量産型英雄伝

止まり木

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3話 初乗り!

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「えっ!」
「なんだぁ?」
「おお!?」
 あまりにジャンルの違うロボの出現に先輩達は全員驚いていた。先輩たちが召喚していたのがスーパーロボットであるなら僕の召喚したのはリアルロボットと称されるタイプのロボットだ。
「召喚できただと!?」
 先輩達が、タイプの違うロボットが召喚出来た事に驚いていたのに対し、若干一名僕が召喚できた事自体に驚いていた。
「よ~し。全員召喚出来たことだし、早速乗ってみようぜ!ってどうやって乗るんだ?おお?」
 ケンジ先輩がそう言った時、フレイムソスの胸から光が出て、ケンジ先輩を照らした。すると不思議な事にケンジ先輩の体が浮き上がり、宝玉へと飛んでいく。
 そして、宝玉へと触れるとまるで水に沈む様に、波紋が現れ、ケンジ先輩は、その宝玉の中へと入っていった。

 竜神○系の乗り込み方か…興味深い!

『おおすげぇ!中に入れたぞ!お前らも乗るって思ってみろよ!それで乗れっから!おっほー中すげぇ!』
 するとフレイムソスから健二さんの声がした。フレイムソスのコックピットに入って大興奮している。
「本当?えっあっ!ちょっと待って!きゃあ!見ないで!あっち向いて!」
 乗ると思ったのだろう。水上先輩が、アクアヴィーネの照射した光を浴び、浮かんでいく。その時、自分がスカートを履いていた事を思い出して必死にスカートを押さえて飛んでいった。
 僕は、仰せの通りに顔を背ける。だが、チラッと見えた白い布は、僕の脳裏に焼きついた。
「うぉおお!これは興味深い」
 木下先輩も、ククノチからの光を浴び、飛んでいく。
 どう見ても僕のザムは、そういう事出来なさそうなんだよなぁ。
 僕は、どこからも光を発さないザムを見上げて思った。
 それでも一応僕も乗ると思う。
 すると、コックピットがあると思われるザムの胸部装甲がおもむろに開き、そこからグリップのついたワイヤーが地面まで下ろされた。
 コックピットは開けてやったから、後は自分で乗れと、そういう事なのだろう。

 嬉々としてワイヤーの先にある三角の足掛けに方足を乗せ、上についているグリップを掴む。グリップには、上下の矢印がついたボタンがあり、僕は迷わず上ボタンを押した。
 ウィィとワイヤーが巻き上げられると同時に僕の体が持ち上げられていく。
 手を離せばただではすまない高さまで来た。今下を見れば足がすくむ自身がある。だから僕は目の前にあるポッカリと空いたコックピットの入り口から伸びたタラップに向けて足を伸ばす。
「よっと」
 何とかタラップの上に乗ると僕は入り口からコックピットの覗き込んだ。
 そこには漢の夢が広がっていた。
 コックピットシートに、シートの左右にあるレバー、使用目的の分からないボタンに、シートを囲むモニター類。それらが詰め込まれているせいでコックピット内は結構狭い。
 たまらないね!
 迷わずコックピットシートに座り、シートベルト締め、改めて前を見据える。
 その時、僕はありえ無い事に気付いた。
 あれ?ザムの操縦の仕方が分かる!?
 それだけでは無い。ザムについての色々な事が頭に流れこんでくる。
 基本的な操縦方法はもちろん、マニアックな裏技の様な操作や、メンテナンス方法などが脳裏に展開される。
 これはアレか!古き良き時代より伝わる男の子の憧れロボットのコックピットに操縦の仕方が分かるという、あの伝説の!?
 リアルロボットには、似つかわしくない機能だけど、今の僕にはありがたい。
 指が自然と動き、コックピットハッチを閉じる。そしてザムの起動作業を始める。
 ハッチが閉じられ、正面のモニターが上から降りてくる。
 ザムのコンピュータが起動し、画面に僕には読めない文字が…って読める!?英語すら碌に読めないはずの僕が、見たことも無い文字が読める!?これがチートか!そういえばガウス大司教とも普通に話せたから言語チートは標準装備されてるみたいだな。
 モニターに見た事が無いが読める文字が流れていると、不意にコックピットシートが震え始めた。ジェネレーターに火が入ったのだ。
 順調にコンピュータの起動が終わると、僕を取り巻くモニターの光が一斉に落ちる。
 一瞬壊れたかと不安になるが、流れ込んできてた知識によれば、これが正常だ。

