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29迷子
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今のところマーガレットが聖女様であるということは教会だけしか把握していない事実。クランベール王国は別として、アンダルシア国王は知らない話であるはず。
それなのに……!
カルロス様の甥っ子のネバダ子爵が厄介な話を持ってきたのだ。
「それで?どうして、わたくしがマルベールの魔物を退治しなければならないのでございますか?サルガッソウでしたか?」
「いや、それはマーガレット様が聖女様であらせられるからでしょう。」
「は?わたくしも嫁ぐ身なれば、今はクランベール国王からのご依頼なら、あえて考えることも致しましょうが、スティーブン王子から何も要請されていないのに、他国の事情に首を挟むということはおかしなことではございませんか?それもアンダルシアとクランベールは内陸なのに、海の魔物まで、わたくしには出来かねます。」
「うん。そうなんだよな。実はマルベールの国王に頼まれちゃってさ。元いた国のことだから、だいたいお前のところのバカ王子が偽聖女に引っかかったっていうのに、こちらに話を振ってきてもらっても困るっつうの。」
「それならもうこの話はお断りでいいわね?」
「いや、それがアンダルシアの偽聖女だから、本物の聖女様がアンダルシアにいるはずだから連れてきてほしいと頼まれてさ。」
「イヤよ。そんなこと。だいたいアンダルシアは聖女認定されていないのよ。教会がしてくれただけで、アンダルシア王はわたくしが聖女なら殺せと命じたのだから。だから、この話はご法度なの。もうやめてね。」
「げ!それ本当?それでも国王陛下が務まる?ウソみたいな話だな。アンダルシアでは、国王が聖女殺しをするところだったなんて……。わかった。よし、この線で行こう。マルベール王には、そう言って、断わっておくよ。『真の聖女様は、アンダルシア国王の命により亡き者とされましたので、見つかりませんでした』ってね。」
そう。この辺境領はお兄様が引き継いでくれるはずだから、わたくしは殺されて存在しないということでいいかもしれない。
それよりもさっさとお嫁に行ってしまったほうがいいかもしれない。
そうすれば、アンダルシア王は、聖女殺しの汚名を着せたまま、いずれ成敗するときに便利だから。
この前のデートしたときに作った異空間通路を通り、スティーブンに会いに行く。
「スティーブン、ちょっと話があるのだけどいいかしら?」
「なんだ。もう俺が切れてしまったのかい?おいで。俺が抱きしめてあげる♡」
内心バカと思うも、前世鈴之助時代のことを思うとわからなくもない。
だからあれこれ触られても辛抱することにしたのだ。でも触られていくうちに……だんだんと気持ちよくなってくる。
「んん……。」
「お♡ ココいい?」
スティーブンは喜び勇んで、同じようなところを触ってくる。
んもう。鬱陶しい。
「もうやめて!今日は大事な話があったのだけど、もう帰る。」
しっかりスティーブンに抱きかかえられて身動きが取れないから、そのままマリンストーンの領地まで飛ぶ。
スティーブンは急に景色が変わり、驚くも大して慌てていない。
スティーブンはどうせ、クランベールにマーガレットが送ってくれるものとタカをくくっている。
マーガレットは領地へ戻ると、まっすぐ父の元へ行き、ネバダ子爵からの話を伝える。
「マルベールの王がそんなふざけたことを言っているのか?これは早急に対策を練らないとな。」
そこで温泉街に置いていた司祭様の存在を思い出し、
「わたくし、ちょっと司祭様にくぎを刺しに行かないと……。」
「あ、ならパパも行くよ。」
スティーブンを辺境領に残したまま、父娘は温泉街へ行く。
わざと意地悪したわけではない。それぐらい重大なことで、忘れてしまっていただけなの。
マルベール国から正式にアンダルシア国王に、聖女様の所在と貸し出し許可が出てしまってからでは遅い。
かと言って、今すぐ死ねるものでもない。
だから、司祭様に口止めをするため、温泉街に行くことにしたのだ。
「わかっておりますとも。私が女神様を売るようなことなど決して致しません。それにしてもマルベールは、図々しい。」
司祭様も一緒になって怒ってくださり、これからの対策を一緒に練ってくださることになった。
やっぱり一番いいのは、スティーブン様と早く結婚してしまうことみたい。でもステイは真面目に話を聞いてくれない。
すぐマーガレットに抱きついて、エッチなことばかりしてくる。
最初は本能的なことだと思っていても、婚約するようになってから、エスカレートしてきて収拾がつかない。
鈴之助は昭和の男だから、どうしても結婚前に関係を持つことに抵抗がある。女のカラダが欲しいのなら、いくらでもそう言うところへ行って、処理して来ればいいものを、婚約者をいくら愛していても一線だけは超えてほしくない。
いっそのこと、どこか一人旅でもしようかしら?
