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1婚約破棄
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「公爵令嬢マーガレット・フォン・マリンストーン、貴様との婚約は本日今、この時をもって解消させてもらうこととする。」
「なんですって!」
婚約者であるバーモンド王太子殿下から、至急相談したいことがあると言われ、駆け付けてみるといきなりの話。
「俺は真実の愛に目覚めてしまったのだ。婚約は破棄にしてくれ。」
「真実の愛などと殿下はわたくしという婚約者がありながら、浮気なさっていたというところでございますか?」
「浮気などと言う下卑なものではない。まだ肉体的な接触はないが心と心で惹かれ合ってしまったのだ。おいで。オリヴィア、マーガレットにも紹介しよう。」
え?オリヴィアって、聖女様の?
数多の奇跡で民衆を救う聖女様は、国にとって貴重な存在、わたくしと婚約破棄してまでも手に入れたいと思われたことは致し方がない。
そこへオリヴィアが震えながら来て、殿下にしがみつく
「バーモンド様、よろしいのでございますか?私のために婚約破棄までしていただいて。マーガレット様がお気の毒ですわ。」
「マギーごとき、どうでもいい女なのだ。愛しているのは、オリヴィアだけさ。」
この一言で、正直内心、ブチ切れた!
今迄さんざん公務の補佐(というより王太子が補佐をしていた)をさせておきながら、この言い草は何!?
「わかりましたわ。殿下の御心がわたくしから離れ、オリヴィア聖女様に捧げられているものなら、たとえ政略結婚でも心は必要ですから、婚約破棄同意書にサインいたしますわ。」
そこから後の記憶はない。
どこをどうやって帰宅したかわからないが、とにかく王都のタウンハウスまで来て、そこで眠りに落ちたのだ。
ここのところ公務が忙しく残業続きで、睡眠不足になっていたからであろうか?
とにかく夢を見続けていた。長い長い夢を。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
そこは満員電車の中、隣に立っている女性のピンヒールで小指あたりを踏みつけられ痛さに悶えている。
え?男になっている。そうだ!俺は、東京帝国大学工学部を出てゼネコンに就職したのだ。俺が卒業した年は後の世から、就職氷河期と呼ばれていたが、帝国大卒の俺は大学院に残ることよりも金を稼ぐことしか興味がなかった。なぜかと言えば高校生の頃、親父が亡くなり母と弟妹の面倒を見なければならなかったので、朝から晩までバイトに明け暮れたものだ。
だから弟と妹が卒業してからでないと結婚もできなかったのだ。
前世の俺の名前は、安藤鈴之助。赤胴鈴之助から父が名付けたらしい。ひらがなに直せば、「ん」と「か」の違いだけだから。
名前を似せたということから、小さい時から剣道の稽古を始め、5段の腕前であり、背も高く、なかなかのイケメンであったと自負している。
ゼネコンに入社してからと言うものは、幹部候補生だったわけだが、営業から経理、設計、現場監督とマルチに活躍し、45歳で役員に昇り詰める。
剣道をしていたおかげで、現場監督をしていた時に日雇い労働者が喧嘩をするたびに腕に覚えがあったので、何とか抑え込むことができたことは良かった。
妻とは同期入社で、妻は赤薔薇の短大を出ていた職場結婚で、寿退職し、その後娘が生まれる。
その娘も赤薔薇で高校生になり、大学受験を控えていたのだが、娘は赤薔薇の女子大を目指していて、推薦で早々と決まっていたのだ。
毎日ゴロゴロ勉強していない娘が夢中になっていた乙女ゲームがある。
俺はあまり興味がなかったのだが、ゲームのヒロインの境遇がパパの若い頃とよく似ていると言われ、時折、ゲームのあら筋を見聞きしていた。
今さらながら気づくのは、マーガレットの生きてきた世界がその乙女ゲームの世界と瓜二つだということ。それもマーガレットがヒロインを虐める悪役令嬢だということに気づく。
娘が「この女、大っ嫌い!」とよく叫んでいたその悪役令嬢が俺だと気づく。確かあの乙女ゲームのタイトルは、『アンダルシアに咲く赤いバラ』という名前だった。
ヒロインが聖女様でオリヴィアと言う名前、王太子殿下がバーモンド、悪役令嬢がマーガレット、それよりなによりアンダルシアという国名まで同じ。
なんということだ。俺は娘が遊んでいた乙女ゲームの中に転生してしまったようだ。
こういう乙女ゲームの悪役令嬢の末路までは書かれていないが、たいてい国外追放か死刑になるのだが、俺の場合は、確か公爵家から勘当されるような話で、娘がよく怒っていたことを覚えている。
「なんでここまで、イジメていた女が死罪にならないのは不当よ。」とかなんとか……。
俺が学園で貧しい平民上がりの聖女様を虐めたことなど、一度たりともない。だからかもしれない。聖女様は王太子殿下と結婚し、ハッピーエンドとなるわけだから、その後の人生は俺が好き勝手に生きてやるさ。
俺が死んだ後、娘と妻は大丈夫だっただろうか?役員だから、労災の認定は受けられないだろう。
俺はなんで死んだんだっけ?夢の中でグルグル頭を回すも、わからない。
とにかく鈴之助ではなく今は、マーガレットなのだから。今世はゲームの筋書き通りにはいかせねぇ!
マーガレットの記憶と鈴之助の記憶と経験を武器に乙女ゲームの世界でのし上がってやる!
