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39転移魔法

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 領地はいい。のんびりしていて、暖かくて。田園地帯を抜ける風が心地よい。

 サイジアで買ってきた絨毯を売るためにアンダルシアへ、行くことになったのだが、こっそり行くというわけにもいかない。

 アールスハイド殿下と結婚してから、新婚旅行という形で行こうか?悩む。

 今やアデセルの聖女様になり、侯爵令嬢の身分では、お里帰りもなかなか難しい。

 そどころか、アールスハイド殿下の婚約者となった身では、なおさらのこと。

 結婚して、新婚旅行で行くのなら、アンダルシアも下手な真似はできないだろうと予測される。

 アンダルシア出身の聖女かもしれないけど、聖女に覚醒したのは、間違いなく?アデセルに行ってからのことだから。

 アンダルシアへの旅行のための出国手続きは、父がしてくれることになったのであるが、教会で「聖女様なら転移魔法がお使いになられるのでは?」と耳寄りな情報を入手する。

 「えー?転移魔法って?」

 アンダルシアへ行くために、転移魔法ができれば、越したことはない。もし、バーモンドに見つかりそうになっても、転移魔法で今度は逃げることができるのなら、より安全であるから。

 オリヴィアは、教会へ赴き、転移魔法の教授を受けることにする。

 魔法には、天性のものと後天的なものがあるらしい。貴族の全員に、天性の魔法が具わっているから、聖女様は貴族出身者から輩出される可能性が高いものだという。

 つまり、元々天性魔法の素養があるから、すんなり聖魔法を受け入れることができるという理屈らしいわ。

 天性魔法とは、火、水、風、土の4属性を指し、主に生活魔法として、重宝されている。

 転移魔法のような聖魔法は、それとは別に上位に位置し、特別な魔法で、選ばれた者にしか習得できないもの。

 オリヴィアは、前世の記憶を取り戻すまでは、普通に天性魔法を使いこなしていたが、前世の記憶を思い出してから、それら4属性の魔法を使うことに抵抗があり、何より周りにいる者達がオリヴィアにとって代わり、それら魔法を使う場が与えられない。

 教会で、「まず天性魔法を見せてもらいましょう。」と言われたとき、焦った。でも、今まで使っていなかっただけで、やろうと思えば、すぐにできたのだから安心する。

 「ほぅ、4属性すべてに通じておられるとは、さすがに聖女様は選ばれたお方だ。」

 と言われましてもね。早く本題に移ってほしいところが、本音で。

 「転移魔法と言うのは、どう言ったものなのでございましょうか?」

 「基本は同じでございます。天性魔法と同じようにイメージをする。行きたいと思う場所をイメージする。それがすべてでございます。」

 なるほど。

 少し、領地の温かい風をイメージしてみる。甘酸っぱいフルーツの香りが現実のものとなった時、気づけば、領地の侯爵邸の前にいる。

 「お嬢様!王都へ行かれたのではなかったのですか?」

 「ええ。そうよ。王都の教会から飛んできましたのよ。そうだわ、果物を何か一つでも下さる?司祭様にお土産を持って行こうと思って。」

 カットしたマンゴーとパパイヤをもらって、そのまま教会へと飛んでみたら、驚いた顔をされた司祭様が、いらっしゃる。

 「すごいです!さすが、聖女様でございます。私がちょっと言っただけで、すぐにイメージされるとは、さすがでございます。」

 「ひとつ、質問がございますが、よろしいでしょうか?」

 「はい、なんなりと。」

 オリヴィアは、商売上手なジェシードを連れて行きたかったので、複数人で転移する方法を司祭様より聞き出す。

 これさえわかれば、日帰りで何度もアンダルシアを往復できる。

 意気揚々としているところに、ヤーパン人と思われる一団がなだれ込んできたのだ。
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