ホームレスOLのシンデレラ物語~ハイスペイケメン上司と秘密のルームシェア

青の雀

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15.ラブホ

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 翌朝、待ちに待った花の金曜日。

 今夜から3日間、ヨウスケに抱かれることを心待ちにしている。だって、世の中にあんな気持ちがいいものがあるなんて、知らなかったんだもん。

 あれでは、アノ淫乱女がハマるのも無理はない。ただアノ女は、自分の立場や分をわきまえなかったことが不幸の始まりなのだ。

 健一郎は、もう今日からお泊りの用意をして、出かける。今日は旅行前夜祭で友達の家に泊まると言っていたけど、「あまり遅くまで飲みすぎてはダメよ。」と釘を刺す。

 「わかっているよ。姉さんも信じろよ。」

 車を降りながら、健一郎が言うと、ヨウスケは「?」という顔をしている。

 小夜香は、それだけで真っ赤になり俯いてしまう。

 「どうした?」

 「今夜が楽しみだなって、思って。」

 「えっ!? 嬉しいなぁ。小夜香からそんな言葉が聞けるなんて、もう今日、仕事サボろうかなぁ。」

 「ダメよ。」

 「あっは、冗談だよ。好きだよ。小夜香。チュっ。」

 「私もヨウスケが好きです。」

 「えっ!? 本当にっ!? もう今日は仕事をサボる。いや、早めに切り上げて、心行くまで味わわせてもらう。」

 小夜香が睨んでいると、だんだんトーンが下がっていく。

 会社の更衣室に入り、着替えを済ませて営業部に行くと、小夜香の席が亡くなっている。急に不安が立ち込めて、オロオロと小夜香の机を探す。

 すると、部長の呼ぶ声が聞こえ、行ってみると、部長の部屋の片隅に小夜香の机が移動している。

 でも、小夜香の力では、元に戻すことなどできない。

 「来週からと言っておいたのだが、総務が聞き間違えたみたいで、今日からよろしく頼むよ。」

 ヨウスケはぱちりとウインクをして見せるが、小夜香は内心、汗タラタラもので、笑える状態ではない。

 「秘書の仕事は、今日のところは、俺のスケジュール管理と来客時のお茶出し、慣れてきたら営業補佐の仕事、計数管理もしてもらうつもりだ。」

 コクコクと頷きながら、必死にメモをとる。

 その日は、部長への電話の取次ぎから、注文依頼まで、多岐にわたっての業務にヘトヘトで、終了間際では、肩がパンパンに張って、痛いのなんのって、それなのに、これからまた痛いことをしなければならないかと思うと、ぞっとするような?でも、信じることにしたから、我慢する。

 定時を告げるベルが鳴ると、さっと立ち上がり、更衣室に向かうのだが、なぜか、部長も帰り支度をしている。

 「部長も、帰られるのですか?」

 「うん。今日は大事な用があるからな。」

 ニッコリ微笑まれるとコワイ。なぜならもう部長は捕食者の顔をして、小夜香を見つめている。

 「駐車場で待っている。」

 一昨日、あれだけ聞きたかった愛の言葉を今朝、小夜香が言ってくれたことに満足している。やっぱり、小夜香は俺のことが好きで抱かれたのだ。女は好きな男にしか身を委ねないという持論は、間違っていなかったことに満足している。

 後は、お互いに愛を深め合って、結婚まで行くつもりでいる。

 ヨウスケにとって、小夜香は今までの女と違う。本気の女なのだ。だから俺の腕の中で、大事に育て、俺好みの女になるまで辛抱をする。

 それがようやく、俺にも幸運が舞い込んできた。今更、小夜香を手放す気などない。健一郎君が援護射撃してくれている。今こそ、決めてやる。

 1週間ほど前、健一郎君が俺の部屋に来て、真剣な表情で「姉さんを抱いてやってください。」と頭を下げに来た。そして、親父さんの愛人?継母もどきから、親父さんとしているところを見せつけられ、年上男性恐怖症になっていることを聞かされる。

 更衣室で着替え終わった、小夜香が地下駐車場をキョロキョロしている。毎朝、乗せてもらっている車だから、今日はどのあたりに駐めたんだっけ?

 プー!プー!

 クラクションが鳴らされ、ようやく車に乗り込むことができた。

 陽介は、車に乗り込んだ小夜香を抱きしめ、キスをしまくる。

 「ちょっと、やめてよ。まだ会社の中なのに、誰かに見られたらどうするんですか?」

 「大丈夫だ。黒いフィルムを張っている。」

 「そういう問題じゃ、ありませんよ。」

 「では、会社外なら良いってことか?」

 「ええ、まあ。」

 「わかった。」

 ヨウスケは車を急発進させて、小夜香は慌てて、シートベルトをする。

 ヨウスケが向かった先は、ラブホの駐車場。

 「ここで、お前をオンナにしてやる!」

 「え?もともと女ですけど?」

 「ブハっ。俺の女にという意味だ。」

 ラブホなんて、今まで行ったことがなかったけど、ほとんどシティホテルと変わらない仕様だということが分かった。

 もっと、淫靡なところかと思えば、そうではない。明るくて、清潔感溢れる部屋を見て、安心する。

 部屋に入るなり、ヨウスケはバスタブにお湯を張っているみたいで、そういうところがマメだと思うわ。

 「まずは、ひとっ風呂、浴びようか、今日はだいぶ疲れたような顔をしている。」

 「そうなのよ、肩がパンパンで。」

 「だろ?風呂であったまれば、血行がよくなり楽になれるって。」

 「ありがとうヨウスケ。優しいのね。」

 「おう。」
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