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野良猫(珍)捕獲劇
ウサギ発言の被害者・庶務のペン
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印鑑騒動の翌日。
新兎は報告書をまとめていた。
題には「小麦粉や酢などを生徒会役員が中庭に散布した案件についての報告書」と書かれている。
こういう案件の報告書などをまとめて提出するのは生徒会庶務の仕事だ。
(なんで一番まともに止めようとした俺が……)
いじける子どものように頬を膨らませる新兎の筆圧はどんどん強くなっていく。
(俺小麦粉とかまいてないし……絶対当事者にまとめさせるのが一番だし……)
教師陣と生徒会役員に募っていく苛立ちが込められたペンの筆圧で綴られていく文字は、もはや消しゴムで消すことは不可能な域に到達している。
『うるさいですウサギさん』
「俺はうさぎじゃねえええええぇっ!!」
ペンがビキリと音を立て、不格好に歪む。
気づいたら机にドンと手をつき、椅子から立ち上がっていた。
「……どうした新兎」
「ウサギ~?」
「頭おかしくなっちゃいました?」
前半二人はともかく、一番最後の張本人はケロッとした顔で馬鹿にしてきた。手元から目を離さず言っているので余計に腹が立つ。
「大丈夫ですかウサギさん。病院行きますかウサギさん」
「連呼するな」
依然として手元の資料に視線を落としながら悪気の感じ取れない無表情で言う。
(こいつ絶対わかってやがる……)
新兎が昨日の「ウサギさん」発言を根に持っていることをわかってイジっているのだ。
こめかみをピクピクと引きつらせながら、ゆっくり席につく。
新兎は同学年のクラスメイトと比べ、低身長で顔も幾分か幼く見えるのだ。
名前に「兎」と入っているものの、それほどウサギに愛着を持っているわけではない。
……逆にこれからずっと「ウサギ」と呼ばれていたら危うくウサギを嫌いになりかねない。
ウサギの人気を保つためにはウサギ呼びを辞めてもらわなければ。
そう提言をしようと、再び椅子から立ち上がろうとするが、その前に白虎が口を開く。
「……どうして、ウサギなんだ……?」
その視線はしづきに向けられ、しづきは先ほど新兎に答えるときとは打って変わって資料から視線を上げ、作業の手も止めている。
白虎に話しかけられたことが相当嬉しいようで「それはですね」と満面の笑顔で話し出す。
「小動物、と言われて最初に思い浮かぶのは猫ですが──」
小動物の部分は決定事項らしい。
低身長がコンプレックスの新兎が静かに青筋を浮かべていると、机の左側から物音がする。
新兎の左にあるのは生徒会室の扉だ。
物音がしたということは扉が開いたということだが、この時間帯に、しかもノックなしに入ってくる人物なんてそうそういない。
しづきも白虎の視線で気づいたようで、話を中断して「本当にウサギさんが来ましたかね?」と不思議そうに扉を眺める。
重厚な作りの両開き戸がゆっくり開いた先には──
──何もいなかった。
視界に映らなかった、と言うほうが正確だろうか。
「ニャアオ」
「え?」
新兎は報告書をまとめていた。
題には「小麦粉や酢などを生徒会役員が中庭に散布した案件についての報告書」と書かれている。
こういう案件の報告書などをまとめて提出するのは生徒会庶務の仕事だ。
(なんで一番まともに止めようとした俺が……)
いじける子どものように頬を膨らませる新兎の筆圧はどんどん強くなっていく。
(俺小麦粉とかまいてないし……絶対当事者にまとめさせるのが一番だし……)
教師陣と生徒会役員に募っていく苛立ちが込められたペンの筆圧で綴られていく文字は、もはや消しゴムで消すことは不可能な域に到達している。
『うるさいですウサギさん』
「俺はうさぎじゃねえええええぇっ!!」
ペンがビキリと音を立て、不格好に歪む。
気づいたら机にドンと手をつき、椅子から立ち上がっていた。
「……どうした新兎」
「ウサギ~?」
「頭おかしくなっちゃいました?」
前半二人はともかく、一番最後の張本人はケロッとした顔で馬鹿にしてきた。手元から目を離さず言っているので余計に腹が立つ。
「大丈夫ですかウサギさん。病院行きますかウサギさん」
「連呼するな」
依然として手元の資料に視線を落としながら悪気の感じ取れない無表情で言う。
(こいつ絶対わかってやがる……)
新兎が昨日の「ウサギさん」発言を根に持っていることをわかってイジっているのだ。
こめかみをピクピクと引きつらせながら、ゆっくり席につく。
新兎は同学年のクラスメイトと比べ、低身長で顔も幾分か幼く見えるのだ。
名前に「兎」と入っているものの、それほどウサギに愛着を持っているわけではない。
……逆にこれからずっと「ウサギ」と呼ばれていたら危うくウサギを嫌いになりかねない。
ウサギの人気を保つためにはウサギ呼びを辞めてもらわなければ。
そう提言をしようと、再び椅子から立ち上がろうとするが、その前に白虎が口を開く。
「……どうして、ウサギなんだ……?」
その視線はしづきに向けられ、しづきは先ほど新兎に答えるときとは打って変わって資料から視線を上げ、作業の手も止めている。
白虎に話しかけられたことが相当嬉しいようで「それはですね」と満面の笑顔で話し出す。
「小動物、と言われて最初に思い浮かぶのは猫ですが──」
小動物の部分は決定事項らしい。
低身長がコンプレックスの新兎が静かに青筋を浮かべていると、机の左側から物音がする。
新兎の左にあるのは生徒会室の扉だ。
物音がしたということは扉が開いたということだが、この時間帯に、しかもノックなしに入ってくる人物なんてそうそういない。
しづきも白虎の視線で気づいたようで、話を中断して「本当にウサギさんが来ましたかね?」と不思議そうに扉を眺める。
重厚な作りの両開き戸がゆっくり開いた先には──
──何もいなかった。
視界に映らなかった、と言うほうが正確だろうか。
「ニャアオ」
「え?」
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