真のヒロインは誰かと証明してやるさ。
「なんですって!」
婚約者であるバーモンド王太子殿下から、至急相談したいことがあると言われ、駆け付けてみるといきなりの話。
「俺は真実の愛に目覚めてしまったのだ。婚約は破棄にしてくれ。」
「真実の愛などと殿下はわたくしという婚約者がありながら、浮気なさっていたというところでございますか?」
「浮気などと言う下卑なものではない。まだ肉体的な接触はないが心と心で惹かれ合ってしまったのだ。おいで。オリヴィア、マーガレットにも紹介しよう。」
え?オリヴィアって、聖女様の?
数多の奇跡で民衆を救う聖女様は、国にとって貴重な存在、わたくしと婚約破棄してまでも手に入れたいと思われたことは致し方がない。
そこへオリヴィアが震えながら来て、殿下にしがみつく
「バーモンド様、よろしいのでございますか?私のために婚約破棄までしていただいて。マーガレット様がお気の毒ですわ。」
「マギーごとき、どうでもいい女なのだ。愛しているのは、オリヴィアだけさ。」
この一言で、正直内心、ブチ切れた!
今迄さんざん公務の補佐(というより王太子が補佐をしていた)をさせておきながら、この言い草は何!?
「わかりましたわ。殿下の御心がわたくしから離れ、オリヴィア聖女様に捧げられているものなら、たとえ政略結婚でも心は必要ですから、婚約破棄同意書にサインいたしますわ。」
そこから後の記憶はない。
どこをどうやって帰宅したかわからないが、とにかく王都のタウンハウスまで来て、そこで眠りに落ちたのだ。
ここのところ公務が忙しく残業続きで、睡眠不足になっていたからであろうか?
とにかく夢を見続けていた。長い長い夢を。
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そこは満員電車の中、隣に立っている女性のピンヒールで小指あたりを踏みつけられ痛さに悶えている。
え?男になっている。そうだ!俺は、東京帝国大学工学部を出てゼネコンに就職したのだ。俺が卒業した年は後の世から、就職氷河期と呼ばれていたが、帝国大卒の俺は大学院に残ることよりも金を稼ぐことしか興味がなかった。なぜかと言えば高校生の頃、親父が亡くなり母と弟妹の面倒を見なければならなかったので、朝から晩までバイトに明け暮れたものだ。
だから弟と妹が卒業してからでないと結婚もできなかったのだ。
前世の俺の名前は、安藤鈴之助。赤胴鈴之助から父が名付けたらしい。ひらがなに直せば、「ん」と「か」の違いだけだから。
名前を似せたということから、小さい時から剣道の稽古を始め、5段の腕前であり、背も高く、なかなかのイケメンであったと自負している。
ゼネコンに入社してからと言うものは、幹部候補生だったわけだが、営業から経理、設計、現場監督とマルチに活躍し、45歳で役員に昇り詰める。
剣道をしていたおかげで、現場監督をしていた時に日雇い労働者が喧嘩をするたびに腕に覚えがあったので、何とか抑え込むことができたことは良かった。
妻とは同期入社で、妻は赤薔薇の短大を出ていた職場結婚で、寿退職し、その後娘が生まれる。
その娘も赤薔薇で高校生になり、大学受験を控えていたのだが、娘は赤薔薇の女子大を目指していて、推薦で早々と決まっていたのだ。
毎日ゴロゴロ勉強していない娘が夢中になっていた乙女ゲームがある。
俺はあまり興味がなかったのだが、ゲームのヒロインの境遇がパパの若い頃とよく似ていると言われ、時折、ゲームのあら筋を見聞きしていた。
今さらながら気づくのは、マーガレットの生きてきた世界がその乙女ゲームの世界と瓜二つだということ。それもマーガレットがヒロインを虐める悪役令嬢だということに気づく。
娘が「この女、大っ嫌い!」とよく叫んでいたその悪役令嬢が俺だと気づく。確かあの乙女ゲームのタイトルは、『アンダルシアに咲く赤いバラ』という名前だった。
ヒロインが聖女様でオリヴィアと言う名前、王太子殿下がバーモンド、悪役令嬢がマーガレット、それよりなによりアンダルシアという国名まで同じ。
なんということだ。俺は娘が遊んでいた乙女ゲームの中に転生してしまったようだ。
こういう乙女ゲームの悪役令嬢の末路までは書かれていないが、たいてい国外追放か死刑になるのだが、俺の場合は、確か公爵家から勘当されるような話で、娘がよく怒っていたことを覚えている。
「なんでここまで、イジメていた女が死罪にならないのは不当よ。」とかなんとか……。
俺が学園で貧しい平民上がりの聖女様を虐めたことなど、一度たりともない。だからかもしれない。聖女様は王太子殿下と結婚し、ハッピーエンドとなるわけだから、その後の人生は俺が好き勝手に生きてやるさ。
俺が死んだ後、娘と妻は大丈夫だっただろうか?役員だから、労災の認定は受けられないだろう。
俺はなんで死んだんだっけ?夢の中でグルグル頭を回すも、わからない。
とにかく鈴之助ではなく今は、マーガレットなのだから。今世はゲームの筋書き通りにはいかせねぇ!
マーガレットの記憶と鈴之助の記憶と経験を武器に乙女ゲームの世界でのし上がってやる!
真のヒロインは誰かと証明してやるさ。
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