スマホが最強。

歌ノシン

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第0章 始まりは突然に。

異世界召喚とかダルイ。 に

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 「ごめんなざい!!すびばぜんでした」

 なぜか目の前で土下座をする女性がいる。しかも声が涙声で額を床に擦り付けた深い土下座だ。

 青は突然自分が置かれた状況に困惑する。

 自分の身になにが起きたのだろうか?確かパソコンが壊れ、画面から眩い光が放たれたことに驚いて倒れた。

 そこから先の記憶がない。

 「………学校があるので返してください。授業単位がヤバイので」

 何か自分の身に起こっているようだが、取り敢えず部屋へ返して貰おう。今の状況より学校が大事だ。おもに単位が。

 「ごめんなざい。無理です。不可能です」

 どうやら帰れないらしい。不可能とまで言われてしまった。

 はて、どうするかと考える。

 そもそも自分はなぜか白い空間にいる。この景色に見覚えが一切ない。つまり夢だろうかと思う。

 まぁ夢にしてはリアルなので現実だろうが。

 では自分が、この土下座した女性以外には何もない白い空間に佇む理由を考える。

 「んー。パソコンの画面から出た光が原因か?」

 原因がそれしか思い浮かばない。他にもあったか?

 「原因はわたくしでございまずっ。ひぐっっ」

 他の原因………お前が原因かよ。

 なにか原因は?と自分の記憶を探っていると土下座した女性から声が聞こえた。

 聞こえた内容が最悪だ。

 「なんで俺はここにいる?そしてあんたは、なぜ俺に謝る」

 先ほどから気になってはいたが、聞いたら面倒そうだと思い土下座して謝る理由を後回しにしていた。

 「うぐっ。スルーは酷いですぅ。ひっく、、青君が世界の狭間にいるのは、わたくしの責任でずよっっ」

 どうやら真っ白な空間は世界の狭間と言うらしい。

 へぇー。

 「最近の若い子は、うぇっぐ。ドライでずね。ひっく。わたくしがチョウシこいて自分の最大魔法を放ったら、うっぅ。その先に青君がいたのです」

 「つまり、青君を殺したのがわたくしです」

 「わたくしが全力で魔力を込め、放った魔法は次元を軽く超えてしまいました」

 「通常ならば、魔力が次元を超えた瞬間に異界の壁が瞬時に障壁を展開し、異物である魔法を弾くのですがっ」

 「運悪く、一定の間隔で現れる世界の歪みにわたくしの力が吸い込まれてしまいました」

 「吸い込まれた魔法は、、うぐっ。地球と呼ばれる世界に住まう青君にピンポイントでわたくしの凶悪魔法がぶち当たりました」

 「まごどにっっ、申し訳ございません!わたくしの責任でず!!ごめんなざいっ」

 女性の懺悔に悩む青。

 自分が彼女の責任で死んだ事実がしんじられなかった。

 彼女の説明では魔法関係で自分は死に、世界の狭間へ呼ばれたらしい。普通に考えて理解出来ない内容だ。さらには地球へ帰れないそうだ。

 「青君の肉体だけではなく、魂もあのまま地球において置けない状態だったのですうっっ」

 そんな状態にしたのか!?と青が驚く。どうやら想像よりはるかに危険な状態だったようだ。

  「………俺はどうなる?」

 考えることが多く、頭を悩ませるが、途方もない真実に悩むだけ無駄だと結論を出す。

 「青君にはわたくしの世界で転生し、自由に望むままに過ごしていただきます!」

 「え?普通に嫌だ」

 「なぜですか!?チート能力でウハウハ人生ですよ!青君が転生する家系も身元がしっかりした貴族ですよ!?楽して一生暮らせます!」

 「だから、い・や・だ。普通に地球へ返してくれ」

 さらなる青の拒絶の言葉に絶句する女性。しばらくするとフルフルと肩を震わせ、ガバッと床に擦り付けていた顔を勢いよく上げる。

 「わたくしは女神です!ですが青君を地球に返すことが不可能なダメ女神ですっっ」

 「すでに青君は地球との接続が完全に切れているのですよっ。接続が切れた状態で元の世界へ帰しても、返した瞬間に青君の存在そのものが魂ごと消滅しちゃいます!!生まれ変わることも出来なくなるのですよっっ」

