【二日に一度更新】とある学校の珍事件簿〜奇人:常人=3:1〜

華凛

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印鑑紛失(珍)事件

論理じゃないさつまいも栽培

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当然だとばかりに「さつまいもを育てている」と答えたしづき。
ちょっとよくわからなかったので、新兎は聞き返す。

「さつまいも……? さつまいもを育てて、いる?」
「そうですけど、何か」

しづきは明らかに不機嫌そうに新兎を睨む。

「えっ……と……なぜ?」
「なぜって、印鑑の代わりにさつまいもハンコを作るからです」

何を今更とでも言うかのように、しづきの機嫌はみるみる悪くなっていく。
新兎は「女子高生が中庭の日陰に屈んでシャベルを握っている」という情報量の多い視界をシャットアウトするため、目を閉じる。
だが視界をシャットアウトしたところで、それ以上に強烈な「さつまいも育てる」発言が邪魔して何も考えられない。
冷静に考えれば考えるほど不可解になっていくこの状況に、新兎は頭を抱えて崩れ落ちたくなる。

「どうしたんですか、朝比奈さん。さつまいも一緒に育てたいんですか」
「ちょっと静かにしてください」

とめどなく脳内に流れ込んでくる不可解な発言にさらに頭を悩ませる。
頭を悩ませた末、理解できる状況をとりあえず口に出して整理する。

「舞薔薇さん……」
「なんです」
「あの、日陰でさつまいもは育たないのではないでしょうか」

あまり植物の生育には詳しくないが、とりあえずここでは育たないことだけはわかる。
あくまで平静を取り繕って提言したが、頭の中は「『?』でいっぱい」を通り越して真っ白だ。

「もちろん承知の上ですが」

淡々と答えるしづきに、頭の中が真っ白を通り過ぎて透明になり始める。

「……では、なぜ育てているんですか?」

辛うじて言葉を絞り出し、この状況の理解に貢献しようとする。

「あなた、生徒会室での話を聞いていなかったのですか?」

ため息でも吐きそうな顔でこちらを小馬鹿にするように見てくる。なんかムカつく。

「いや聞いててもここでさつまいもを育てることに直結しないんですけど……」
「直結しますよ。会長がハンコを必要としてたじゃないですか」
「いやそうだけど!」

あれ、これ話通じないんじゃ……と気づき始めたとき、この場でのさつまいも生育における致命的な弱点に気づいた。

「舞薔薇さん、さつまいもって育つのに結構かかるはずじゃ……」
「四~五ヶ月と心得ています」
「じゃ、じゃあそれはすぐにさつまいもにならないような……」

目の前の相手に話が通じないとしても、さすがに既成概念は崩せないはずだ。

(論理で詰めていけば説得できるかも……)

説得への糸口が少しだけ見えてきたが、しづきは鼻を鳴らした。

「会長のためのさつまいもなので育たないはずありません」
「…………」
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