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30新幹線
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なんだかんだすったもんだの挙句、マーガレットとスティーブンは仮祝言を行い、マーガレットはクランベールの人となったのである。
司祭様はどうされたかと言うと、アンダルシアに戻らず、ずっとマギーランドにいたいらしく、マギーランドにサン・ピエトロ寺院を建てることにする。
当初は辺境領に建てかけていたものを移築するだけなので、そう手間はかからない。
クランベールの王都の王子妃の部屋とマギーランドの執務室を異空間で結ぶ。
これで昼間はマギーランド、夜はクランベールの二重生活の出来上がり。
同時にクランベールの開発も進めていく。
最初はやはり太陽光パネルだ。動力源を確保しないとなんにもできない。
クランベールは結構大きな川がいくつも流れている国なので、水車を思いつく。うまくいけば、水力発電も夢ではないかもしれない。
水力発電の原理は簡単だ。上から水を落とすことにより水車を回すだけで、電気を発電する。
原子力発電も同じ、蒸気を発生させることにより発電機を動かす。
とりあえず婚家のことは、なるべく波風を立てないように穏やかにやることが一番。
水車ならたくさん電気を発電できない代わりに、お金が安く済む。その集落の人たちの発電だけでいいのなら、水車にしよう。ついでに太陽光も発電できれば、それで十分事足るだろう。
水車と太陽光発電ぐらいならば、クランベールの人たちも受け入れてくれるだろう。ここは辺境領と違うから、急な改革を望まない人もいるに違いない。
水車作りはスティーブンが協力してくれて、ドワーフの村まで足を運び、説得してくれたから助かったのだ。
やっぱり持つべきものは夫(パートナー)。
クランベールに電気が普及したら、新幹線を走らせる予定。とりあえず王都からマギーランドまでを運行する。
前世鈴之助の時代では、夢の超特急と言えば、新幹線。リニアなどの発想はない。
評判が良ければ、クランベールの国中に網の目を張らせ、走らせる。
マーガレットは辺境領を開発したように、クランベールを開発していく。マリンストーンの領地は、ドワーフたちに任せて大丈夫だろう。時折、休みの日に様子を見に行く程度にしている。
お嫁に行った娘がひょいひょいと実家に帰っては、いらぬ誤解を与えかねない。
だからドワーフたちを信じて、報告を待つだけにする。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
アンダルシア王は、王の間で苛立っている。
マルベール王からの依頼の手紙を握りしめている。
「国教会の司祭め、本当にマーガレットを仕留めたのか?それとも返り討ちに遭って、戻ってこないのか?マリンストーンの奴は領地に引っ込んでから音沙汰がない。クリストファーは、聖女様を探しに行くと言った切り戻ってこないし。どいつもこいつも。」
「陛下、マルベールへの返信はどのようにいたしましょうか?ご裁断を。」
「聖女様は我が国におられぬと返事いたせ。」
宰相閣下に指示を飛ばしている。
宰相閣下は、マリンストーン家と肩を並べるブルーレイド公爵家の当主。
「はっ。畏まりましてございます。つきましては、私めが今一度、辺境領へ行きマーガレット嬢の所在を確認してまいりたいと存じますが?いかがでございましょうか?」
「うむ。帥に任せる。良きに計らえ。」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ブルーレイドは、マーガレット嬢は生きているという確信がある。
もし、マーガレット嬢に何かあれば、マリンストーンが黙っているわけがないのだから。
マリンストーンとは学園時代からの同級生で、共にアンダルシア王太子(現王)の片腕になるべく教育されてきた仲だから、マリンストーンのことは、俺が一番よく知っているという自負がある。
