【二日に一度更新】とある学校の珍事件簿〜奇人:常人=3:1〜

華凛

文字の大きさ
5 / 43
印鑑紛失(珍)事件

独学・さつまいも生育促進方法

しおりを挟む
「会長が必要としているさつまいもなので、絶対三分十五秒で芽を出します」
「えぇ……と」

妙に詳細な数値を不気味に思いながら、新兎は言葉を詰まらせる。
新兎は知った。
信仰は論理をも超越することを。
もちろんそんな短時間で芽を出すことはないだろうが、その揺るぎない瞳に気圧される。

(こいつ……まじで言ってやがる……!?)

今すぐにでも逃げ出して教師に泣きつきメンバーチェンジを懇願したい状況だ。

(……これはそのまま放っといたほうがいいかもしれない)

女子をこれ呼ばわりした新兎は、「会長の机を隈なく探す」という無難な策に逃げるため、しづきに背を向けようとする。

「に、う、くん」

突如、背後から聞き覚えのある声が飛んでくる。
新兎は頭を抱えたくなる心地でゆっくり振り向く。

「朱雀、先輩……」
「だいせーか~い♡」

朱雀はよくできました、と新兎の鼻先に指を置く。
人との距離がまぁ近いこと近いこと。

「……先輩も舞薔薇さんを探しに?」

本日n回目の呆れ声で朱雀に問うと、彼女は笑顔を保ったまま言う。

「ん~? さつまいも、食べたくて♡」
「……?」

謎の理由に固まるが、すぐに「ん?」と疑問を覚える。
彼女はついさっきまで生徒会室にいたはずだ。
朱雀が「さつまいもハンコ」発言をしたものの、しづきがさつまいもを本当に育てに行くことなんて並大抵の人間には予想できないことだ。
現にさつまいもはまだ発芽していないし、しづきがさつまいもを育てようとしていることを示すものは何もないはずである。

(恐ろしい人だ)

彼女の頭の回転の速さに一人で震えていると、しづきが先ほどとは打って変わって敬愛と好意に溢れた声と態度で朱雀に向き直る。

「副会長! さつまいもハンコの残りをみんなで食べましょうっ」

そのみんなに自分は含まれているだろうか、などと思いながら新兎は口を開く。

「あの、朱雀先輩……職員室でとりあえず先生に相談したほうがいいんじゃ……」

しづきにはなかった常識を求めて朱雀を見ると、楽しそうな表情を崩さずに新兎の肩に手を置く。

「だいじょーぶだいじょーぶ。さつまいもの生育を早くする方法知ってるから、心配しないで?」

「独学で編み出したんだよ~」と呑気に付け足す彼女に、新兎は発狂したくなる。

(心配してるのはそっちじゃねえええぇ!)

だんだんと目眩がしてくる。
というか、さつまいもの生育を早くする方法を独学で編み出したとはどういうことだろう。
意味分からない用途に使用されるさつまいもに使うよりも、農協とかに報告するのが先ではないか。

(助けて……会長……)

生徒会庶務に就任して二週間弱なので、白虎についてはあまりよく分からないが、この二人を止められるのは彼だけな気がする。
朱雀が小麦粉と酢を土にばらまき始め、しづきがその過程を熱心にメモしている。
新兎の頭が情報過多でパンクしそうになったそのとき、中庭と校内を繋ぐドアが開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

秘められたサイズへの渇望

到冠
大衆娯楽
大きな胸であることを隠してる少女たちが、自分の真のサイズを開放して比べあうお話です。

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
ライト文芸
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

処理中です...