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その後の二人 神山透は「待て」のできる犬
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会社員と言えども定期的に勉強なんかをしなければいけないときもある。
本日土曜日。せっかくの休みだと言うのに、社員研修とやらで出された事前課題をせっせと解いている私である。
グループミーティングで発表する、「働き方改革として、どうしたら残業を少なくできるのか?」という奇跡でも起きなきゃそんなの無理じゃね?と思うような事柄について有効な案を5つも書き出さなければならないのだ。
そもそも金曜日に資料を手渡されて、翌週月曜日には研修だなんて、週末使って課題をやれといってるようなものではないか。何が『働き方改革』だ。全く持って腹立たしい。
仕方がないのでデートの予定もキャンセルしようと神山透に連絡をしたところ、
「僕、大人しくしてますから、郁子さんちにお邪魔しちゃだめですか?」
そう、神山透から返事があったのだった。
「その日は課題をやらないといけないので、お構いできませんよ?」と言ったのにも関わらず、
「もちろん、郁子さんは課題をして頂いて大丈夫ですよ。僕、ただ郁子さんのそばにいたいだけなんで。本当に、郁子さんのお邪魔だけはしませんから!」
神山透はキリリと忠犬宜しく力強くうなづくのだから、それじゃあ本当に本当になんのお構いもできませんからね?と言って、私のワンルームへと招待したのだった。
---
「残業を少なくするには……仕事量を減らす?じゃあどうやって?」
ブツブツつぶやく私の背後には「何にもしませんから、郁子さんに触れていてもいいですか?」と抱きついてきて、そのまますっかり専用ソファーと化した神山透。背中に伝わる体温と適度な質感が中々心地良く、上質なソファーにすっぽり体を包まれていると、なんだか作業もはかどるような気がしてくる。
よーしこのまま完成まで頑張るぞ!
意気込む私とはうらはらに神山透ときたら、当初こそ大人しくしていたものの、
「ねぇねぇ郁子さん、考えすぎは体に毒ですよ。ちょっと休んでリフレッシュしましょうよ?」
ものの10分で、もぞもぞ動いてそんな誘惑の言葉をかけてくるのだった。
「だーめ。課題が終わるまではだめですって。ちょっと待っててくださいね。」
なんせまだ1項目も考えついていなのだから。
完璧な答えがないものを考え出すって、簡単そうで難しい。どう回答するのが一番質問の意図に沿う形になるのか。
ああでもないこうでもないと考えていると、今度は首すじに唇を這わせてくる神山透。
「ねぇねぇ郁子さん。ちょっとだけ、休憩しませんか?」
再度誘惑の言葉を囁きながら、耳たぶを食んでくる。思わずぞわりと感じてしまうが、いかんいかん。まだ課題は完成していないのだ。
「んあっ、透さん、もうちょっと……ですから。もうちょっと、待っててぇ……んっ」
「ちぇーっ。わかりました。じゃあこうやって、待ってますね。早く課題終わるよう応援してますからね。」
神山透は舌でベロリと肌を舐め、チュパっと音を立てて首すじに吸い付いてくる。背後から回されていた手はいつの間にかブラの中に侵入していて、その頂をカリカリ引っ掻いている。
「あっああ、んっ!だめ!だめですってばぁ!!もうちょっと、なんですからぁんっっ」
「やだなあ郁子さん、僕は課題頑張って、って応援しているだけですよ?でもね、気持ちいいんでしたら、いっぱい感じても、いいんですよ?」
神山透の囁きは至って真面目な、優しげな声。が、そんなことを言われたって、こんなのは反則だ。課題頑張れ、なんて囁きながらそんな風に触られてしまったら、一体何を頑張っていいのかわからなくなってしまう。
体はほんの少しの感触まで快楽として拾ってグズグズに蕩けてしまうし、頭はぼうっとなってしまう。
こんなことではもう、もう……
「ダーメだって、言ってるでしょう?!」
グイッと体を押しやり勢いよく立ち上がると、神山透に怒鳴りつける私である。
「透さん、『待て』と言ったら犬でも猫でも待てますよ?!それとも透さんは、犬や猫以下なんですか?!なんで待ってって言うのに待てないんですか?!」
