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14出会い

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 今日、マーガレットは学園時代に同級生だった友達の結婚式に隣国へ来ている。

 辺境領へ来て、初めてのお出かけである。

 だいたい友達の結婚式では、出会いがない。

 男の側から見て、一番気立てがよさそうな女の子が新婦で、女の側から見ても一番いい男が新郎の場合なのである。

 特に新婦側は、誰も一番きれいな子を招待しないから。

 そう言う意味で、マーガレットは招待されたことで少し「あの娘よりわたくしブス?」と考え込む。

 それともうがった見方をすれば、バーモンドから婚約破棄されたことを知っているから、「マーガレットさまよりも、わたくしのほうが上と。」言いたいのだろうか。

 だから招待状が届いて、すぐ返事を出さなかったのだ。忙しいということを理由にしても良かったのだけど、それはそれでいらない誤解を招くかもしれない。

 なんとなく気が重いけど、隣国マルベールに到着する。一応、あまり目立つことはしたくないので、馬車を仕立てて行ったのだ。

 新婦側の友人だけど、会場となるマルコム大聖堂へ向かう。

 これがアンダルシアならわざわざ下見をする必要がないのだけど。

 大聖堂の近くまで行くと、何やら人だかりができている。

 近くにいる人に事情を聴くと、「聖女様が誕生した」というお話で、へぇここでも聖女様は貴重なものなのかと改めて、感心する。

 どんなお顔をしているものかと一目見てやろうと思って、前のほうへ行ってみると……!

 オリヴィアだった。やっぱりね。すぐその隣にバーモンドが「どや顔」していたことには笑える。

 やっぱり聖女様で間違いなかったのだ。

 そしてこの人だかりは、聖女様に祝福を貰おうとして並んでいる人たち。

 「アホらし~」

 もう大聖堂の場所もわかったことだから、さっさとその場を離れようとしたら、何やら大聖堂で騒ぎが起こっているみたい。

 バーモンドが傍にいるのだから、大丈夫でしょ?

 そのうち騒ぎを起こした人がつまみ出されたのだが、その人は老人のような姿であったため、マーガレットは駆け寄り助ける。

 「大丈夫ですか?どこか痛いところはございますか?」

 転んだように見えたから、

 「心お優しい旅の方、私にどうか1杯の水を恵んでいただけぬか?」

 なんだ水ぐらいどうってことないのに

 「立てますか?」

 マーガレットが手を差し出したので、マーガレット付きの騎士や侍女が慌てて、その老人を起こす。

 「水をこれへ。」

 そのお年寄りはしゃがんだまま、美味しそうに水をゴクゴクと飲み、立ち上がろうとしたら

 「痛たたたたぁぁ。」

 「やっぱりどこか打ってしまわれていたようですね。どこが痛いですか?見せてください。」

 「腰を強かに打ってしまいました。でも、ご親切に大丈夫です。しばらくこうじっとしていれば、治るでしょう。」

 「とんだ聖女様ね。お気の毒に、そうだわ。湿布薬と痛み止めを持っていますので(実際は持っていなかったけど、そういつも思えば前世から召喚できるので、言ってみただけ。)しばらく、お待ちを。ここでございますね?」

 ロ〇ソニンテープを患部に貼る。

 それとカ〇ナールを水と共に渡す。お年寄りには、〇キソニンより〇ロナールのほうが、効き目が穏やかになると前世聞いたことがあったから。

 「私は、ここ隣国のクランベール国より参りましたカルロスと申すものでございます。医者をしております。明日、甥っ子が結婚式をするので、来たのですが、途中で追いはぎにあってしまい、この有り様でございます。」

 医者!なんというタイムリーな!ちょうどアンダルシアで医者を探していたのだ。大学教員としての。英語の教科書だけでは、イマイチ伝わらないだろうし、どうしようかと思っていた。

 「ひょっとして?大きな商会を経営されているネバダ子爵様の御身内の方でございましたか?」

 「はい、そうです。それにしてもよくご存知で。」

 「新婦側の友人で、わたくしも明日、列席致しますので、下調べのためにここへ来ていましたところ、騒ぎを聞きつけましたわ。」

 「おお、それなら……明日、またお会い出来ますなぁ。」

 「袖振り合うも多生の縁と申しますから、ぜひ、今夜はご一緒いたしましょう。」

 「ああ、でも……無一文になってしまい、ネバダ家で用立ててもらうから……、」

 「では、ネバダ家まで送って差し上げますわ。」

 ここから、ネバダ家までの地図を描いてもらい、それを御者に渡す。

 「何から何まで、お世話をおかけして申し訳ない。……ぐぅぅぅぅぅぅぅ。」

 ん?何の音?

 カルロス様が真っ赤になって俯かれている。

 「よかったら、これ召し上がる?」フィレ〇フィッシュバーガーを渡す。チーズバーガーのほうがいいか?

 二つ手に持って差し出したら、カルロス様は、両方手に取られ、

 「わ!懐かしい。フィレオ〇ィッシュにチーズバーガーまである!ありがとう。って?ひょっとしてお嬢様は?」

 「申し遅れましたわね。わたくしアンダルシア国のマーガレット・マリンストーンと申します。新婦の学園の同級生でしたの。」

 「ええ!悪役令嬢の!……あ、いや失礼いたした。」

 「はい。アナタ様も転生者でしたか?」

 「私、前世ニッポン人の東都医科大学で医師をしておりました。今はオジサン姿ですが、前世は女医で。宿直時、緊急外電で寝ぼけて階段から踏み外して、気がついたら、こんなオジサン姿で、まだお嫁にも行っていなかったというのに、あんまりです。」

 「安藤鈴之助と言います。東京帝国大学を卒業して、熊村組で常務取締役をしておりました。娘がよく遊んでいた乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生してしまったようで。前世の死因は覚えておりません。ただ、バーモンド殿下より婚約破棄されてショックで寝込んでいる間に前世を思い出しました。」

 「うわっ!こんな偶然ってあるのかしらね?さっきのロキソニンやカロナールで気づけば良かったんだけどね。あはは。この世界にそんなものないって思ってたら、急に出てきてそれにハンバーガーごちそうさまでした。」

 「俺は乙女ゲームなど遊んだことがないから、あらすじがよくわからなくて、教えてもらってもいいですか?娘がヒロインのオリヴィアの境遇がお父さんそっくりだって言っていたことしか知らなくて。」

 「私もね。さっきまでひょっとして普通の異世界に飛ばされたと思っていたのよ。でもオリヴィアを見た途端、『アンダルシアに咲く赤い花』の中だって、気づいたのよ。追いはぎにあった話は本当で、無一文だから水ぐらい飲ませてもらおうって行ったら、追い出されて、ゲームの中のオリヴィアと性格違い過ぎるから、よくわからないわ。私が知っているあらすじは……。」

 カルロス様は、マーガレットに乙女ゲームの内容を伝授してくださったが、マーガレットが今まで経験してきた話とずいぶん異なるから困惑を隠しきれない。

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