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悪役令嬢として転生

3.苦渋の決断

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 そのころ、卒業記念祝賀パーティの会場は騒然としていたのだ。

 なぜなら、遅れて会場についた国王陛下が断罪劇の一部始終を聴き、エドモンドを大声で叱責していたから。

 「お前はいつからそんな偉くなったのだ?あの美形を市井で暮らさせるということの意味を知っているのか?それに、付け込まれ、各国の来賓がこぞって、ジャクリーン嬢に結婚の申し込みをしたと聞く。我が国の損失である。あの美形一家を外国に取られたとあっては、わが国に取り、重大な損失だということがわからぬのか?よりにもよって、そんなブスのどこがいい?」

 「お言葉でございますが、父上、ジャクリーンは、我が愛しのリリアーヌに対して、ひどいいじめを繰り返してきたのでございます。それについて制裁してどこがいけなかったのでございますか?」

 「バカ者!そんなどこの馬の骨とも知れぬような女子を……、おい!今すぐドイル男爵を呼べ!わしがせっかく苦労して、アナザーライトとの縁談をまとめたというのに、どこの馬の骨ともわからないようなドブスと、あの見目麗しい令嬢と……お前というやつは、真贋もわからないのか!もういい!お前は廃嫡する。あの美形が嫁に来てくれるのならと、お前を王太子にしたことが間違いだった。」

 「ええ……!そんな……。リリアーヌは、確かにジャクリーンに比べると華やかさはございませんが、存外、可愛らしいし、優しい娘なのです。」

 「そんなことはどうでもいい。それでは、そのドブスに妃教育が務まるとでも言いたいのか?ジャクリーン嬢が行ってきた妃教育が修了できたなら、その時点でお前をもう一度王太子とする。それまでは結婚など許さぬ。今すぐ結婚したいというのであれば、そのドブスを連れて、白から出て行け。そして、市井で暮らすがよい。ただし、お前とは父子の円を切らせてもらう。」

 「へ?父上。……勘当ということでございますか?」

 「当たり前だろ?お前なんぞいなくなっても、我が国の損失など、たかが知れている。だが、あのアナザーライト一家を追い出したことへの責めは受けねばならないだろ?」

 「それほどまでに、美形というのは貴いのでございますか?」

 「何を今更言っておるのだ。お前はそのドブスとさっさと市井で暮らすがよい。それとも、ドブスが妃教育を6年間一日も休まず、全うできて修了できたのなら、その時に考えてやるよ。では、今日から始めてやるとするか?まずは外国語からの修練だな。」

 国王陛下は近衛兵に目配せして、エドモンドからリリアーヌを引き離し、別室に連れていく。

 リリアーヌは、啖呵を切りながら悪態をついている。

 「ほらな、あれがあの娘の本性だ。まだ気づかないか?」

 「……。」

 「お前はさっさと、荷物をまとめて城から出て行け。ジャクリーン嬢と第2王子を婚約させ、第2王子を立太子させるから、そのつもりでいろ。これ以上、アナザーライトと話をややこしくすると、あのドブスと共に処刑するからな。」

 「そんな……、やっと心から、愛する女性ができたというのに……。」

 「あのドブスは、エドモンドのことなど、愛してはおらぬよ。ジャクリーンの方がよっぽど情がある。」

 国王陛下はさらに、攻略対象全員に対して、エドモンドと同じ処分を言い渡したのだ。連座制として、エドモンドの暴走を止められなかった咎があるとして、日ごろからジャクリーン嬢に無礼を働いていた節もあることを加算される。

 それぞれの公爵家と騎士団長に申し渡し、それぞれの攻略対象者との縁組はすべて破談とされる。

 どうしても、好きで次男や三男と共に市井で暮らしたいと申し出た令嬢については、お咎めはないものの貴族籍がなくなってもよいのならという条件付きで認めることにしたのだが、だれ一人、市井についていく者がなかったという。

 こうして、攻略対象者の全員は、それぞれの家から勘当され、市井に身を落とすことになったのだが、今まで貴族令息として、何不自由ない暮らしをしてきた者にとり、市井の暮らしは想像以上に耐えられない生活でもあり、早々に根を上げ王家とアナザーライト家に頭を下げざるを得なくなった。

 アナザーライト家の爵位はく奪は事実上棚上げになったのだが、ジャクリーンだけは、エドモンドへの反発心からか、時折(頻繁に?)、市井へ出て、嬉々として、新しく事業を始めると言ってきかなかったそうだ。

 このことも、エドモンドのせいで傷心になったジャクリーン嬢が哀れにも市井で頑張っていると話に尾ひれがつき、ますますエドモンドは窮地に立たされていく。

 そして、一緒に廃嫡され、勘当された高位貴族令息たちもジャクリーン嬢が市井に出て頑張っているのに、と言われ、いつまで経っても勘当が解けずにいる。それでも男か。根性なし。と誹謗中傷されていることに困り果てている。

 もとは、エドモンドの考えが浅はかで、「リリアーヌをイジメるなど100年早いわ。」と思ったエドワードの考えが100年早かったというだけのこと。

 リリアーヌは、というと、毎日、王城で扱かれクタクタになり、ここから逃げ出す隙を狙っている。少しでも外国語の発音を間違えると、容赦がない鞭が飛んでくる。

 マナーもしかり、建国の歴史に世界情勢、ダンスの訓練と毎日、毎日、筋肉痛で悩んでいるのに、市井の家に帰れば、何もしない男が5人。その5人の飯の支度から洗濯までさせられ、「いい加減にして。」とキレそうになるのをグっとこらえている。

 リリアーヌの都合でゲームオーバーになれば、それはすなわち「死」を意味することになるから。
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