ギャンギャン叱ると神山透はシュンとしながら、「犬はともかく、猫は『待て』しないと思う」と指摘をしつつ、「だって、郁子さんがかまってくれないから、寂しくてつい」と、うなだれて犯行の動機を自白するのだった。
「だから今日は課題をするから、お構いできませんって言ったじゃないですか。」
「わかってはいたつもりだったんですけど、いざとなるとやっぱり構ってほしくなりました。」
……自分勝手な理由ながらも、そんななんとも可愛らしいことを言われてしまえば許してあげたくなってしまうではないか。
全くもう、とため息をつくと「もうちょっとで課題終わりますから、そしたらイチャイチャしましょう?透くんは、待てますか?」と、優しい声色で素行の悪い生徒を指導する先生の様に聞いてみる。
するとイケメンは、ガバリと頭を上げると目をキラキラさせて、
「はい!僕、神山透は待てができる犬です!待てます!!待ってます!!」
……ついに自分のことを「犬」と言ってしまうのだった。
---
「やっと書き終えたあああ!!」
課題の5項目はなんとか書き終えた。
残業を少なくさせるには、
・人員を増やして一人あたりの仕事量を減らす
・受注する仕事の量そのものを減らす
・作業のマニュアル化を図り、特定の人に仕事が集中しないようにする
・イレギュラーな仕事はしない
・自分のスキルを上げて仕事の効率化を測る
……実際そんなことできるのか?という項目もあるけど、そんなことはもう知らん。私の頭ではこれが精一杯の回答だ。書くことに意義があるし、そもそも議論の対象とする為のネタなのだから、正解なんてなくていいのだ!(と、思うことにした)
用紙を通勤バッグにしまい込むと、部屋の隅で先程の宣言通り、大人しく本棚の漫画なんかを読んでいたイケメンにガバリと抱きつきながら声を掛けてやる。
「透さん、お待たせさせちゃった分、いっぱい、イチャイチャしましょう?」
私だって、神山透とイチャイチャするのをずっと我慢していたのだから!
神山透の両頬に手を添えそっと唇を合わせてやると、彼はほうっとため息を一つつきながら、
「郁子さんに早く触りたかったけど、僕、ちゃんと今回は『待て』できましたよ?」
と、ぎゅうと私を抱きしめてくる。
そんな仕草をされれば、なんだかこちらまで胸がきゅううんとして、
「じゃ、いい子のワンコにはご褒美あげないといけませんよね?」
と、言ってやると。
それを合図にして、ようやくイチャイチャが始まる私達なのだった。
---
さてその後の結論から言えば、神山透は、ただの「待てができる犬」ではなかった。「待てができる、盛りのついた犬」だった。
物凄い速さで私を組み敷くと「今日の僕は待てのできる忠犬ですから、ご主人様が気持ちよくなるところをご奉仕してあげたいんです」などと言いながら、私を全身隈なく舐め回す。そしてその後は、郁子さん、好き、大好きと言いながら、上になったり下になったりしながら神山透は激しく私を貫いてくるものだから、こちらもそれにつられてついつい甲高い声であんあん言ってしまう。
そんな訳で、本日もあっという間に高みに連れて行かれてしまう私なのだった。
事後、狭いベッドに密着しながら横たわると、「薄々気がついてはいましたけれど、透さんは私のこととなると、急にポンコツになりますね。」と、声をかけてみる。
すると神山透は叱られて耳と尻尾がシオシオと元気を失った犬みたいにしゅんとしながら、こんな僕はお嫌いですか?と言うものだから、なんだかそれはそれで可愛らしいと思いつつ「いや、まあ、最初からそれを含めて好きなので、別にいいっちゃいいんですけどね?」そう言って頭を撫でてやるのだった。
神山透が仕事が出来てイケメンで家事も完璧なスパダリだから好きになったのではない。
完璧な男に見えているけれど、案外抜けていて、乙女思考で、なにより無邪気に私へ好意を示してくれる愛らしい神山透だからこそ、私は大好きなのだ。
そう言うとイケメン、やおら元気になりだして、「じゃ、じゃあ、お互いの愛情の再確認ってことで、もう一回いいですか?」と見えない尻尾をブンブン振り回しながら私を押し倒す。
