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8建設予定地
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視察最終日、だんだん兄が無口になっていく。
約4~500年先の文明をまざまざと見せつけられ、圧倒されるなんてものでは済まされない。
ロバートにとっては、今までの生活をすべて否定されたようなもの。
公爵家の嫡男として、何不自由ない暮らしをしてきたが、辺境領での生活は、今までの価値観を一変させるほどのものであり、かけがえのない大切な何かを得たような気がしたのだ。
「マギー、少し話があるのだが。今、いいか?」
「何でございましょうか、お兄様。」
「実はな、ずっと、ここにいてはだめかな?ここでの暮らしが気に入ったのだ。」
一度でもこの地に足を踏み入れたものは、誰でも同じ反応をする。
視察初日に、料理人からこの地で修行したいと申し出があった。二日目には侍女が、三日目には騎士までもが、ここに残りたいと言っていたので、いつお兄様が言うか楽しみにしていたのである。
「いいですわよ、お兄様なら大歓迎いたしますわ。それに味方は多い方がありがたいですわ。」
「え?味方?」
「新参者の領主ですから。という意味で。」
「ああ、なるほど。」
「それでは、今まで使っていらっしゃったお部屋をお兄様のお部屋といたします。朝夕のお食事をお召し上がりになるときは、金貨1枚が追加で必要となります。」
「あい。わかった。その前に俺の使用人に、ここに残ることを伝えなければならないが、時間はいいか?」
「ええ。みなさん、こちらへ残られるそうですわ。」
「は?俺を残してか?」
「ええ。お兄様が最後のおひとりで。もしこのまま帰られるとしたら、だれか御者を仕立てなければと、思案しておりましたのよ。」
「なんだよ。それ。俺だけ除け者扱いされてたのか?」
「いいえ、違いますわ。それだけお兄様の責任感が強いということです。戻ってお父様に報告しなければと、お思いだったのでしょう?新しく公爵邸を建てますわ。いま、しばらくあのお部屋でご辛抱くださいませ。」
「ありがとう。マギー、俺はいい妹を持って幸せ者だな。」
背中を向け、手を振りながら、兄は部屋へ戻っていく。
さてと、早急にお兄様の家を作らなければ。今度はプレハブでいいか?プレハブでも最近は、いいものが多い。
地下鉄の駅に使用したものはすべてプレハブにしたのだ。一刻も早く開通したいので、手っ取り早く建てられるから、コスト面も人件費だけの問題だが助かる。
領地のカントリーハウスを参考に……と、思っていたらいつの間にか組み立てた状態で、目の前に出現する。あとは、これにソーラーパネルを貼り、床暖房を設置すれば、完成。
この分だと夕方までには、お兄様に引っ越ししてもらえそう。
夕方までかからなかったのは、どうやら家具付きモデルルームを召喚したみたい。床暖房の設備もソーラーパネルもしっかりついている。オール電化と指定していないのに、好都合だ。
最近、召喚術がアップしている気がする。
乙女ゲームでの設定だから仕方がないか。
それにしてもオリヴィアが偽聖女様と言うのは、どうしたのだろうか?
