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20聖なる森

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 ヤーパン国王宮にて、

 「聖女様は、舞踏会にお越しにならず、市中の居酒屋で魚のアラを召し上がってらっしゃったらしい。いかがなことか?」

 「その際に、チンピラを更生させ、ならず者を捕まえるなどの功績があります。」

 「うむ。聖女様は舞踏会よりもお酒を好まれるのかもしれない。」

 「いや、会話を楽しまれているのではないか?」

 聖女様を招くため、次こそは、と知恵を絞る。

 普段通りの夜会形式に、利き酒会を合わせたものの招待状が来る。その名も「歌声グルメパブ」。

 よくわからない名前?のパーティは不安が募るばかりと言うことに気づいていない。

 次のパーティも欠席の返事を出す。

 ところで、この前捕まえたならず者がどうなったかと言うと、猿に飛び掛かられ、大事な急所を失った者、クロヒョウに顔を舐められ、鼻をかじられた者、象の鼻でカラダを絞られそのまま内臓破裂して死んだ者など、1週間経過する前に一人残らず亡くなった。案外、ひ弱なのだ。ならず者は一人では何もできないから、徒党を組んで暴れる。

 動物たちは、今度街へ出かけた時は、また「お土産」を期待するようになったのだが、そうそうならず者が蔓延っているわけでもないと窘める。

 動物たちにとっては、「おもちゃ」に過ぎず、殺意など微塵もない。だから、そこに罪悪感はない。

 あの王子は自滅したけど、こういう遊び相手にしても悪くはなかったと思う。

 動物たちは、いつも狩られるだけの存在では割に合わない。

 それにしてもあの「ドン」という居酒屋、タイのアラ煮があったということは、ヤーパン国は海に隣接している国なのであろうか?

 海を見に行きたいけど、また聖女様と騒がれることは、ウザイ。当面の間、アラ煮で辛抱するか?

 実際のところ、オリヴィアは自分が本当に聖女様なのかどうかわからないでいる。自分の力のほとんどは、真の聖女様であるステファニーおばあさんから頂いたもので、借り物という感覚があるから。

 だから聖女様と騒がれることに困惑を隠せない。

 バーモンド王子とは、あれから会えずじまいであるが、もし聖女様を名乗っているときに、バーモンドに見つかりでもしたら、「このかたり者!」と罵られること必至なので、怯えている。

 オリヴィアは自分からは、絶対名乗らない。他人が聖女様と評することは好きに任せているだけ。

 そんな時、アンダルシア国教会から、便りが届いたのだ。

 「聖女様、どうかアンダルシア国へお戻りになってください。」

 手紙には、王都へ。と書かれていなかったことから、ひとまず父と相談して、辺境領へ戻ることにしたのである。

 ジャングルのオアシスはそのままにして、週末はオアシスで過ごし、平日は辺境領に滞在するつもりでいたのだが、住民投票をした結果、週末だけ、気が向いたら辺境領に戻る案が優勢になったので、しばらくはオアシスにとどまることに決まる。

 辺境領に戻るには、各自の自由とし、スカイダウン家が口出ししないことにする。

 それも今週末、ヤーパン国でお祭りがあるから、みんな楽しみにしている。

 お祭りを見ないで、何もない辺境領へ帰る意味がない。

 国教会は、辺境領へ週末にでも聖女様が戻ってこられるかも?と期待して、人を派遣したがいっこうに戻ってこられる気配がない。

 聖女様どころか、領民も領主も戻ってこない。

 「やはり、お怒りなのだろう。」

 オリヴィアからすれば、何を?と聞きたいところだが、自分の知らないところで勝手に解釈されているから困ったもの。

 そんなことより、今は週末のお祭りに何を着ていくかが、一番の関心ごとでアンダルシアのことなど、何とも思っていない。
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