そしてそのまま2回戦目へと突入することになる、なんだかんだでお熱い私達なのだったとさ、っていうお話。
本日土曜日。せっかくの休みだと言うのに、社員研修とやらで出された事前課題をせっせと解いている私である。
グループミーティングで発表する、「働き方改革として、どうしたら残業を少なくできるのか?」という奇跡でも起きなきゃそんなの無理じゃね?と思うような事柄について有効な案を5つも書き出さなければならないのだ。
そもそも金曜日に資料を手渡されて、翌週月曜日には研修だなんて、週末使って課題をやれといってるようなものではないか。何が『働き方改革』だ。全く持って腹立たしい。
仕方がないのでデートの予定もキャンセルしようと神山透に連絡をしたところ、
「僕、大人しくしてますから、郁子さんちにお邪魔しちゃだめですか?」
そう、神山透から返事があったのだった。
「その日は課題をやらないといけないので、お構いできませんよ?」と言ったのにも関わらず、
「もちろん、郁子さんは課題をして頂いて大丈夫ですよ。僕、ただ郁子さんのそばにいたいだけなんで。本当に、郁子さんのお邪魔だけはしませんから!」
神山透はキリリと忠犬宜しく力強くうなづくのだから、それじゃあ本当に本当になんのお構いもできませんからね?と言って、私のワンルームへと招待したのだった。
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「残業を少なくするには……仕事量を減らす?じゃあどうやって?」
ブツブツつぶやく私の背後には「何にもしませんから、郁子さんに触れていてもいいですか?」と抱きついてきて、そのまますっかり専用ソファーと化した神山透。背中に伝わる体温と適度な質感が中々心地良く、上質なソファーにすっぽり体を包まれていると、なんだか作業もはかどるような気がしてくる。
よーしこのまま完成まで頑張るぞ!
意気込む私とはうらはらに神山透ときたら、当初こそ大人しくしていたものの、
「ねぇねぇ郁子さん、考えすぎは体に毒ですよ。ちょっと休んでリフレッシュしましょうよ?」
ものの10分で、もぞもぞ動いてそんな誘惑の言葉をかけてくるのだった。
「だーめ。課題が終わるまではだめですって。ちょっと待っててくださいね。」
なんせまだ1項目も考えついていなのだから。
完璧な答えがないものを考え出すって、簡単そうで難しい。どう回答するのが一番質問の意図に沿う形になるのか。
ああでもないこうでもないと考えていると、今度は首すじに唇を這わせてくる神山透。
「ねぇねぇ郁子さん。ちょっとだけ、休憩しませんか?」
再度誘惑の言葉を囁きながら、耳たぶを食んでくる。思わずぞわりと感じてしまうが、いかんいかん。まだ課題は完成していないのだ。
「んあっ、透さん、もうちょっと……ですから。もうちょっと、待っててぇ……んっ」
「ちぇーっ。わかりました。じゃあこうやって、待ってますね。早く課題終わるよう応援してますからね。」
神山透は舌でベロリと肌を舐め、チュパっと音を立てて首すじに吸い付いてくる。背後から回されていた手はいつの間にかブラの中に侵入していて、その頂をカリカリ引っ掻いている。
「あっああ、んっ!だめ!だめですってばぁ!!もうちょっと、なんですからぁんっっ」
「やだなあ郁子さん、僕は課題頑張って、って応援しているだけですよ?でもね、気持ちいいんでしたら、いっぱい感じても、いいんですよ?」
神山透の囁きは至って真面目な、優しげな声。が、そんなことを言われたって、こんなのは反則だ。課題頑張れ、なんて囁きながらそんな風に触られてしまったら、一体何を頑張っていいのかわからなくなってしまう。
体はほんの少しの感触まで快楽として拾ってグズグズに蕩けてしまうし、頭はぼうっとなってしまう。
こんなことではもう、もう……
「ダーメだって、言ってるでしょう?!」
グイッと体を押しやり勢いよく立ち上がると、神山透に怒鳴りつける私である。
「透さん、『待て』と言ったら犬でも猫でも待てますよ?!それとも透さんは、犬や猫以下なんですか?!なんで待ってって言うのに待てないんですか?!」
ギャンギャン叱ると神山透はシュンとしながら、「犬はともかく、猫は『待て』しないと思う」と指摘をしつつ、「だって、郁子さんがかまってくれないから、寂しくてつい」と、うなだれて犯行の動機を自白するのだった。