それとも普段から隠蔽魔法をかけていて、ひっそりとした隠遁生活を始めようかしら。
「今日はもう遅いから、このままここで泊まろう。」
お父様がそう言ったことで、領地にスティーブンを忘れていたことに今さらながら気づく。慌てて、領地へ転移魔法で飛んだもののスティーブンの姿は見当たらない。
「もう帰ったのかしら?それならいいけど……。」
念のため、クランベールの王城へ飛んで見たけど、スティーブンの姿は見てないと言われる。
どこ行っちゃったのかしら。
まさか?砂漠?と思って、探しに行ってみても、やっぱりいない。あと、異空間でつながっているのは、辺境領だけ。まさかとは思うが、行ってみてもやっぱりいない。
まさか?拉致?誘拐?
だんだんと青ざめていくマーガレット。こういう時の聖女様の魔法って何?探索魔法?それとも索敵魔法?
スティーブンは敵じゃないけど??
結局スティーブンは、レオと一緒に迷子になっていたらしい。
レオには、異空間のこと教えておらず、……だって、いきなり白い大型犬が現れたらビックリするかもって思って。
それにレオが狩ってきた血の付いたままの肉や獲物で臭くなることを恐れて、言わなかったのだ。
レオは、スティーブンを連れて、街道沿いまで行ったみたいだけど、途中で聖女様の気配が元の領地からすると思ったらしく戻ってきてくれたのだ。
「ごめんね。レオ、心配かけたね。」
レオの頭を撫でていると、横にスティーブンも「撫でて」と頭を並べることが面白くて、思わず吹いた。
それなのに……!
カルロス様の甥っ子のネバダ子爵が厄介な話を持ってきたのだ。
「それで?どうして、わたくしがマルベールの魔物を退治しなければならないのでございますか?サルガッソウでしたか?」
「いや、それはマーガレット様が聖女様であらせられるからでしょう。」
「は?わたくしも嫁ぐ身なれば、今はクランベール国王からのご依頼なら、あえて考えることも致しましょうが、スティーブン王子から何も要請されていないのに、他国の事情に首を挟むということはおかしなことではございませんか?それもアンダルシアとクランベールは内陸なのに、海の魔物まで、わたくしには出来かねます。」
「うん。そうなんだよな。実はマルベールの国王に頼まれちゃってさ。元いた国のことだから、だいたいお前のところのバカ王子が偽聖女に引っかかったっていうのに、こちらに話を振ってきてもらっても困るっつうの。」
「それならもうこの話はお断りでいいわね?」
「いや、それがアンダルシアの偽聖女だから、本物の聖女様がアンダルシアにいるはずだから連れてきてほしいと頼まれてさ。」
「イヤよ。そんなこと。だいたいアンダルシアは聖女認定されていないのよ。教会がしてくれただけで、アンダルシア王はわたくしが聖女なら殺せと命じたのだから。だから、この話はご法度なの。もうやめてね。」
「げ!それ本当?それでも国王陛下が務まる?ウソみたいな話だな。アンダルシアでは、国王が聖女殺しをするところだったなんて……。わかった。よし、この線で行こう。マルベール王には、そう言って、断わっておくよ。『真の聖女様は、アンダルシア国王の命により亡き者とされましたので、見つかりませんでした』ってね。」
そう。この辺境領はお兄様が引き継いでくれるはずだから、わたくしは殺されて存在しないということでいいかもしれない。
それよりもさっさとお嫁に行ってしまったほうがいいかもしれない。
そうすれば、アンダルシア王は、聖女殺しの汚名を着せたまま、いずれ成敗するときに便利だから。
この前のデートしたときに作った異空間通路を通り、スティーブンに会いに行く。
「スティーブン、ちょっと話があるのだけどいいかしら?」
「なんだ。もう俺が切れてしまったのかい?おいで。俺が抱きしめてあげる♡」
内心バカと思うも、前世鈴之助時代のことを思うとわからなくもない。