 あんまりな事実に衝撃を受ける。

 どうやら今の自分が地球へ帰ってもゲームが出来ないようだ。帰る意味がない。

 「なっ!?ゲームですか!地球へ帰りたい理由がゲームですか!?こう、他にどうしても元の世界へ帰りたい理由があるから必死ではないのですかっ!」

 「いや、別にそこまで帰りたいわけじゃないぞ」

 女神はガーンとした顔で固まる。

 「必死になるとかダルイ。そんなに俺を生かすことが大変なら、生き返らせなくていいよ」

 その言葉に女神は我に返った。

 (生きることにっ、これほど無気力なんて!いったい青君は地球でどれほど酷い生活をしていたの!?私が、私が青君を幸せにするんだ!!)

 学校がない時間を睡眠時間と食事回数を減らしてゲームをプレイする生活だ。青にとっては祝福の時間であり苦痛ではない。

 しかし、この女神様は慈愛が途方もなく深いお方だっだ。その事実を青が知るのはまだ少し先だが、慈愛の女神であることに神殿内にて渋い顔で納得する姿を他の神に目撃されたていた。

 「わたくしがっ。わたくしの女神のチカラを最大限に使って青君を幸せにします!生きることは素晴らしいことなのですよ?生命は愛に溢れています!」

 「わたくしの世界は愛で溢れかえっています!ぜひ、青君もわたくしの世界で愛の育みを体感してくださいな!!」

 鼻水と涙でベショベショの顔を青へ鼻息荒く近付き、力説する女神。

 その姿に若干引き気味の青。

 「無論!青君が直ぐに扱えるチート能力を授けます!!あと転生ではなく、わたくしの使徒として再召喚しますっ!」

 「はあ?再召喚ってな「全部わたくしに任せてくださいな!!「いや、そうじゃ「青君は一切心配する必要はありませんよ!?さあ!いざ新たな世界へGO!」

 青の質問が耳に入らない女神は最後まで暴走すると、GO!と叫ぶと同時に青の身体へ濃密な魔法陣を刻み込み、女神が担当する世界へと送る。

 青の身体が淡い光に包まれて消える瞬間、女神は最後の言葉をかける。

 「チート能力は、わたくしの世界へ着いてからのお楽しみですよっ!期待してくださいね!」

 『いらねぇぇぇぇ!って真っ逆さまに落ちるのか!?嘘だろ!おい女神ぃぃぃぃ!!確実に死ぬからあ!助けて女神様!』

 召喚術式内にいる対象の声は届かない。それでも懸命に女神へ助けを求めて手を伸ばす青。

 「自由に青君が思った通りに過ごしてくださいね!」

 自分に手を振っているのだと勘違いした女神は手を振り返す。

 『ちげぇぇぇぇ!?』

 天然ボケする女神に突っ込むが、

 『????』

 理解されなかった。

 『ああああああああ………』

 世界の狭間から新たな世界へ旅立った彼を寂しそうに見つめる女神。

 「わたくしは慈愛の女神。いつでも貴方を見守り愛します。だから末長く、わたくしの世界で生きてください」

 静かに微笑み、凛と佇む姿はまさに慈愛の女神に相応しい姿だった。





*************




 「………マジか。異世界召喚とかダルイ」

 見渡す限り草が生い茂る草原に召喚された青はつぶやく。

 そして途方にくれた。

 「どうすりゃあいいんだよ………」



面倒くさがりでやる気がない無気力な彼はこの先どのように異世界を過ごすのだろうか?

 それはまだ誰も知らない。

 本人もわからなかった。





 
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