量産型英雄伝

止まり木

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24話 通信指揮システムを作れ!

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 一人で勝手に偵察しに行った翌日から僕に、お目付け役が付く事になってしまった。それを僕が知ったのは、その日の朝食の時だった。
「…何でセリアさんが、僕の秘書兼監視役をやる事になっているのでしょうか?」
 城の中にある廊下を歩きながらセリアさんに聞いた。
「アマタが、無茶をしない様によ。私が居れば、アマタも無茶は出来ないでしょう?」
「…ですから言ってるじゃないですか、昨日は、偵察が目的で、超遠くからアポリオンを見るだけで危険な事は一切無かったって」
「アマタが一人で行動する事自体が問題なのよ!アマタはこの国の希望なのよ!それを自覚なさい!…それで、今日は何するの?」
 危険な事はするなと言う割には、セリアさんの目は輝いている。
 そりゃ、神霊機に遠く及ばないにしろアポリオンに対抗できるザムを召喚する僕が、一人で戦場に向かうというのはありえない。
 でもまぁ僕がしたかったのだからしょうがない。

「ああそうだ。アマタの言っていた通り小隊長達に今日城に来るように伝えてるけど、何するの?」
「彼らには通信指揮システムを作るのに協力してもらいます。オペレーターをしてもらうメイドさん達もリーリアさんに頼んで呼んでますよ」
 システムを作るって事からプログラムとか電子機器関連の事を連想するが、別に人々が協力して目的を遂行する為の組織や体系、ルールなどを作るのもシステム作りなのだ。
「オペレーター?メイド?一体彼女達に何をさせるのよ?」
「それを説明する為に向かってるところ。一緒に説明した方が早いでしょ」

 城の正面玄関へと到着し玄関の扉を開ける。。
 扉を開けるとそこには既にリーリアさんが、5人のメイドと。セリアさんが5人の小隊長が待っていた。
 僕達が外にでると、メイドさん達は一糸乱れぬ見事なカーテシーを披露し、小隊長は僕に向かって敬礼した。
「デアフレムデ様。一応ご希望通りの子達を集めましたが、彼女達に何をさせるつもりでしょうか?もしかして彼女達を戦場へと連れて行くのですか?」
 そう言ったリーリアさんの目は冷たい。自分の部下がどんな仕事をさせるのか知り、それが不適切だと思ったら彼女は、この場からメイドさん達を連れて帰るつもりなのだろう。
「その質問に関しては、"はい"でもあり、"いいえ"であると言わせて貰います」
 そんな彼女の目を見ながら僕は答える。
 答えを聞いたメイドさん達がざわめく。代表してリーリアさんが再び聞いて来た。
「どういうことですか?」
「戦場で直接敵と対峙する事だけが、戦いでは無いという事ですよ。彼女達は、基本的にこの城で仕事をしてもらいます」
「仕事?」
「詳しい事はこれから行く場所で説明しましょう。小隊長さん達も一緒に来てください」

 城に作られた訓練場の端へと向かう。そこには、二階建ての倉庫の様な建物が立っていた。元は、倉庫だった物を少し無理を言って改装してもらった。倉庫の横には一機のザムが膝をついて駐機してある。
 そのザムには右腕が無い。カルナート防衛戦でアランさんが乗り、ギメランタイマイに腕を千切られた機体だ。ザムを修理出来る人間は居ないので、もう戦闘には、出せないが、それでもザムにしか出来ない事はまだ沢山ある

 僕は倉庫の扉を開けて、一堂をを倉庫の中へと招き入れる。
「ここがメイドさん達の職場になる場所。指令所になります。一応は仮設で、色々と改善点が分かったら城内か、城を増築してちゃんとした司令室を作る予定です」

 その倉庫内を説明するならロフト付き1ルーム。または、二階にもスペースのある酒場だろうか、一階は地面むき出しの場所で、部屋の脇にロフトのような二階に行く階段がある。
 二階の部屋には、広い空間に大きなテーブルが置かれていた。
 