バーモンド様、お可哀そう。せっかく真実の愛のお相手と巡り会えて、順風満帆だと思われたのに、こんなことになってしまわれて。
いやいやいやいやいやいやいや。
同情なんてしているヒマはない!今までさんざん公務を押し付けられてきたのだから、少しぐらいは自分でやれよ!罰が当たったのだと考えれば、納得がいく。
そんなことどうでもいいや。
公爵邸の使用人を集め、今から引っ越し作業をしてもらう。お兄様にも、身の回り品を持って、公爵邸のほうへ移動してもらう。
「マギー、公爵邸を建てるって言ってたけど、早すぎない?」
「うーん、なんとなく構想は前からあったので、特に苦労しなくても出来たのよ。」
ハイ。嘘です。
「マギーは本当に聖女様みたいだな。」
げ!なんてこと言うのよ。お兄様、わたくしは悪役令嬢なんですからねっ!の言葉を飲み込み、ニッコリと笑う。
実際、マリンストーン家のものは、婚約破棄されてからオリヴィアなんかより、マーガレットのほうが聖女様ではないか?との声がある。
だからオリヴィアを選んだバーモンドに対する怒りが大きい。今こそ、決起すべきとの機運が上がるのも致し方ないことかもしれない。
これは「聖戦」だと言い訳がつく。
マーガレットはまだ早いと思っているのは、兵が足りない。もっと人口が増えなければ、辺境領の力をつけないと、王家とは争えない。
午後から、団地と大型ショッピングモールの建設予定地を見に行くつもりである。
お兄様もヒマなので、ついてこられるみたい。その申し出に異論はない。
しかし、質問攻めだけは勘弁してほしい。考えがまとまらないからで、邪険にしているわけではない。
地下鉄を上がったところは、建設予定地の立て札があり、柵で囲っている。その塀をひょいとまたぎ、マーガレットは中へ入ると、同じようにお兄様もまたいでついてこられる。
測量はできている。東京ディズニーリゾートの2個分、約4キロ平方メートルの広さ。
ここに住宅団地部分とショッピングモール、公園と小学校から大学までの教育機関を作る気でいるというか?予定がある。ついでに大学病院も設置してやろうか、とさえ思っている。
ハコモノは鈴之助の分野だが、教育機関となると公爵家の肩書がモノをいうから、学校運営などをお兄様にやってもらうつもり、だからお兄様の移民を受け入れたのだ。
「お兄様、ここに学校をこしらえたいのです。そしてその学校の運営をお兄様に任せたいと思っておりますが、いかがでしょうか?」
「え!学校を俺に任せてくれるのか?わかった。がんばるよ。マギー、俺の居場所を考えてくれていたことに感謝する。」
ハイ、最初からそのつもりです。とは言わない。
約4~500年先の文明をまざまざと見せつけられ、圧倒されるなんてものでは済まされない。
ロバートにとっては、今までの生活をすべて否定されたようなもの。
公爵家の嫡男として、何不自由ない暮らしをしてきたが、辺境領での生活は、今までの価値観を一変させるほどのものであり、かけがえのない大切な何かを得たような気がしたのだ。
「マギー、少し話があるのだが。今、いいか?」
「何でございましょうか、お兄様。」
「実はな、ずっと、ここにいてはだめかな?ここでの暮らしが気に入ったのだ。」
一度でもこの地に足を踏み入れたものは、誰でも同じ反応をする。
視察初日に、料理人からこの地で修行したいと申し出があった。二日目には侍女が、三日目には騎士までもが、ここに残りたいと言っていたので、いつお兄様が言うか楽しみにしていたのである。
「いいですわよ、お兄様なら大歓迎いたしますわ。それに味方は多い方がありがたいですわ。」
「え?味方?」
「新参者の領主ですから。という意味で。」
「ああ、なるほど。」
「それでは、今まで使っていらっしゃったお部屋をお兄様のお部屋といたします。朝夕のお食事をお召し上がりになるときは、金貨1枚が追加で必要となります。」
「あい。わかった。その前に俺の使用人に、ここに残ることを伝えなければならないが、時間はいいか?」
「ええ。みなさん、こちらへ残られるそうですわ。」
「は?俺を残してか?」
「ええ。お兄様が最後のおひとりで。もしこのまま帰られるとしたら、だれか御者を仕立てなければと、思案しておりましたのよ。」
「なんだよ。それ。俺だけ除け者扱いされてたのか?」
「いいえ、違いますわ。それだけお兄様の責任感が強いということです。戻ってお父様に報告しなければと、お思いだったのでしょう?新しく公爵邸を建てますわ。いま、しばらくあのお部屋でご辛抱くださいませ。」
「ありがとう。マギー、俺はいい妹を持って幸せ者だな。」
背中を向け、手を振りながら、兄は部屋へ戻っていく。
さてと、早急にお兄様の家を作らなければ。今度はプレハブでいいか?プレハブでも最近は、いいものが多い。
地下鉄の駅に使用したものはすべてプレハブにしたのだ。一刻も早く開通したいので、手っ取り早く建てられるから、コスト面も人件費だけの問題だが助かる。
領地のカントリーハウスを参考に……と、思っていたらいつの間にか組み立てた状態で、目の前に出現する。あとは、これにソーラーパネルを貼り、床暖房を設置すれば、完成。
この分だと夕方までには、お兄様に引っ越ししてもらえそう。
夕方までかからなかったのは、どうやら家具付きモデルルームを召喚したみたい。床暖房の設備もソーラーパネルもしっかりついている。オール電化と指定していないのに、好都合だ。
最近、召喚術がアップしている気がする。
乙女ゲームでの設定だから仕方がないか。
それにしてもオリヴィアが偽聖女様と言うのは、どうしたのだろうか?