ブルーレイは、王都を出て、まっすぐ辺境領へ向かうことにした。途中、マリンストーンの領地へ寄ろうかと思ったが、馬車で10日間は余分にかかる遠回りになるので、断念したのだ。
一刻も早くマーガレット嬢の所在を確認して、アンダルシア王に報告しなければならないという思いがある。
王都でいくらマリンストーン辺境領の情報を収集しようも、正直なところ何もわからない。
隣国クランベールとの国境に近いから、ということもあるがアンダルシアの中では一番辺鄙な場所。陸の孤島と言うよりは、陸の座敷牢的なところ。
昔は山賊や魔物が横行していたとの噂もあったほどだ。
マーガレット嬢も、いくらバーモンドから婚約破棄されたとはいえ、よくそんな領地を慰謝料代わりに与えられて、怒らなかったものだと感心する。
俺がもし女で、同じ立場に立ったら、「ふざけるな」とバーモンドの横っ面を叩いただろう。
マルベール王も、よりにもよって、マーガレット嬢をよこせとはな。いくら海の魔物が出たからと言って、山姥(やまんば)になっておられるかもしれないマーガレット嬢が聖女様であるわけがない。
王都を出発して10日間、そろそろ尻が痛くなってきて、馬車に乗るのも辛い。毎晩、集落の一番高い宿を取っているが、王都から離れれば離れるほど、宿のランクは落ちてくる。
今宵の宿は、1泊金貨5枚(日本円換算で5万円)の宿だが、雨漏りがする。ベッド周りは、かろうじて雨に濡れない場所に置いてあるものの。食事も粗末なものしか出てこない。風呂も便所も外にしかなく、用を足すたびに風邪を引いてしまいそうなところ。
でも、その宿でマリンストーン辺境領について、噂を耳にする。
「旦那さん方、辺境地へ行かれるのかえ?悪いことは言わねぇから引き返したほうがいいよ。あん土地へ行ったものは、誰も帰ってきやしない。お貴族様も、王子様も、司祭様までもだ。噂によると、殺されて、人肉を食べさせられるとか?行けば誰も食べたことがないようなものでもてなされて、その後は氷詰めにされ……。おお、くわばら、くわばら。」
宿の者は首を引っ込めて、去っていく。
ブルーレイドは護衛2人だけを連れてきたことを後悔する。
「こんなことなら……。」
相手はたかが小娘一人とタカをくくっていたようだ。
司祭様はどうされたかと言うと、アンダルシアに戻らず、ずっとマギーランドにいたいらしく、マギーランドにサン・ピエトロ寺院を建てることにする。
当初は辺境領に建てかけていたものを移築するだけなので、そう手間はかからない。
クランベールの王都の王子妃の部屋とマギーランドの執務室を異空間で結ぶ。
これで昼間はマギーランド、夜はクランベールの二重生活の出来上がり。
同時にクランベールの開発も進めていく。
最初はやはり太陽光パネルだ。動力源を確保しないとなんにもできない。
クランベールは結構大きな川がいくつも流れている国なので、水車を思いつく。うまくいけば、水力発電も夢ではないかもしれない。
水力発電の原理は簡単だ。上から水を落とすことにより水車を回すだけで、電気を発電する。
原子力発電も同じ、蒸気を発生させることにより発電機を動かす。
とりあえず婚家のことは、なるべく波風を立てないように穏やかにやることが一番。
水車ならたくさん電気を発電できない代わりに、お金が安く済む。その集落の人たちの発電だけでいいのなら、水車にしよう。ついでに太陽光も発電できれば、それで十分事足るだろう。
水車と太陽光発電ぐらいならば、クランベールの人たちも受け入れてくれるだろう。ここは辺境領と違うから、急な改革を望まない人もいるに違いない。
水車作りはスティーブンが協力してくれて、ドワーフの村まで足を運び、説得してくれたから助かったのだ。
やっぱり持つべきものは夫(パートナー)。
クランベールに電気が普及したら、新幹線を走らせる予定。とりあえず王都からマギーランドまでを運行する。
前世鈴之助の時代では、夢の超特急と言えば、新幹線。リニアなどの発想はない。
評判が良ければ、クランベールの国中に網の目を張らせ、走らせる。
マーガレットは辺境領を開発したように、クランベールを開発していく。マリンストーンの領地は、ドワーフたちに任せて大丈夫だろう。時折、休みの日に様子を見に行く程度にしている。
