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印鑑紛失(珍)事件
独学・さつまいも生育促進方法
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「会長が必要としているさつまいもなので、絶対三分十五秒で芽を出します」
「えぇ……と」
妙に詳細な数値を不気味に思いながら、新兎は言葉を詰まらせる。
新兎は知った。
信仰は論理をも超越することを。
もちろんそんな短時間で芽を出すことはないだろうが、その揺るぎない瞳に気圧される。
(こいつ……まじで言ってやがる……!?)
今すぐにでも逃げ出して教師に泣きつきメンバーチェンジを懇願したい状況だ。
(……これはそのまま放っといたほうがいいかもしれない)
女子をこれ呼ばわりした新兎は、「会長の机を隈なく探す」という無難な策に逃げるため、しづきに背を向けようとする。
「に、う、くん」
突如、背後から聞き覚えのある声が飛んでくる。
新兎は頭を抱えたくなる心地でゆっくり振り向く。
「朱雀、先輩……」
「だいせーか~い♡」
朱雀はよくできました、と新兎の鼻先に指を置く。
人との距離がまぁ近いこと近いこと。
「……先輩も舞薔薇さんを探しに?」
本日n回目の呆れ声で朱雀に問うと、彼女は笑顔を保ったまま言う。
「ん~? さつまいも、食べたくて♡」
「……?」
謎の理由に固まるが、すぐに「ん?」と疑問を覚える。
彼女はついさっきまで生徒会室にいたはずだ。
朱雀が「さつまいもハンコ」発言をしたものの、しづきがさつまいもを本当に育てに行くことなんて並大抵の人間には予想できないことだ。
現にさつまいもはまだ発芽していないし、しづきがさつまいもを育てようとしていることを示すものは何もないはずである。
(恐ろしい人だ)
彼女の頭の回転の速さに一人で震えていると、しづきが先ほどとは打って変わって敬愛と好意に溢れた声と態度で朱雀に向き直る。
「副会長! さつまいもハンコの残りをみんなで食べましょうっ」
そのみんなに自分は含まれているだろうか、などと思いながら新兎は口を開く。
「あの、朱雀先輩……職員室でとりあえず先生に相談したほうがいいんじゃ……」
しづきにはなかった常識を求めて朱雀を見ると、楽しそうな表情を崩さずに新兎の肩に手を置く。
「だいじょーぶだいじょーぶ。さつまいもの生育を早くする方法知ってるから、心配しないで?」
「独学で編み出したんだよ~」と呑気に付け足す彼女に、新兎は発狂したくなる。
(心配してるのはそっちじゃねえええぇ!)
だんだんと目眩がしてくる。
というか、さつまいもの生育を早くする方法を独学で編み出したとはどういうことだろう。
意味分からない用途に使用されるさつまいもに使うよりも、農協とかに報告するのが先ではないか。
(助けて……会長……)
生徒会庶務に就任して二週間弱なので、白虎についてはあまりよく分からないが、この二人を止められるのは彼だけな気がする。
朱雀が小麦粉と酢を土にばらまき始め、しづきがその過程を熱心にメモしている。
新兎の頭が情報過多でパンクしそうになったそのとき、中庭と校内を繋ぐドアが開いた。
「えぇ……と」
妙に詳細な数値を不気味に思いながら、新兎は言葉を詰まらせる。
新兎は知った。
信仰は論理をも超越することを。
もちろんそんな短時間で芽を出すことはないだろうが、その揺るぎない瞳に気圧される。
(こいつ……まじで言ってやがる……!?)
今すぐにでも逃げ出して教師に泣きつきメンバーチェンジを懇願したい状況だ。
(……これはそのまま放っといたほうがいいかもしれない)
女子をこれ呼ばわりした新兎は、「会長の机を隈なく探す」という無難な策に逃げるため、しづきに背を向けようとする。
「に、う、くん」
突如、背後から聞き覚えのある声が飛んでくる。
新兎は頭を抱えたくなる心地でゆっくり振り向く。
「朱雀、先輩……」
「だいせーか~い♡」
朱雀はよくできました、と新兎の鼻先に指を置く。
人との距離がまぁ近いこと近いこと。
「……先輩も舞薔薇さんを探しに?」
本日n回目の呆れ声で朱雀に問うと、彼女は笑顔を保ったまま言う。
「ん~? さつまいも、食べたくて♡」
「……?」
謎の理由に固まるが、すぐに「ん?」と疑問を覚える。
彼女はついさっきまで生徒会室にいたはずだ。
朱雀が「さつまいもハンコ」発言をしたものの、しづきがさつまいもを本当に育てに行くことなんて並大抵の人間には予想できないことだ。
現にさつまいもはまだ発芽していないし、しづきがさつまいもを育てようとしていることを示すものは何もないはずである。
(恐ろしい人だ)
彼女の頭の回転の速さに一人で震えていると、しづきが先ほどとは打って変わって敬愛と好意に溢れた声と態度で朱雀に向き直る。
「副会長! さつまいもハンコの残りをみんなで食べましょうっ」
そのみんなに自分は含まれているだろうか、などと思いながら新兎は口を開く。
「あの、朱雀先輩……職員室でとりあえず先生に相談したほうがいいんじゃ……」
しづきにはなかった常識を求めて朱雀を見ると、楽しそうな表情を崩さずに新兎の肩に手を置く。
「だいじょーぶだいじょーぶ。さつまいもの生育を早くする方法知ってるから、心配しないで?」
「独学で編み出したんだよ~」と呑気に付け足す彼女に、新兎は発狂したくなる。
(心配してるのはそっちじゃねえええぇ!)
だんだんと目眩がしてくる。
というか、さつまいもの生育を早くする方法を独学で編み出したとはどういうことだろう。
意味分からない用途に使用されるさつまいもに使うよりも、農協とかに報告するのが先ではないか。
(助けて……会長……)
生徒会庶務に就任して二週間弱なので、白虎についてはあまりよく分からないが、この二人を止められるのは彼だけな気がする。
朱雀が小麦粉と酢を土にばらまき始め、しづきがその過程を熱心にメモしている。
新兎の頭が情報過多でパンクしそうになったそのとき、中庭と校内を繋ぐドアが開いた。
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