量産型英雄伝

止まり木

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41話 難民キャンプへ

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 外側の城壁の門を通り過ぎた時、門の周りにはたくさんの野次馬おり、皆城壁の外に立っているザムを見えあげていた。
 危険が無いことを知って興味津々と言った様子だ。
 僕らの乗る竜車が門から出ると、ザムは向きを変え竜車の先導を始める。
 竜車の振動+ザムの歩行の振動で乗り心地がさらに悪くなるが、安全のためには、仕方が無い。
 そのザムの一挙手一投足を見て野次馬達が歓声が竜車の壁越しに聞こえてくる。
 
 とりあえずは、最初の一発をかます事は出来たかな。
 窓の外を眺めならが、これからどうすかを考えていた時、正面にフォニアさんが話しかけてきた。
「ああ、そういえばアマタ様…いえ、ご主人様」
「!?」
 ハイレルゲン奪還作戦から後、フォニアさんはちょくちょく僕の所に来ては、ご主人様と呼び、世話と言うか奉仕したがるようになった。
 フォニアさんだって女王としての仕事があるのにだ。
 今でも彼女は僕を騙してスベン公国に連れて来た事を気に病んでいるのだろう。僕はもう気にしていないのに。
 だが今回はちょっと違う様だ。雰囲気が尋常じゃない。

 竜車の中の空気が一気に冷たくなる。

 僕は、窓の外に向けていた頭を、さび付いた機械のようにギギギと回して正面に座っているフォニアさんを見た。
「エレンシア様とシズネ様は美しかったですね?」
 顔を向けた先には、当然微笑んでいるフォニアさんがいる。
 いつもと変わらない、綺麗な微笑だ。
 けど、なんかベール越しに見ても、彼女の目からハイライトが消えている様な気がした。別に漫画じゃあるまいし、そんな事はありえないんだけど…
「えっええ、セリアさんに教えてもらったんですけど、あの二人は有名な美姫だそうですね?」
 僕の発する声が緊張から微妙に上ずる。
「はい、私も何度かお二人がお出になられたパーティに参加したことがあります。小国の地味な姫であった私とは違い、彼女達は、美しくいつも話題の中心でした」
 フォニアさんはその時の事を思い出しながら語る。
「私にご不満があるから、私に夜伽をお命じにならないのですか?あのお二人のほうが良いのですか?」
 その声は、鈴を転がすような声でありながら 背筋も凍るような響きだった。
「いやいやいや、違う。違うよ!?フォニアさんは綺麗だよ!本当!」
 僕はとっさに否定する。

 本当にそうだ。最初に会った時は、やつれていた印象のフォニアさんであったが、帝国からの支援物資分捕りにより食糧事情が良くなったので、疲れやつれた少女から、美女へと成長することを容易に想像できる美少女へと変身していた。いや、元に戻ったと言うのが本当は正しいのだろう。
 なおかつ、女王になった事により、内面の凛々しさも得ていた。モブであると自認する僕にとってはまぶしい位だ。
 そんな彼女に身を差し出しますから国を助けて!なんて言われたって恐れ多いし、薄幸の少女って幸せになってほしいって思うし。こういう形でいたしてしまうのは、どうかと思うし…。この条件で手を出したりしたら勇者様方にぶん殴られそうだし。
 というか、僕としては普通に恋愛して好きあったもの同士で事をいたしたいと申しますか…。はい、そんな感じなので。手は出せない。興味が無いわけじゃないんだよ!むしろ興味津々だよ!
「別れ際に、ああ言ったのは、後で二人があのオヤジに罰を与えられない様にする為であってそういう意味じゃないから!」
「最初に取り入ろうとした私が言うのも変ですが…今後アマタ様にはたくさんの女性が現れ、取り入ろうとするでしょう。ですが、その多くがアマタ様のお力が目当てです」
 僕自身の魅力じゃないって事か。事実だけど、面と向かって言われるとキツイなぁ。
「分かっていますよ。残念だけど…」
「無礼を言って申し訳ありません。お詫びに今夜は精一杯ご奉仕させて頂きます。至らぬとは思いますが、よろしくお願いいたします」
 何言ってるんですか!この女王様!
「いや、いいから!最近忙しかったんですから陛下も寝てください!」
 人類同盟から使者が来てここに来るまでの間、フォニアさんは、僕らが不在の間の作戦進行やら、人類同盟に対する対処方法の検討などで、寝る暇もほとんど無かった。
「ですが…」
 ああそうか、フォニアさんは不安なのだ。僕が心変わりをして、よそに行ってしまわないかと。
 高い報酬を払えるほど、スベン公国にはお金は無い。高い地位は、貰ってるけど、辺境の小国の地位など高が知れている。それにスベン公国で懇意にしている女性もいない。
 それはつまりスベン公国と僕を繋ぎとめているもの無いと言う事。
 だからこそ、彼女は自身の体を使ってでも僕を繋ぎとめておきたいと考えているのだろう。
 ああもう!僕はそんなつもりはさらさら無いのに!どうすれば分かってもらえる!?
 僕の口から出たのは、自分でも信じられないものだった。
「我慢できなくなったら。一番にお願いするから!」
 僕は一体何を言ってるんだ?我慢できなくなったら。お願いする?何を!?何を!かっこ悪すぎる!
「そう…ですか。ではご主人様。我慢できなくなったら、何時でもお呼び下さいね?」
 だけど、そこで安心したのか、ようやくフォニアさんは引いてくれた。
 はぁ本当。僕かっこ悪すぎ…。