「だから今日は課題をするから、お構いできませんって言ったじゃないですか。」
「わかってはいたつもりだったんですけど、いざとなるとやっぱり構ってほしくなりました。」
……自分勝手な理由ながらも、そんななんとも可愛らしいことを言われてしまえば許してあげたくなってしまうではないか。
全くもう、とため息をつくと「もうちょっとで課題終わりますから、そしたらイチャイチャしましょう?透くんは、待てますか?」と、優しい声色で素行の悪い生徒を指導する先生の様に聞いてみる。
するとイケメンは、ガバリと頭を上げると目をキラキラさせて、
「はい!僕、神山透は待てができる犬です!待てます!!待ってます!!」
……ついに自分のことを「犬」と言ってしまうのだった。
---
「やっと書き終えたあああ!!」
課題の5項目はなんとか書き終えた。
残業を少なくさせるには、
・人員を増やして一人あたりの仕事量を減らす
・受注する仕事の量そのものを減らす
・作業のマニュアル化を図り、特定の人に仕事が集中しないようにする
・イレギュラーな仕事はしない
・自分のスキルを上げて仕事の効率化を測る
……実際そんなことできるのか?という項目もあるけど、そんなことはもう知らん。私の頭ではこれが精一杯の回答だ。書くことに意義があるし、そもそも議論の対象とする為のネタなのだから、正解なんてなくていいのだ!(と、思うことにした)
用紙を通勤バッグにしまい込むと、部屋の隅で先程の宣言通り、大人しく本棚の漫画なんかを読んでいたイケメンにガバリと抱きつきながら声を掛けてやる。
「透さん、お待たせさせちゃった分、いっぱい、イチャイチャしましょう?」
私だって、神山透とイチャイチャするのをずっと我慢していたのだから!
神山透の両頬に手を添えそっと唇を合わせてやると、彼はほうっとため息を一つつきながら、
「郁子さんに早く触りたかったけど、僕、ちゃんと今回は『待て』できましたよ?」
と、ぎゅうと私を抱きしめてくる。
そんな仕草をされれば、なんだかこちらまで胸がきゅううんとして、
「じゃ、いい子のワンコにはご褒美あげないといけませんよね?」
と、言ってやると。
それを合図にして、ようやくイチャイチャが始まる私達なのだった。
---
さてその後の結論から言えば、神山透は、ただの「待てができる犬」ではなかった。「待てができる、盛りのついた犬」だった。
物凄い速さで私を組み敷くと「今日の僕は待てのできる忠犬ですから、ご主人様が気持ちよくなるところをご奉仕してあげたいんです」などと言いながら、私を全身隈なく舐め回す。そしてその後は、郁子さん、好き、大好きと言いながら、上になったり下になったりしながら神山透は激しく私を貫いてくるものだから、こちらもそれにつられてついつい甲高い声であんあん言ってしまう。
そんな訳で、本日もあっという間に高みに連れて行かれてしまう私なのだった。
事後、狭いベッドに密着しながら横たわると、「薄々気がついてはいましたけれど、透さんは私のこととなると、急にポンコツになりますね。」と、声をかけてみる。
すると神山透は叱られて耳と尻尾がシオシオと元気を失った犬みたいにしゅんとしながら、こんな僕はお嫌いですか?と言うものだから、なんだかそれはそれで可愛らしいと思いつつ「いや、まあ、最初からそれを含めて好きなので、別にいいっちゃいいんですけどね?」そう言って頭を撫でてやるのだった。
神山透が仕事が出来てイケメンで家事も完璧なスパダリだから好きになったのではない。
完璧な男に見えているけれど、案外抜けていて、乙女思考で、なにより無邪気に私へ好意を示してくれる愛らしい神山透だからこそ、私は大好きなのだ。
そう言うとイケメン、やおら元気になりだして、「じゃ、じゃあ、お互いの愛情の再確認ってことで、もう一回いいですか?」と見えない尻尾をブンブン振り回しながら私を押し倒す。
そしてそのまま2回戦目へと突入することになる、なんだかんだでお熱い私達なのだったとさ、っていうお話。
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