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印鑑紛失(珍)事件
小麦粉と酢とカピカピの眼球と解決の兆し
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キィ、と少し軋んだような音がして扉がゆっくり開く。
扉の先に立っていたのは──
「会長……!」
そこには、眠たそうな目で控えめに扉から半顔を覗かせている白虎がいた。
小麦粉や酢を土にまいている朱雀、その様子とメモを交互に見て熱心に何かを書き込んでいるしづき、その手前で安堵のばかり身体をわなわなと震わせている新兎。
その状況が飲み込めなかったのか、白虎は少し首を傾けている。
(やっぱりこの状況はおかしいんだ……!)
おかしいと分かっていても自分が少数派であるとつい自信を失くすものだ。
白虎という力強い仲間を得て新兎は安堵の息を漏らした。
「あの……」
白虎が扉から出てきて、何かを言いたげにこちらに近づいてくる。
くるくると回りながら酢の瓶を傾けている朱雀と、酢の瓶に視線が釘付けのしづきは、まだ彼が来たことに気づいていないようだ。
彼ならきっとその奇行を止めてくれるはずだ。
新兎は勝利を確信し、白虎に視線を送る。
「朱雀、しづき……」
彼は、徐々に回転が速くなっていく朱雀と、それを凝視しすぎて眼球が乾燥しているしづきに控えめに声をかける。
二人が「ん?」と同時に白虎を振り向くと、白虎は新兎にも視線を送ってくる。話を聞いてほしいという視線だろう。
「さつまいもは、育てなくていい……」
ああ、やはりと新兎は安堵し口を開く。
「やっぱり、職員室に行ったほうがいいですよね」
「いや……その必要はない」
え、と無意識に声が漏れる。
白虎も奇策を披露するのだろうか。
だったらいち早く止めなければ。
「いや会長、先生たちに相談したほうが──」
「なんか……あった」
朱雀としづきまでもが不思議な顔で彼を見つめている。
どんな爆弾発言が来るのかと新兎が怯えていると、白虎は申し訳なさそうにしゅんと肩を落とす。
「あの……なんか……印鑑、あった……」
「「「………………」」」
一同、沈黙。
「すまない……」と小さな声で何度か繰り返す白虎に、新兎だけではなく朱雀としづきもしばらくは沈黙していた。
「ええと……どこに……あったんですか?」
「その……書類の、隙間……」
新兎が正直な疑問をぶつけると、白虎は歯切れ悪く告げた。申し訳ないという気持ちは十二分にあるようだ。
「あらぁ……」
「まぁ……」
朱雀としづきも呆れとも困惑とも取れない複雑な声を漏らす。
なにせさつまいもを植え、小麦粉と酢をばらまき、しづきに至っては眼球がカピカピに乾燥したのだ。
「その、マジで……すまない」
……朱雀としづきだけを問題児として認識していたが、その二人を振り回す彼こそが、本当の問題児なのかもしれない。
「え~このさつまいも要らないのぉ?」
朱雀がどこか残念そうな声音で酢の瓶を地面に置く。
「頑張ってくれたのにすまない……しづきも」
さつまいもを育てようとしていたことについては一切触れず、白虎は眉を下げる。
「謝る必要なんてないです! ワタクシが先走ってしまったばかりに……」
しづきが慌てたようにフォローし、キリッとした顔で言う。
「予備のハンコとして育てましょう」
「あ、それいいね~♡」
「……いいかもしれんな」
「会長までっ!?」
次々と肯定的な意見を述べるメンバーに新兎は困惑の声を漏らす。
……どうやら、この生徒会に新兎以外の常識人はいないらしい。
扉の先に立っていたのは──
「会長……!」
そこには、眠たそうな目で控えめに扉から半顔を覗かせている白虎がいた。
小麦粉や酢を土にまいている朱雀、その様子とメモを交互に見て熱心に何かを書き込んでいるしづき、その手前で安堵のばかり身体をわなわなと震わせている新兎。
その状況が飲み込めなかったのか、白虎は少し首を傾けている。
(やっぱりこの状況はおかしいんだ……!)
おかしいと分かっていても自分が少数派であるとつい自信を失くすものだ。
白虎という力強い仲間を得て新兎は安堵の息を漏らした。
「あの……」
白虎が扉から出てきて、何かを言いたげにこちらに近づいてくる。
くるくると回りながら酢の瓶を傾けている朱雀と、酢の瓶に視線が釘付けのしづきは、まだ彼が来たことに気づいていないようだ。
彼ならきっとその奇行を止めてくれるはずだ。
新兎は勝利を確信し、白虎に視線を送る。
「朱雀、しづき……」
彼は、徐々に回転が速くなっていく朱雀と、それを凝視しすぎて眼球が乾燥しているしづきに控えめに声をかける。
二人が「ん?」と同時に白虎を振り向くと、白虎は新兎にも視線を送ってくる。話を聞いてほしいという視線だろう。
「さつまいもは、育てなくていい……」
ああ、やはりと新兎は安堵し口を開く。
「やっぱり、職員室に行ったほうがいいですよね」
「いや……その必要はない」
え、と無意識に声が漏れる。
白虎も奇策を披露するのだろうか。
だったらいち早く止めなければ。
「いや会長、先生たちに相談したほうが──」
「なんか……あった」
朱雀としづきまでもが不思議な顔で彼を見つめている。
どんな爆弾発言が来るのかと新兎が怯えていると、白虎は申し訳なさそうにしゅんと肩を落とす。
「あの……なんか……印鑑、あった……」
「「「………………」」」
一同、沈黙。
「すまない……」と小さな声で何度か繰り返す白虎に、新兎だけではなく朱雀としづきもしばらくは沈黙していた。
「ええと……どこに……あったんですか?」
「その……書類の、隙間……」
新兎が正直な疑問をぶつけると、白虎は歯切れ悪く告げた。申し訳ないという気持ちは十二分にあるようだ。
「あらぁ……」
「まぁ……」
朱雀としづきも呆れとも困惑とも取れない複雑な声を漏らす。
なにせさつまいもを植え、小麦粉と酢をばらまき、しづきに至っては眼球がカピカピに乾燥したのだ。
「その、マジで……すまない」
……朱雀としづきだけを問題児として認識していたが、その二人を振り回す彼こそが、本当の問題児なのかもしれない。
「え~このさつまいも要らないのぉ?」
朱雀がどこか残念そうな声音で酢の瓶を地面に置く。
「頑張ってくれたのにすまない……しづきも」
さつまいもを育てようとしていたことについては一切触れず、白虎は眉を下げる。
「謝る必要なんてないです! ワタクシが先走ってしまったばかりに……」
しづきが慌てたようにフォローし、キリッとした顔で言う。
「予備のハンコとして育てましょう」
「あ、それいいね~♡」
「……いいかもしれんな」
「会長までっ!?」
次々と肯定的な意見を述べるメンバーに新兎は困惑の声を漏らす。
……どうやら、この生徒会に新兎以外の常識人はいないらしい。
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