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10.ファーストキス
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弟の健一郎がゼミの旅行で1泊旅行するということが、早くも決まり、小夜香は内心、とんだ安請け合いをしてしまったことに、面食らっている。
でも、優しい新藤部長のことだから、イヤだと言えば、引き下がってくれるかもしれないという期待がある。
健一郎はゼミの旅行は、土曜日から出発するが、前夜からゼミの友人同士で、酒を飲み、友人の家で1泊してから、旅行に出かけるというので、金曜日から実質2泊の外泊となる。
新藤部長のマンションは、最初小夜香だけがルームシェアをしていた時と違い、今は、健一郎の部屋も独立した形で、それぞれ、部屋をもらっている。
いくら姉弟とはいえ、年頃の男女が同一の部屋というのは、何かと気まずかろうという配慮で、部長が物置として使っていた部屋を掃除して、健一郎のために使わせてくれることになったのだ。
それもこれも、あのカフェで、二人を先に帰してくれ、注文品を一人で残らず平らげてくれた健一郎への感謝のしるしとして。
おかげで、小夜香はとんだ約束をする羽目になってしまったのだが、それはまた別の話。
健一郎は、独立した部屋をもらえたことで、勉学に集中できるようになり、教授の覚えもめでたくなり、今回のゼミ旅行という話も一気に決まっていく。
とはいえ、金曜日の夜は、いつも二人で遅くまでリビングで飲み明かしているみたいだけど、ヨウスケも健一郎も、今までそういう経験が乏しかったので、楽しいのだろうと察する。
もう弟が外泊する前から、ヨウスケは一人で盛り上がっている。
弟が目の前のコンビニに買い物に行っただけで、
「高村、今からキスの練習をするぞ。」
「へ?外泊の時でいいのでは?」
問答無用とばかりに小夜香を抱きしめる腕の力が強くなり、いきなりファーストキスを奪われること数度。
もう、これはファーストキスではないと、頭ではわかっているはずなのに、カラダがカチンコチンに硬直し、自分のカラダではないように感じてしまう。
「もっと自然に受け止めろ。」
そんなこと、無理に決まっている。今までカレシはいないし、キスもハグも無縁だったのだから仕方がないでしょ!?
いったい何度、カミングアウトさせたら、気が済むのよ。だんだん腹が立ってきて、ヨウスケに八つ当たりするようになる。それも弟がいない時を狙って。
それをいつも、ヨウスケは簡単に諭してしまう。
経験値が違う。と言ってしまえば、それだけのことなのだ。
新藤部長とキスのレッスンを始めて3日目、ようやくキスの前がわかるようになり、口の開け方も上手にこなせるようになってきた。
だって、部長ったら、小夜香がうまく応えられないと、「お仕置きだ」といって、 社内でも、キスしようとするから、社内はダメでしょ?至る所に防犯カメラが仕掛けてあるのに、そんなところでチューなんかできない!もっぱら家の中で、たまたま健一郎がトイレに入った隙などを狙って、されてくる。それと、出かけの車の中、先に健一郎の大学に寄り下ろしてから、そのあと、レッスンが始まる。
そうこうして、3日目、ようやく部長から「うまくなった」のお褒めの言葉を頂くことになった。
これではまるで、どちらがレッスンを受けているのかわからない。というか、これからセックスの練習台になると約束してしまったけど、実際にするの?キスでこれなら、とても練習台には、なれそうにない。
それなのに、今度はさらに困難な課題を言い渡され、もう冷や汗タラタラで、いつもうまくできない。
「これからは、社外では俺のことを部長ではなくヨウスケと呼んでくれ。俺も高村のことを小夜香と呼ぶからな。」
そういえば、健一郎がヨウスケを「義兄さん」と呼ぶようになってからは、いつの間にか、高村から「小夜香」呼びに変わっていて、思わずドキリとしたことがあったことを思い出す。
でも、慣れというものは恐ろしいもので、一度、ドキリとしてからは、もう幾度となく「小夜香」呼びされていても、心臓がうるさく鼓動しなくなっていたので、気にもしていなかった。
呼ばれることには慣れたものの、呼ぶ方はかなり抵抗がある。本当に「ヨウスケ」なんて、呼び捨てにして、怒らないかしら?
だって、名前呼びするなど、恋人同士みたいではないの?ん?待てよ?キスもハグも、これからレッスンするセックスも、全部、恋人が行うものではないか!どうして今までこんなことも思い至らなかったのか!どうしよう……。
部長は、この意味わかっていらっしゃるのかしら?