お嫁に行った娘がひょいひょいと実家に帰っては、いらぬ誤解を与えかねない。
だからドワーフたちを信じて、報告を待つだけにする。
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アンダルシア王は、王の間で苛立っている。
マルベール王からの依頼の手紙を握りしめている。
「国教会の司祭め、本当にマーガレットを仕留めたのか?それとも返り討ちに遭って、戻ってこないのか?マリンストーンの奴は領地に引っ込んでから音沙汰がない。クリストファーは、聖女様を探しに行くと言った切り戻ってこないし。どいつもこいつも。」
「陛下、マルベールへの返信はどのようにいたしましょうか?ご裁断を。」
「聖女様は我が国におられぬと返事いたせ。」
宰相閣下に指示を飛ばしている。
宰相閣下は、マリンストーン家と肩を並べるブルーレイド公爵家の当主。
「はっ。畏まりましてございます。つきましては、私めが今一度、辺境領へ行きマーガレット嬢の所在を確認してまいりたいと存じますが?いかがでございましょうか?」
「うむ。帥に任せる。良きに計らえ。」
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ブルーレイドは、マーガレット嬢は生きているという確信がある。
もし、マーガレット嬢に何かあれば、マリンストーンが黙っているわけがないのだから。
マリンストーンとは学園時代からの同級生で、共にアンダルシア王太子(現王)の片腕になるべく教育されてきた仲だから、マリンストーンのことは、俺が一番よく知っているという自負がある。
ブルーレイは、王都を出て、まっすぐ辺境領へ向かうことにした。途中、マリンストーンの領地へ寄ろうかと思ったが、馬車で10日間は余分にかかる遠回りになるので、断念したのだ。
一刻も早くマーガレット嬢の所在を確認して、アンダルシア王に報告しなければならないという思いがある。
王都でいくらマリンストーン辺境領の情報を収集しようも、正直なところ何もわからない。
隣国クランベールとの国境に近いから、ということもあるがアンダルシアの中では一番辺鄙な場所。陸の孤島と言うよりは、陸の座敷牢的なところ。
昔は山賊や魔物が横行していたとの噂もあったほどだ。
マーガレット嬢も、いくらバーモンドから婚約破棄されたとはいえ、よくそんな領地を慰謝料代わりに与えられて、怒らなかったものだと感心する。
俺がもし女で、同じ立場に立ったら、「ふざけるな」とバーモンドの横っ面を叩いただろう。
マルベール王も、よりにもよって、マーガレット嬢をよこせとはな。いくら海の魔物が出たからと言って、山姥(やまんば)になっておられるかもしれないマーガレット嬢が聖女様であるわけがない。
王都を出発して10日間、そろそろ尻が痛くなってきて、馬車に乗るのも辛い。毎晩、集落の一番高い宿を取っているが、王都から離れれば離れるほど、宿のランクは落ちてくる。
今宵の宿は、1泊金貨5枚(日本円換算で5万円)の宿だが、雨漏りがする。ベッド周りは、かろうじて雨に濡れない場所に置いてあるものの。食事も粗末なものしか出てこない。風呂も便所も外にしかなく、用を足すたびに風邪を引いてしまいそうなところ。
でも、その宿でマリンストーン辺境領について、噂を耳にする。
「旦那さん方、辺境地へ行かれるのかえ?悪いことは言わねぇから引き返したほうがいいよ。あん土地へ行ったものは、誰も帰ってきやしない。お貴族様も、王子様も、司祭様までもだ。噂によると、殺されて、人肉を食べさせられるとか?行けば誰も食べたことがないようなものでもてなされて、その後は氷詰めにされ……。おお、くわばら、くわばら。」
宿の者は首を引っ込めて、去っていく。
ブルーレイドは護衛2人だけを連れてきたことを後悔する。
「こんなことなら……。」
相手はたかが小娘一人とタカをくくっていたようだ。
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