合って大抵不遇主人公の鉄板じゃないか!おいおいおい、僕死んだわ。
つまり、ガウス大司教が俺を白眼視してるのは、俺がイレギュラーな存在だからか!理解した!けど納得したわけじゃないぞ!
「でもよ~。戦うってんなら、俺とそこの大男ならともかく、この女とそこのもやしに戦いなんて無理じゃねぇか?どう見ても強そうに見えねぇぞ」
もやし…。分かってはいたが、人に言われるとぐさりと心に来る。まぁ確かにそう言っている赤髪君は、喧嘩なれしてそうな細マッチョで、茶髪君は、いかにも格闘技をやっていますというがっしりとした体格をしている。一方僕は、平均的な身長に、赤髪君に言われたように肉付きの悪い体をしている。
「それは大丈夫です。炎の勇者様。勇者様方には神のお力が宿られております」
「そんな力が宿ってるものかね?俺には全然そんな気はしねぇがな」
赤髪君は、自分の手を見つめながら言う。
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