 一応元に戻ったフォニアさんにほっとした時、竜車は郊外にある演習場へと帰還した。

 今日はいろんな意味で疲れたな。スベン公国からここまで長距離移動して、ゴマすりすりの人類同盟の狸親父に会って、フォニアさんが不安から暴走して…こんな日が後4~5日は続くのか…。ああ、早く帰って新兵器のテストがしたい…。
 日が沈み始めた外を見ながら僕はそう思った。


 翌日、僕らはザムとダロスを伴い竜車に乗ってラガツへと向う。別に人類同盟に用があるわけじゃない。
 道中、門から出てくる人々を見た。
 薄汚れた服を着た人々が、ラガツの門をくぐり街の外へと出て行く、その流の先は動きからして、二枚の城壁のさらに外側に作られた城壁だろう。
 別方向に向かう走竜に付きの荷車は、商人かな。
 僕らはその横を慎重に通る。街を出て行く人々が、怖そうに、又は頼もしそうにザムを見上げながら通り過ぎていく。
 立ち止まって見ようとする人もいるが、出て行く人の警備をしている兵士に怒鳴られ、すぐに動き出す。

 門の前まで来ると、門の左右に立ち警戒していた二機カニンガムのうち右側に立っていた機体が声を上げた。
「てっ停止願います!スベン公国の方々とお見受けしますが、ラガツへ何か御用でしょうか?」
 若干ビビリながら門の警備をしていたカニンガムが声を張り上げる。
 さすがに今日は逃げ出さないか…。
 竜車の窓を開き、カニンガムに向かって僕は答える。
「今、このラガツに逗留しているライツナー伯爵にご挨拶しようかと思いまして参りました。通行の許可を願います」
「ライツナー伯爵…ですか?少々お待ちください…今調べてまいります」
 僕達の用件を聞いたカニンガムが門に付随して作られている待機所へと向かった。
 しばらく待っていると、今度は、髭を蓄えた兵士が走ってきた。着ている制服がほかの兵士よりちょっとだけ飾りが多いことから、小隊長とかそれなりの
「お待たせしました。わたくしこの門の任されているブッホ・コルツェルと申します。…あの申し訳ありません。この街に滞在している貴族のリストを調べましたが、我が国にライツナーと名の付いた貴族はおりません。お名前をお間違いじゃないでしょうか?」
 居ない?どういう事だ?
「あら、ライツナー伯爵は、ちゃんとここの難民キャンプ居るわよ」
 言ったのは、一緒に竜車に乗っているセリアさんだ。

 今日はフォニアさんは一緒に来ていない。彼女は今トブタイのキャビンで急ぎではない政務をこなしている。
 しかもこのトブタイはスベン公国の人々によって改造されている。キャビンに並んでいたほとんどの座席が取り外され、その開いたスペースに高級そうな机や棚、ベッドが運び込まれ、フォニアさんが問題なく快適に仕事が出来るようにされていた。さらにトブタイの機体表面にスベン公国の紋章が大きく描かれ、エアフォースワンばりのスベン公国公王専用機と化していた。
 
「何ですって?難民キャンプに?」
 ブッホさんは目を丸くして驚いた。
「え?でも変じゃないですか?他国の貴族でしょ何で難民キャンプなんかに居るんですか。亡国とはいえ他国の貴族だったら、それなりの場所に保護するんじゃないんですか?」
「あ~それは…」
 僕の質問に、ブッホさんが顔をしかめた。言いにくいことがあるようだ。
「人類同盟は、滅ぼされた国の貴族を貴族として認めていないの。だから、ここの人たちにとってライツナー伯爵は、伯爵じゃなくてただの難民扱いなんだそうよ」
 教えてくれたのはセリアさんだ。
「ええ…」
 滅びたとはいえ人類同盟加盟国だった国の貴族をただの難民として扱うなんて…。おかしくないか?
「それより、ライツナー伯爵の使用する天幕が空の上から見えたわ。ここ居るのは間違いないから、通してくれない?」
「しょ少々お待ちください!今上に報告して護衛を用意させますので!」
 そういうとブッホさんは門へと走っていった。それから結構待たされた後、彼は門から複数の兵士達を連れて戻ってきた。
「お待たせしました。難民キャンプではこの者達が皆様の案内と護衛をいたします」
「護衛なんて頼んでないわよ?自前の護衛もいるし」
「何があるか分かりませんのでこちらで用意させていただきました。どうぞお気になさらずに」
「そんなに治安が悪いんですか?」
「いえ!そんな事はありません!難民キャンプの治安は我々衛視によって維持されています!」
 僕の問いを、責任者は声を大にして否定した。
「そうですか」
 上空から見た時は、衛視なんて一人も難民キャンプに居なかったんだけどなぁ。
「では、案内させていただきます!」
 人類同盟が用意した先導で僕らは門をくぐった。
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