バーモンド様、お可哀そう。せっかく真実の愛のお相手と巡り会えて、順風満帆だと思われたのに、こんなことになってしまわれて。
いやいやいやいやいやいやいや。
同情なんてしているヒマはない!今までさんざん公務を押し付けられてきたのだから、少しぐらいは自分でやれよ!罰が当たったのだと考えれば、納得がいく。
そんなことどうでもいいや。
公爵邸の使用人を集め、今から引っ越し作業をしてもらう。お兄様にも、身の回り品を持って、公爵邸のほうへ移動してもらう。
「マギー、公爵邸を建てるって言ってたけど、早すぎない?」
「うーん、なんとなく構想は前からあったので、特に苦労しなくても出来たのよ。」
ハイ。嘘です。
「マギーは本当に聖女様みたいだな。」
げ!なんてこと言うのよ。お兄様、わたくしは悪役令嬢なんですからねっ!の言葉を飲み込み、ニッコリと笑う。
実際、マリンストーン家のものは、婚約破棄されてからオリヴィアなんかより、マーガレットのほうが聖女様ではないか?との声がある。
だからオリヴィアを選んだバーモンドに対する怒りが大きい。今こそ、決起すべきとの機運が上がるのも致し方ないことかもしれない。
これは「聖戦」だと言い訳がつく。
マーガレットはまだ早いと思っているのは、兵が足りない。もっと人口が増えなければ、辺境領の力をつけないと、王家とは争えない。
午後から、団地と大型ショッピングモールの建設予定地を見に行くつもりである。
お兄様もヒマなので、ついてこられるみたい。その申し出に異論はない。
しかし、質問攻めだけは勘弁してほしい。考えがまとまらないからで、邪険にしているわけではない。
地下鉄を上がったところは、建設予定地の立て札があり、柵で囲っている。その塀をひょいとまたぎ、マーガレットは中へ入ると、同じようにお兄様もまたいでついてこられる。
測量はできている。東京ディズニーリゾートの2個分、約4キロ平方メートルの広さ。
ここに住宅団地部分とショッピングモール、公園と小学校から大学までの教育機関を作る気でいるというか?予定がある。ついでに大学病院も設置してやろうか、とさえ思っている。
ハコモノは鈴之助の分野だが、教育機関となると公爵家の肩書がモノをいうから、学校運営などをお兄様にやってもらうつもり、だからお兄様の移民を受け入れたのだ。
「お兄様、ここに学校をこしらえたいのです。そしてその学校の運営をお兄様に任せたいと思っておりますが、いかがでしょうか?」
「え!学校を俺に任せてくれるのか?わかった。がんばるよ。マギー、俺の居場所を考えてくれていたことに感謝する。」
ハイ、最初からそのつもりです。とは言わない。
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