 室内灯の明かりを頼りに座席の上にあるボックスを開き、中から目の周りだけを覆う仮面のような物を取り出す。僕はそれを迷わず顔に装着する。
 別に中二病にかかったわけじゃない。それは既に経験済みで僕の中には抗体が出来ている。コレがザムの操縦には必要なのだ。
 この仮面のような物は、ザムの外を見るためのMR(Mixed Reality)ヘッドセットになっている。

 MRとは、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)が融合した複合現実の事。
 僕も良くわからないが、仮想空間と実現空間を重ね合わせ、お互いに影響しあう事が出来る空間を作る技術だそうだ。

 仮面を被ると自動的にフィッテングとピント調節が行われる。
 ピントが調節されると、外の様子が表示された。首を振るとそれにあわせてヘッドセットに表示される映像が変わり、まるで全天周囲モニターのようにザムの周囲が見渡せた。
 ザムの機体の各所に着けられているカメラの映像を統合し、まるで全天周囲モニターの前に座っているようにヘッドセットに映す。これが仮想現実(VR)。
 手を見れば、そこには、普通に自分の手が見える。握ったり、開いたりしてもシームレスにヘッドセットに映る。そしてその手首の所から線が延び、その先に半透明のウィンドウが現れ脳波や血圧心拍数などのバイタルが表示されている。これが拡張現実(AR)。
 それらが同時に表示されているから複合現実(MR)という事らしい。

 ヘッドセットのデザインは、まるでリアル系ロボットアニメに出てくる敵軍の普通のパイロットが被っていそうなデザインだった。
 まるで主人公に殺された時に、敵パイロットに感情移入されない様に被せた物みたいだ。それはそれで僕好みではあるのだけれど…。