 そこに、全員を座らせた。そこで、メイドさんにしてもらう仕事の説明をする
「メイドさん達にやってもらいたい仕事は、ザム・イーワックが集めた情報をこの場所でまとめて、その情報を最前線で戦っている人達に伝える。簡単に言えばこんな感じの仕事です。オペレーターって言うんですけどね」

「何?メイドのお上ちゃん達が俺達に命令するってのか?」
 スキンヘッドに、顔に大きな傷を持ったいかにも兵士だといった雰囲気も持った小隊長が言った。
 そんな彼がじろりと不満そうにメイドさん達を見るが、彼女達は、それに動揺する事無く平然としている。
 注文どおり、どんな強面の男に対しても物怖じしてないな。そういう肝っ玉の太い人をリーリアさんに頼んでいたのだ。
「そうではないですよ。彼女達は、いわば伝令兵です。指示は、司令官の者が出します。現状ではガルロックさんか僕ですね」

 そこで、僕は、並んでる小隊長達の後ろに移動して、ちょいちょいと手を招き集める。そして並んでいるメイドさん達に聞こえないような小声で聞く。
「一つ聞きたいんですが、偉そうなおっさんの声で命令されるのと可憐なお嬢さんにお願いされるのどちらがお好みですか?」
「えっ?そりゃあお嬢さん方にお願いされる方がって…あ!」
 チャラ男な雰囲気のある小隊長がそう言い掛けた時、はっとした。その時、僕は深く頷いた。
「そういう事です」
「グッジョブ閣下!」
 チャラ男小隊長は、いい笑顔で親指を立てた。
 僕が深く頷きながらそう答えた時、僕の背中に刺さる女性一同の目が冷たくなった気がするが、これは譲れない。譲れないのだ。オペ子は必要なのだ!女の子の声の方が男の声より聞き取りやすいのだ!
 もう一つの理由としては、終わりの無い生存競争の様な戦いに、使える戦力は全て使いたいと言うのもある。戦える男を後方でオペ男させるよりは、戦えない女性にオペ子をしてもらい。男を戦場に出した方が確実に戦力が上がる。ようは適材適所と言う訳だ。

「それとメイドさんには、もう一つ仕事があります」
 そこで僕は、二階から落ちないようにする為に作られた柵に近寄り下を指さした。
「そしてもう一つは、一階には、このスベン公国の大きな地図を書いてあるので、ザムイーワックから送られてくる情報を元にアポリオンの駒を置く仕事をしてもらいます」
 メイドさん達が立ち上がって下を覗き込むと、そこには地面を掘っただけの物ではあったが、巨大な地図が作られていた
「…ああ、なるほど、この国に侵入したアバドンが今何処に居るのかを、この場所からでも確認出来るようにするのか…」
 小隊長の一人が合点がいったと言う様子で頷いた。
「そうです。最後にそれを見て攻撃する相手を司令官が決め、その決定を君たちが遊撃隊に伝える。それがメイドさん達の仕事となります」

