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37企て
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正式に婚約はしていないが、アールスハイド殿下とオリヴィアは、もう恋人状態になっている。
二人の仲は、公然の秘密で、誰も何も言わない。言えないというべき間柄になる。
国王陛下の孫というだけで、冷や飯食いには変わらない。だから、まだ結婚できないでいる。
そんな時に、またヤーパン国の暗殺者集団が性懲りもなく、来る。
気のせいか、だいぶ疲れているように見える。
終点まで行き、逆回りでもう一度、港のある国を回ってきて、ヘトヘトなのだ。
「どうか。ここを愛護としてくだされ。この国に聖女様は本当におられぬのか?」
「残念だが、聖女様はこの国にはおられぬ。」
「まことか?」
「なにゆえ、そのように聖女様を探しておられる?」
「我ら、ヤーパン国から逐電して参ったもの達でござる。ヤーパン国の王太子殿下は、美人妻と離婚するのがイヤで、こともあろうに聖女様暗殺を企てましてございます。聖女様が他国へ逃れた後も、自分の弟殿下が聖女様を連れ帰り、結婚すれば王位継承権を失うためでございます。それに嫌気がさし、自分たちは、聖女様の住まれる国に住みたいと思って、やってきました。」
「ほぅ。して、聖女様のお名前を知っておるのか?」
「いいえ、存じ上げません。ただ、ヤーパン国の西の果ての国境を超えたジャングルの中に住んでおられるのです。」
「ならば、そのジャングルを探せばよかろう。」
「無理です。あのジャングルには、象のような巨大なフェンリルが守っていて、普通の人間が近寄ることなどできません。」
「それでは、そのフェンリルが聖女様の化身であろう。聖なるジャングルを聖女様がお守りされているのならば、そう考えるのが自然だ。」
「言われてみれば……、ありがとうございます。でも、西のジャングルから聖女様が出られ、カーニバル見物に来られたとの情報が入り、そこから船に乗り、もう聖女様は元のジャングルにお帰りになったのかもしれません。なんだか、すっきりしました。」
暗殺部隊は、そのまま引き上げてしまったが、いいのか?それで?
港の領主は、一応、聖女様っぽいオリヴィア嬢に知らせる。
「あのカーニバルで見た時の王太子妃殿下は、本当にお美しかったけど、あの旦那が暗殺を企てていたなんて、知らなかったわ。ひゃぁっ!コワイわねぇ。もう、ヤーパン国へ戻る気なんて、サラサラないわ。だいたい、ヤーパン国出身者では、ありませんもの。アンダルシアから逃げてきたのですからね!」
「え?そうなのですか?また、どうして?」
「最初は、アンダルシア国のバーモンド王太子殿下の婚約者様を虐めていたという理由で、学園を退学処分になってしまい、もちろん濡れ衣です。寮からも放り出されてしまって、行く先々で、わたくしが聖女様では?という噂が立ちながらも、いろいろな方のご支援を得て、どうにかこうにか故郷の辺境伯領へたどり着いたのです。でも、その間でも、バーモンド殿下に、その弟君のクリストファー殿下に『聖女様か!』と疑惑の目で見られ続け、それで領地から逃げ出したのです。」
「あのフェンリルとはどこで?」
「ライオンちゃんのことですか?ライオンちゃんとは、家へ帰る途中、サーカス団のお抱え医師になった時に、知り合いまして、サーカス団を辞めるときに退職金代わりにもらい受けました。」
「ふーむ。こうして聞くと、やっぱり聖女様かもしれませんよ。一度、アデセル国の教会で調べてもらったら、いかがですか?」
「ええ!でも……。」
「アールスハイド殿下と結婚するためですよ。殿下と聖女様なら、誰が見ても釣り合いが取れるってもの。今のままなら、殿下とどこからか流れ着いた令嬢でしか、ございません。」
何か、うまく言い含められたような気がしないでもない。
二人の仲は、公然の秘密で、誰も何も言わない。言えないというべき間柄になる。
国王陛下の孫というだけで、冷や飯食いには変わらない。だから、まだ結婚できないでいる。
そんな時に、またヤーパン国の暗殺者集団が性懲りもなく、来る。
気のせいか、だいぶ疲れているように見える。
終点まで行き、逆回りでもう一度、港のある国を回ってきて、ヘトヘトなのだ。
「どうか。ここを愛護としてくだされ。この国に聖女様は本当におられぬのか?」
「残念だが、聖女様はこの国にはおられぬ。」
「まことか?」
「なにゆえ、そのように聖女様を探しておられる?」
「我ら、ヤーパン国から逐電して参ったもの達でござる。ヤーパン国の王太子殿下は、美人妻と離婚するのがイヤで、こともあろうに聖女様暗殺を企てましてございます。聖女様が他国へ逃れた後も、自分の弟殿下が聖女様を連れ帰り、結婚すれば王位継承権を失うためでございます。それに嫌気がさし、自分たちは、聖女様の住まれる国に住みたいと思って、やってきました。」
「ほぅ。して、聖女様のお名前を知っておるのか?」
「いいえ、存じ上げません。ただ、ヤーパン国の西の果ての国境を超えたジャングルの中に住んでおられるのです。」
「ならば、そのジャングルを探せばよかろう。」
「無理です。あのジャングルには、象のような巨大なフェンリルが守っていて、普通の人間が近寄ることなどできません。」
「それでは、そのフェンリルが聖女様の化身であろう。聖なるジャングルを聖女様がお守りされているのならば、そう考えるのが自然だ。」
「言われてみれば……、ありがとうございます。でも、西のジャングルから聖女様が出られ、カーニバル見物に来られたとの情報が入り、そこから船に乗り、もう聖女様は元のジャングルにお帰りになったのかもしれません。なんだか、すっきりしました。」
暗殺部隊は、そのまま引き上げてしまったが、いいのか?それで?
港の領主は、一応、聖女様っぽいオリヴィア嬢に知らせる。
「あのカーニバルで見た時の王太子妃殿下は、本当にお美しかったけど、あの旦那が暗殺を企てていたなんて、知らなかったわ。ひゃぁっ!コワイわねぇ。もう、ヤーパン国へ戻る気なんて、サラサラないわ。だいたい、ヤーパン国出身者では、ありませんもの。アンダルシアから逃げてきたのですからね!」
「え?そうなのですか?また、どうして?」
「最初は、アンダルシア国のバーモンド王太子殿下の婚約者様を虐めていたという理由で、学園を退学処分になってしまい、もちろん濡れ衣です。寮からも放り出されてしまって、行く先々で、わたくしが聖女様では?という噂が立ちながらも、いろいろな方のご支援を得て、どうにかこうにか故郷の辺境伯領へたどり着いたのです。でも、その間でも、バーモンド殿下に、その弟君のクリストファー殿下に『聖女様か!』と疑惑の目で見られ続け、それで領地から逃げ出したのです。」
「あのフェンリルとはどこで?」
「ライオンちゃんのことですか?ライオンちゃんとは、家へ帰る途中、サーカス団のお抱え医師になった時に、知り合いまして、サーカス団を辞めるときに退職金代わりにもらい受けました。」
「ふーむ。こうして聞くと、やっぱり聖女様かもしれませんよ。一度、アデセル国の教会で調べてもらったら、いかがですか?」
「ええ!でも……。」
「アールスハイド殿下と結婚するためですよ。殿下と聖女様なら、誰が見ても釣り合いが取れるってもの。今のままなら、殿下とどこからか流れ着いた令嬢でしか、ございません。」
何か、うまく言い含められたような気がしないでもない。
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