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お前は私の番
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「顔を上げよ」
大国に負けた我が国、この城の謁見の間に響いた王者の声。
目をできるだけ合わせないように入って来た私は、跪いたまま顔を玉座にいるだろう男―――ヴィルヘルム王へ向けた。
そこには『魔王』と称される黒尽くめのヴィルヘルム王が、長い脚を組み私を見下ろしていた。
この世界には、アルファ、ベータ、オメガという三種類の性がある。
一番の人口を占めているベータ。
平均的な容姿と能力を有しており、男女の繋がりで子を生す。
この国の王族は、すべてベータだ。
そして、目の前のヴィルヘルム王は容姿と能力に秀でたアルファ。
大国である所以は、アルファの王族が統べているからなのだろう。
最後に、身体の作りが小さく、年頃になると三カ月に一度発情期を迎えるオメガは――――。
「お前が、イオリスか」
低く響く声が甘く聞こえるのは、私の性質の為か……。
「はい。左様でございます。この度は、国民に温情を―――」
「お前は、オメガだな」
私の言葉を遮り、ヴィルヘルム王が見定めるように赤い瞳を細めている。
ただ純粋に、怖い。
畏怖というものなのか、震えそうになる身体にぐっと力を込め返事をする。
「――――はい」
後に居る弟達は、大丈夫だろうか?
怖がっていないと良いのだが。
「お前を特別領主としてこの国を治めさせようとした。が、お前は人望があり過ぎる」
やはりそう来たか。
覚悟していたが、自身の命はもう少しで――――。
「お前は、人質として我が国へ来てもらう。 …………だが、お前が覚悟していたようなことはしない」
「え?」
私が覚悟していたようなことはしない? 何だそれは。
訳がわからずに、ヴィルヘルム王を見詰めながらも眉間を寄せてしまう。
私は、咎められるような表情をしている自覚がある。
だが、ヴィルヘルム王は鋭かった瞳を優しくさせ微笑んだ。
「お前に会ってから、すぐにわかった」
そう言いながらヴィルヘルム王は玉座から立ち上がり、階段状の台から降りてくる。
「陛下」などと護衛が慌てたように付いてくる様を見るに、ヴィルヘルム王の独断なのだろう。
『すぐにわかった』とは、どういう意味なのだろうか。
そんな疑問を思いつつも、ヴィルヘルム王が近づくにつれ鼓動が早くなっていく。
一歩一歩、近づいてくる。
ヴィルヘルム王の瞳に、私はそこに縫いとめらているように動けなかった。
遂に、私の目の前まで来たヴィルヘルム王は、何を思ったのかその場にしゃがんだ。
私側とヴィルヘルム王側のここに居る者達すべてが、私達だけを置いてざわついている。
炎のような赤い瞳に見詰められ、はあっと熱い息を吐いてしまい気づいた。
―――――私は、欲情している。
とろけたようなだらしない自身の顔が、ヴィルヘルム王の瞳に映っているだけで、呼吸が荒くなってしまう。
食後、コニーに勧められた抑制薬を飲んでおけば良かったと今更ながらに、後悔した。
ヴィルヘルム王の両手で顔を押さえられて、自身が小刻みに震えているのが解った。
「ゃ……」
近づいたヴィルヘルム王の吐息が、私の唇に触れるだけで面白いように身体が跳ねる。
私の奥底が、じわりと濡れたような気がした。
自分の状況に、そんな筈はない。と心が否定する。
だって、私には番のであるアルファの女性が……運命の人が!
「イオリス。お前は、私の番だ」
「んっぅ……ぁッ」
耳元に届いた声に。
唇に触れた熱に。
過ぎる快感が全身を襲い、小さな悲鳴を上げて私は気を失った。
大国に負けた我が国、この城の謁見の間に響いた王者の声。
目をできるだけ合わせないように入って来た私は、跪いたまま顔を玉座にいるだろう男―――ヴィルヘルム王へ向けた。
そこには『魔王』と称される黒尽くめのヴィルヘルム王が、長い脚を組み私を見下ろしていた。
この世界には、アルファ、ベータ、オメガという三種類の性がある。
一番の人口を占めているベータ。
平均的な容姿と能力を有しており、男女の繋がりで子を生す。
この国の王族は、すべてベータだ。
そして、目の前のヴィルヘルム王は容姿と能力に秀でたアルファ。
大国である所以は、アルファの王族が統べているからなのだろう。
最後に、身体の作りが小さく、年頃になると三カ月に一度発情期を迎えるオメガは――――。
「お前が、イオリスか」
低く響く声が甘く聞こえるのは、私の性質の為か……。
「はい。左様でございます。この度は、国民に温情を―――」
「お前は、オメガだな」
私の言葉を遮り、ヴィルヘルム王が見定めるように赤い瞳を細めている。
ただ純粋に、怖い。
畏怖というものなのか、震えそうになる身体にぐっと力を込め返事をする。
「――――はい」
後に居る弟達は、大丈夫だろうか?
怖がっていないと良いのだが。
「お前を特別領主としてこの国を治めさせようとした。が、お前は人望があり過ぎる」
やはりそう来たか。
覚悟していたが、自身の命はもう少しで――――。
「お前は、人質として我が国へ来てもらう。 …………だが、お前が覚悟していたようなことはしない」
「え?」
私が覚悟していたようなことはしない? 何だそれは。
訳がわからずに、ヴィルヘルム王を見詰めながらも眉間を寄せてしまう。
私は、咎められるような表情をしている自覚がある。
だが、ヴィルヘルム王は鋭かった瞳を優しくさせ微笑んだ。
「お前に会ってから、すぐにわかった」
そう言いながらヴィルヘルム王は玉座から立ち上がり、階段状の台から降りてくる。
「陛下」などと護衛が慌てたように付いてくる様を見るに、ヴィルヘルム王の独断なのだろう。
『すぐにわかった』とは、どういう意味なのだろうか。
そんな疑問を思いつつも、ヴィルヘルム王が近づくにつれ鼓動が早くなっていく。
一歩一歩、近づいてくる。
ヴィルヘルム王の瞳に、私はそこに縫いとめらているように動けなかった。
遂に、私の目の前まで来たヴィルヘルム王は、何を思ったのかその場にしゃがんだ。
私側とヴィルヘルム王側のここに居る者達すべてが、私達だけを置いてざわついている。
炎のような赤い瞳に見詰められ、はあっと熱い息を吐いてしまい気づいた。
―――――私は、欲情している。
とろけたようなだらしない自身の顔が、ヴィルヘルム王の瞳に映っているだけで、呼吸が荒くなってしまう。
食後、コニーに勧められた抑制薬を飲んでおけば良かったと今更ながらに、後悔した。
ヴィルヘルム王の両手で顔を押さえられて、自身が小刻みに震えているのが解った。
「ゃ……」
近づいたヴィルヘルム王の吐息が、私の唇に触れるだけで面白いように身体が跳ねる。
私の奥底が、じわりと濡れたような気がした。
自分の状況に、そんな筈はない。と心が否定する。
だって、私には番のであるアルファの女性が……運命の人が!
「イオリス。お前は、私の番だ」
「んっぅ……ぁッ」
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