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41マギーランド

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 翌朝、マギーランドの宰相閣下が部屋を訪ねてこられる。

 「これは、これは。お久しぶりにございます。それにしても変わり身が早いものでございますね。アンダルシア王の一番の側近のアナタが、もうマギーランドの側近になられるとは。」

 「何を言っておられますか?私は、もう1年以上前にマギーランドに政治亡命をし、女王陛下がそれをお認めになられたのでございますよ。スバルス様のように、最後までアンダルシア王のお傍近くに仕えていたわけではございません。それにあくまでも噂の範疇を出ませんが、アンダルシアの巻き返しを考えていらっしゃるのに、マギーランドの情報を得るため、女王陛下との面会を欲しておられるとか?」

 「何をおっしゃいます。1年以上前に政治亡命など、たわけたことを。それではまるで、以前からマギーランドが存在していたかのような物言いではありませんか?アンダルシア王が倒れたのは、10日ほど前の出来事でございますよ。辺境領だった土地がマギーランドとは、片腹痛いわ。」

 「辺境領だったところは、アンダルシア国でしたが、マギーランドはその近くに、クランベール王から拝領の土地をマギーランドと言う名前で、女王陛下が統治されていたのです。何もご存じなく、陛下を侮辱されたとして、この件については、陛下にご報告させていただきます。」

 「いや、相すまぬ。勘違いをしておったようじゃ。何卒、この件はご内聞に。どうかどうか頼む。ブルーレイド閣下。ご容赦してくだされ。」

 「それはできない相談でござる。でもまぁ、女王陛下は公明正大な方でございますから、噂が事実無根であれば、きちんと評価してくださいますよ。」

 スバルス前侯爵は、青ざめ冷や汗をタラタラ流している。そして、10日前、姉を実家に招き入れたことを後悔した。言い逃れができない。バーモンド亡き後、姉を擁立して旗頭にする計画がとん挫するどころか、謀反人として爵位をはく奪され、処刑されることになるかもしれない。

 ブルーレイドはすべてを知ったうえで、動いている。わざと煽ったのだ。

 これでアンダルシア前王妃を亡き者にして、忠誠を誓うか、女王陛下を暗殺するか、動向が注目される。

 「女王陛下は、今何処へいられるのか?」

 なんとか、言葉を絞り出し、尋ねる。

 「マギーランドの王城におられる。」

 「え?でも昨日、スカイマリーン殿がまだ王城は建っていないと言われていたが……?あ!元々のマギーランドには、王城があったが、え……と、王都にはまだないということか?」

 「さよう。」

 「この王都を少し、見学させてもらってもいいか?」

 「ご自由に。地下鉄は、マーガレット様が統治されていた時から、無料で利用できる。今後、アンダルシアの他の領地を統治される頃には、どうなるかは、わからないがな。フロントに言えば、地下鉄路線図をくれる。」

 「まずは、服を買いたい。着の身着のままででてきたものだからな。」

 「それなら、大型ショッピングセンターがよかろう。この駅から、2番線に乗れば、乗り換えなしで終点がショッピングセンターだ。」

 「ありがとうございます。何から何まで、感謝いたします。」

 スバルスは、身支度を整え、エレベーターでフロント階まで降り、鍵を預けがてら、地下鉄路線図をもらう。

 その路線図には、駅の説明と近くの見所、観光案内も兼ねていた。

 

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 その頃、マーガレットはマギーランドの執務室に座っていられないほど、アンダルシアからの貴族の訪問に追われている。

 「マーガレット女王様、ご機嫌麗しく。当方は、アンダルシアで伯爵の地位におりましたフェルビナクと申すものです。ウチの娘と学園で、同級生でいらっしゃいました。たしか娘の結婚式にもご列席いただけたようですが……?」

 ん?伯爵家の娘の結婚式と言えば……、あのマルベールでマーガレットに嫌味を言ってきた女の父親ね。

 お相手のネバダ子爵との仲も悪くなり、すぐ離縁されたと聞いた。

 「それで?フェルビナクのお嬢さんの結婚式には、確かに伺いましたが、お嬢さんから大変失礼な物言いがあり、立腹して帰ったことを覚えております。お嬢さんから何もお聞きになっておりませんでしたか?たまたま、お相手のネバダ様のご親族をわたくしが助けまして、それでマギーランドのお手伝いをネバダ様にはしていただいております。」

 その言葉を聞き、フェルビナク前伯爵は青ざめている。

 「お話が終わったのなら、どうかお引き取りを。沙汰は追って、連絡いたします。次の方どうぞ。」

 「あ、いや、私はマギーランドのために身を粉にして働く所存でございますれば、何卒、娘のご無礼をお許しくださいませ。本日、ここへ来れたのも、ネバダ様の引き合いでして、ネバダ家との関係は良好でございます。」

 「わかりましたわ。そう言うことも踏まえて、追って連絡いたします。」

 「今、お約束を頂きたいのです。どうか……。」

 「仕方ありませんわね。それでは、人となりを見る確かな方法を、実はわたくし心得ておりまして……。その方法でもよろしいかしら?」

 「はい。女王様の仰せのままに。」

 何をさせられるか、ドキドキしながら。女王陛下の後に続く。

 そこは、それなりに広いリングのようなところで、板の間であった。そこで防具と竹を束ねたようなものを渡され、

 「どこからでもかかってきなさい。」

 言われても、女王陛下には、隙が見当たらない。

 踏みとどまって、思い悩んでいると容赦がなく打ち込まれる。竹の束を落としそうになり、必死に握りしめる。

 「わかりました。お嬢さんは意地悪な女だけど、お父様のほうは、誠実な人物だということがわかりました。よって、領地、爵位は今までと変わらず、これよりマギーランドのために励んでください。ブルーレイド!手当を。」

 「はっ!ありがたき幸せに存じ上げ奉ります。」

 ブルーレイドは、簡単に手当てを施し、その後温泉へ浸かることを提案する。

 それからは、腕に自信のあるものは皆、剣道の試合を申し出てきたのだ。強いからと言って、採用されるとは限らない、卑怯な手を使う奴はすぐわかる。

 剣道には、その竹刀を持つ者の人間性が表れる。

 だから竹刀を持たせれば、一目瞭然にわかるのである。
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