だからあれこれ触られても辛抱することにしたのだ。でも触られていくうちに……だんだんと気持ちよくなってくる。
「んん……。」
「お♡ ココいい?」
スティーブンは喜び勇んで、同じようなところを触ってくる。
んもう。鬱陶しい。
「もうやめて!今日は大事な話があったのだけど、もう帰る。」
しっかりスティーブンに抱きかかえられて身動きが取れないから、そのままマリンストーンの領地まで飛ぶ。
スティーブンは急に景色が変わり、驚くも大して慌てていない。
スティーブンはどうせ、クランベールにマーガレットが送ってくれるものとタカをくくっている。
マーガレットは領地へ戻ると、まっすぐ父の元へ行き、ネバダ子爵からの話を伝える。
「マルベールの王がそんなふざけたことを言っているのか?これは早急に対策を練らないとな。」
そこで温泉街に置いていた司祭様の存在を思い出し、
「わたくし、ちょっと司祭様にくぎを刺しに行かないと……。」
「あ、ならパパも行くよ。」
スティーブンを辺境領に残したまま、父娘は温泉街へ行く。
わざと意地悪したわけではない。それぐらい重大なことで、忘れてしまっていただけなの。
マルベール国から正式にアンダルシア国王に、聖女様の所在と貸し出し許可が出てしまってからでは遅い。
かと言って、今すぐ死ねるものでもない。
だから、司祭様に口止めをするため、温泉街に行くことにしたのだ。
「わかっておりますとも。私が女神様を売るようなことなど決して致しません。それにしてもマルベールは、図々しい。」
司祭様も一緒になって怒ってくださり、これからの対策を一緒に練ってくださることになった。
やっぱり一番いいのは、スティーブン様と早く結婚してしまうことみたい。でもステイは真面目に話を聞いてくれない。
すぐマーガレットに抱きついて、エッチなことばかりしてくる。
最初は本能的なことだと思っていても、婚約するようになってから、エスカレートしてきて収拾がつかない。
鈴之助は昭和の男だから、どうしても結婚前に関係を持つことに抵抗がある。女のカラダが欲しいのなら、いくらでもそう言うところへ行って、処理して来ればいいものを、婚約者をいくら愛していても一線だけは超えてほしくない。
いっそのこと、どこか一人旅でもしようかしら?
それとも普段から隠蔽魔法をかけていて、ひっそりとした隠遁生活を始めようかしら。
「今日はもう遅いから、このままここで泊まろう。」
お父様がそう言ったことで、領地にスティーブンを忘れていたことに今さらながら気づく。慌てて、領地へ転移魔法で飛んだもののスティーブンの姿は見当たらない。
「もう帰ったのかしら?それならいいけど……。」
念のため、クランベールの王城へ飛んで見たけど、スティーブンの姿は見てないと言われる。
どこ行っちゃったのかしら。
まさか?砂漠?と思って、探しに行ってみても、やっぱりいない。あと、異空間でつながっているのは、辺境領だけ。まさかとは思うが、行ってみてもやっぱりいない。
まさか?拉致?誘拐?
だんだんと青ざめていくマーガレット。こういう時の聖女様の魔法って何?探索魔法?それとも索敵魔法?
スティーブンは敵じゃないけど??
結局スティーブンは、レオと一緒に迷子になっていたらしい。
レオには、異空間のこと教えておらず、……だって、いきなり白い大型犬が現れたらビックリするかもって思って。
それにレオが狩ってきた血の付いたままの肉や獲物で臭くなることを恐れて、言わなかったのだ。
レオは、スティーブンを連れて、街道沿いまで行ったみたいだけど、途中で聖女様の気配が元の領地からすると思ったらしく戻ってきてくれたのだ。
「ごめんね。レオ、心配かけたね。」
レオの頭を撫でていると、横にスティーブンも「撫でて」と頭を並べることが面白くて、思わず吹いた。
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