 操縦桿なども表示され、外が見えているせいでコックピットの中が見えないという事も無い。
 これは凄い!先輩達はどうしているだろう。
 首をめぐらすと、先輩達は神霊機が動動いている姿があった。
 フレイムソスとアクアヴィーネが空を飛び、ククノチが地面を物凄い速度で移動している姿がモニターに映った。
 空を飛ぶ事も、ホバーじみた高速移動もザムには無理だ。操縦の仕方を理解している僕には分かる。空を飛ぶなんてとんでもない。出来たとしても背中にあるブースターを使って滞空時間を延ばしたジャンプくらいだ。
 僕は、先輩達の邪魔にならない様に草原の隅のほうで動かしてみる事にする。
 ああ、心が躍る!実際に巨大人型ロボに乗って大地を駆ける事が出来るなんて思っても見なかった。
 元の世界では、二足歩行ロボのパイロットになる事なんて、夢のまた夢だ。
 僕は夢中でザムをで走ったり、ジャンプさせたりする。
 人型ロボットのコックピットは上下左右に揺られて乗り心地が悪いといわれているが、ザムはそんな事は無く、急激に動かしてもジェットコースターよりちょっと強い程度のG位しか感じない。
 ははっ!最っ高!
 そんな感じで夢中で動かしていると、下で待っていたガウス大司教が大声で言った。。
「申し訳ありません!今日はこれまでにして降りてきてはいただけませんでしょうか!もう日が暮れます!」
 ふと見れば二つある太陽が両方とも沈み始めている。声に気付いた先輩たちも地上に降りてくる。
 僕はザムに膝をつかせてジェネレータを駐機状態にすると、ザムから降りる。
 ワイヤーを遣って地上に降りると、そこにはもう先輩達が集まっていた。どうやら、あのスポットライトみたいな光の中をふわふわと降りてきたらしい。
「よう、天田。ってそれどうしたんだ?」
「えっ?それって何ですか?あっ」
 ケンジさんに顔を指差されて、顔に手を持ってくると、硬の感触がした。それは、外し忘れたMRヘッドセットだった。
 あっ!あまりにも普通に外が見えたのと、まるで付けていないと錯覚するほどの着け心地が良さから自分がヘッドセットを被ったままなのを忘れてた。
 僕は、恥ずかしさにヘッドセットを慌てて外す。
「それ、操縦するのに必要なものなの?」
 水上先輩が、興味深そうにヘッドセット見ている。
「そうなんです!これ被っても普通に外が見えるんです!それに着け心地が良いから着けてるのを忘れちゃった位です!」
「へぇそうなんだ?ちょっと被ってみていい?私、こういう最新機器って言うのに目が無いの!」
「どっどうぞ?」
 外した、MRヘッドセットを水上先輩に差し出すと、嬉々としてそれを受け取った。水上先輩は、メガネを外してかわりに仮面を被った。
「すご~い!これ被っても普通に外が見えるわ!ってあら?これ外を見るだけじゃないの?」
 水上先輩はそう言うと、名にも無い空間に向かって何かボタンを押すような動作や、何かを横にスライドさせるような動作をする。
 ケンジさん達は、一体何をしてるんだという目で見ているが僕には水上先輩が何をしているのかは分かる。
「はい。ジェスチャーコントロールも出来るみたいでそれ自体がスマホみたいに使えるみたいですよ」
「ジェスチャーコントロールって何だ?」
 ケンジさんが聞いた。
「ジェスチャーコントロールって言うのはね!身振り手振りが、そのまま機器の操作になる事を言うのよ。これは、MRのお陰で、空間にボタンが浮いてる!これ凄いわ!」
 ケンジさんの質問に水上先輩が嬉々として答えた。見かけによらず水上先輩は家電マニアなのかもしれない。いや最新機器と言った方が良いか?
「へぇ?それにしてもお前のロボットなんか俺達のとは変わってるな。やられ役っぽい」
 興奮してMRヘッドセットを被っている水上先輩を横目にケンジさんが言った。
「そうですね。先輩達のはヒーローって感じがするのに僕のは、量産型の敵って感じがするんですよね。そこが良いんですが…」
「いいのかよ!」
 ケンジさんが突っ込んだ。
「でも、ロボットが召喚できるって分かっていいじゃない。これでこの世界の人達からは無碍に扱われないんじゃないかしら?」
「だな」
 先輩達とそれぞれのロボットについて語り合っていると、ガウス大司教がいつの間にかそばにいた。
「ご歓談のところ申し訳ありません、勇者様方、神霊機を送還なさって下さい。その後は教会に戻って夕食といたしましょう」
「送還?また念じりゃ出来るか?おっ出来た!」
 ケンジさんが、念じたらしく、雄雄しく立っていたフレイムソスはあっとう言う間に光の粒になり消えていった。
「さすが、熱田様」
「ケンジでいいぜ。ガウスのおっさん」
「おっおっさん…。いえ、では、ケンジ様とお呼びさせていただきます」
「あっ消えた」
「ふむ」
 水上先輩と木下先輩も、その間に機体の送還を済ませた。
 僕も送還出来るかやってみよう!
 送還!
 やってみたけど、一向に僕のザムは送還されず、目の前に居る。
 送還!送還!送還!
 何度思ってもザムは消えない。 
 イメージが違うのかな?じゃあ返還!
――――機体の返還をしますか?
 そう思ったら突然僕の頭の中に、ザムを召喚した時の声がした。僕は思わず"あっはい"と返事をしていた。
――――初回コール枠の機体の返還の為、資材ポイントは発生しませんがよろしいですか?
 えっと。はい。
 システム音声らしき声に答えると、そこでようやく僕の乗っていたザムが光の粒になって消えた。
「お~し。じゃあ帰って飯にしようぜ!」
 再び乗り込むと召喚された建物(やっぱり教会に召喚されていたらしい)に戻る事になった。
「アマタ君これ、返すわ!また貸してね?」
「あっどうも。分かりました。あれ?」
 機体を送還したはずなのに、僕の手には、MRヘッドセットが、返還されずに残ったままだった。
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