「…でも、そんな事どうやってやるのですか?」
 メイドさんの一人が手を上げながら言った。ふわふわな髪質の赤毛セミロングの髪型をしたメイドさんだ。確か名前はアンだったかな?
「その為に、あのザムをこちらに回して貰いました」
 僕は二階に作られた扉を指差した。それはザムに通じる渡り廊下へと出る扉だ。
 その扉を開けて、短い渡り廊下へと出る。渡り廊下の先はザムのコックピットへと繋がっている。僕はコックピットの前に立って後を着いて来たメイドさん達に向かって手を差し出す。
「メイドさんのどなたか、ここに座ってくれませんか?」
「では、私が座ります」
 手を上げたのはリーリアさんだった。リーリアさんは僕の手を取ってザムのコックピットシートに座る。
「あっ!あっ!これは…凄いわ!頭の中にこの子の扱い方が入ってくる!」
 ちょっと危ない声を上げているが、リーリアさんにちゃんと操縦方法がインストールされたようだ。それを傍から見ていたメイドさん達も顔を赤くしている。
 やはり、このインストール機能は反則だ。コックピットシートに座ればすぐに使い方が分かる。このお陰で通信の細かい説明が必要なくなる。
「では、リーリアさん。ザムをアイドリングモードで起動してください。やり方は分かるでしょう?」
「はい。分かりますわ」
 そう言いながらリーリアさんは、よどみの無い動作でザムをアイドリングモードで起動する。
 ザムのジェネレータがブゥンと動き出し、僅かに振動する。その音にメイドさん達がビクリと震えた。
 アイドリングモードとは、ザム自体を動かす事は無いけれど、ジェネレーターを最低限の出力で起動し、搭載されているコンピュータや通信機をキャパシターのエネルギーを使わずに使用するモードだ。
「それでこれからどうするのですか?」
「では、アイドリングモードにしたまま、ケースからMRヘッドセットを持って出てきて下さい」
「これですね。分かりました」
 リーリアさんがコックピットからヘッドセットを持って出てくると、一旦倉庫の二階へと戻る。
「では、それを被ったまま一階を見てください」

「はい。…これは!こんな精巧な地図初めてです。あっカルナートがこんなに小さく!」
 すでに、ザム・イーワックとのリンクやら諸々の設定はすんでいるので、彼女には一階の床の部分に巨大なスベン公国の地図が見えているのだ。この世界でこれほど精度の良い地図は今まで存在しなかったのだろう。
「あら、この赤い点は何ですか?」
「それは、昨日の時点でのアポリオンの群れの位置ですね。では、一旦、ヘッドセットを外して下さい」
 ヘッドセットを外すと若干目が潤んでいるリーリアさんの顔が現れた。頬が上気しており、とても色っぽい。
「うっうん。では、そのヘッドセットを他の方に被ってもらってください」
「ミルダ。これを被って一階を覗いて御覧なさい」
「…はいメイド長」
 ミルダと呼ばれた髪毛がグレーでショートカットのメイドさんがおっかなびっくり仮面の様なMRヘッドセットを被る。
「おお!これ凄い!何ですかこれ!魔法ですか!?この赤い点に駒をおけばいいのね!」
「ほらほら、見たのなら他の子に渡して下さい」
 それからメイドさん達がかわるがわるヘッドセットを被っていく
 今あのヘッドセットを被って一階の床を見ると、カーペットのように敷かれた巨大なスベン公国の地図が見えているはずだ。
「はい!私にもみせてよ!!」
 うずうずとしていたセリアさんが最後のメイドさんからMRヘッドセットを受け取るとそれを被る。
 小隊長達の何人かが自分も被りたそうにしていたが、さすがに言い出す猛者は居なかった。
「おお!」
 セリアさんが、二階の手すりに掴まって一階の床を覗き込んでいるとリーリアさんが言った。
「これなら、デアフレムデ殿がおっしゃっていた仕事が出来そうですね」
「まだまだ不安な事は一杯ありますけどね。実際にやってみて失敗して、少しずつ改善していっていい物にする予定です」
 メイドさん達全員に一回ザムのコックピットに座ってもらい、ザムというか、ザムの通信機器及びMRヘッドセットの使い方を覚えてもらう。
「それで俺達はなんで呼ばれたんだ?」
 強面の小隊長が聞いてきた。
「どのような情報が戦場では欲しいか、そしてどういう順番で話して欲しいかの現場の意見を貰いたいんです。戦場で迂遠な説明なんて聞きたいとは思わないでしょう?だから、どの様に連絡してくれたら良いか、メイドさん達に伝えて欲しいんです。もちろんメイドさん達の意見も聞きながらね」
「なるほど、たしかにな。分かった協力させてもらおう」

 小隊長達とメイド達を交えた通信指揮の試行錯誤が始まった。



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