キスのおかげで?年上男性恐怖症は緩和されたけど、まだまだ年上に限らず男性そのものがコワイと感じているのに、セックスの練習台なんて、とても無理。
あの時は、ただの練習だと勘違いしていたわけで、これは民法によるところの錯誤無効になるのではないか?いや、その前に公序良俗違反の可能性もあるかもしれない。
ぐるぐると考えていたら、もう夕飯の買い物をする時間になっていたので、慌てて机の上の片づけをしていく。
でも、優しい新藤部長のことだから、イヤだと言えば、引き下がってくれるかもしれないという期待がある。
健一郎はゼミの旅行は、土曜日から出発するが、前夜からゼミの友人同士で、酒を飲み、友人の家で1泊してから、旅行に出かけるというので、金曜日から実質2泊の外泊となる。
新藤部長のマンションは、最初小夜香だけがルームシェアをしていた時と違い、今は、健一郎の部屋も独立した形で、それぞれ、部屋をもらっている。
いくら姉弟とはいえ、年頃の男女が同一の部屋というのは、何かと気まずかろうという配慮で、部長が物置として使っていた部屋を掃除して、健一郎のために使わせてくれることになったのだ。
それもこれも、あのカフェで、二人を先に帰してくれ、注文品を一人で残らず平らげてくれた健一郎への感謝のしるしとして。
おかげで、小夜香はとんだ約束をする羽目になってしまったのだが、それはまた別の話。
健一郎は、独立した部屋をもらえたことで、勉学に集中できるようになり、教授の覚えもめでたくなり、今回のゼミ旅行という話も一気に決まっていく。
とはいえ、金曜日の夜は、いつも二人で遅くまでリビングで飲み明かしているみたいだけど、ヨウスケも健一郎も、今までそういう経験が乏しかったので、楽しいのだろうと察する。
もう弟が外泊する前から、ヨウスケは一人で盛り上がっている。
弟が目の前のコンビニに買い物に行っただけで、
「高村、今からキスの練習をするぞ。」
「へ?外泊の時でいいのでは?」
問答無用とばかりに小夜香を抱きしめる腕の力が強くなり、いきなりファーストキスを奪われること数度。
もう、これはファーストキスではないと、頭ではわかっているはずなのに、カラダがカチンコチンに硬直し、自分のカラダではないように感じてしまう。
「もっと自然に受け止めろ。」
そんなこと、無理に決まっている。今までカレシはいないし、キスもハグも無縁だったのだから仕方がないでしょ!?
いったい何度、カミングアウトさせたら、気が済むのよ。だんだん腹が立ってきて、ヨウスケに八つ当たりするようになる。それも弟がいない時を狙って。
それをいつも、ヨウスケは簡単に諭してしまう。
経験値が違う。と言ってしまえば、それだけのことなのだ。
新藤部長とキスのレッスンを始めて3日目、ようやくキスの前がわかるようになり、口の開け方も上手にこなせるようになってきた。
だって、部長ったら、小夜香がうまく応えられないと、「お仕置きだ」といって、 社内でも、キスしようとするから、社内はダメでしょ?至る所に防犯カメラが仕掛けてあるのに、そんなところでチューなんかできない!もっぱら家の中で、たまたま健一郎がトイレに入った隙などを狙って、されてくる。それと、出かけの車の中、先に健一郎の大学に寄り下ろしてから、そのあと、レッスンが始まる。
そうこうして、3日目、ようやく部長から「うまくなった」のお褒めの言葉を頂くことになった。
これではまるで、どちらがレッスンを受けているのかわからない。というか、これからセックスの練習台になると約束してしまったけど、実際にするの?キスでこれなら、とても練習台には、なれそうにない。
それなのに、今度はさらに困難な課題を言い渡され、もう冷や汗タラタラで、いつもうまくできない。
「これからは、社外では俺のことを部長ではなくヨウスケと呼んでくれ。俺も高村のことを小夜香と呼ぶからな。」
そういえば、健一郎がヨウスケを「義兄さん」と呼ぶようになってからは、いつの間にか、高村から「小夜香」呼びに変わっていて、思わずドキリとしたことがあったことを思い出す。
でも、慣れというものは恐ろしいもので、一度、ドキリとしてからは、もう幾度となく「小夜香」呼びされていても、心臓がうるさく鼓動しなくなっていたので、気にもしていなかった。
呼ばれることには慣れたものの、呼ぶ方はかなり抵抗がある。本当に「ヨウスケ」なんて、呼び捨てにして、怒らないかしら?
だって、名前呼びするなど、恋人同士みたいではないの?ん?待てよ?キスもハグも、これからレッスンするセックスも、全部、恋人が行うものではないか!どうして今までこんなことも思い至らなかったのか!どうしよう……。
部長は、この意味わかっていらっしゃるのかしら?
キスのおかげで?年上男性恐怖症は緩和されたけど、まだまだ年上に限らず男性そのものがコワイと感じているのに、セックスの練習台なんて、とても無理。
あの時は、ただの練習だと勘違いしていたわけで、これは民法によるところの錯誤無効になるのではないか?いや、その前に公序良俗違反の可能性もあるかもしれない。
ぐるぐると考えていたら、もう夕飯の買い物をする時間になっていたので、慌てて机の上の片づけをしていく。
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