4 / 23
第二章 結婚ってなんですか?
2-1
しおりを挟む
『ひなちゃん。
結婚、しよ?』
爆弾発言をしたあと、猪狩さんは私の返事など待たず飛行機の時間があるからと帰っていった。
「えっ?
は?
えっ?」
わけもわからず混乱したままその後を過ごし、気づいたときには住んでいるマンションに帰り着いていた。
それほどまでに私には想定外の出来事で、頭が理解を拒否していたのだ。
「あー、家、落ち着くー」
ソファーにいつも置いてある、猫のキャラクターの大きなぬいぐるみに抱きつく。
ちなみに六つの誕生日に猪狩さんが買ってくれたものだ。
「もう、猪狩さん、結婚しようとか冗談きついよね」
両親とも別れ、ようやくひとりになれて現実が戻ってくる。
うん、きっとあれは冗談だったんだよ。
じゃないといくら小さい頃を知っているとはいえ、私と結婚しようなどと彼が言ってくるはずがない。
「うんうん、きっとそうだ」
……と、私は片付けたんだけれど……。
それからしばらくは何事もなく過ごした。
いや、何事もなくは嘘だ。
職場ではなにやら、不穏な空気が漂いはじめている。
「愛川さん、ちょっと」
「はい?」
支店長代理に呼ばれ、他の人に窓口を代わってもらって席を立つ。
連れていかれたのは会議室で、彼とふたりきりだ。
「その、さ。
んーっと……」
気のいいおじさんという感じの、父ほどの年の彼は口を開いたものの、なにやら言いにくそうだ。
「あっ、お兄さん!
お兄さん、結婚したそうだね。
おめでとう」
「ありがとう、ございます」
なにかを思いついたかのようにぱっと顔を輝かせて支店長代理は言ってきたが、きっと本題はこれではない。
それでも一応はお礼を言う。
「最近、さ。
……なにか変わったこと、ない?」
そろりと彼が、気まずそうに上目遣いで私をうかがってくる。
支店長代理はいったい、なにが言いたいのだろう?
変わったこと?
ああ、あれか。
私と上司――安高課長との関係を言いたいのか。
「安高課長とはきっぱり別れました」
「ああ、そう……」
私の答えを聞いて支店長代理はあきらかにほっとした顔をした。
本店の、部長のお嬢さんと結婚の決まっている男が支店員と付き合っているとか大問題だもんね。
「ほかにさ。
ほかにこう、……なんか、ない?」
曖昧に笑い彼がさらに聞いてくる。
しかし私にはもう、心当たりがない。
「特になにもありませんが?」
強いて上げるとすれば用もないのに毎日のように来るお婆ちゃんちの猫が子供を産み、押しつけられそうになっていることくらいだが、これは絶対に支店長代理が求めるものではないだろう。
ちなみに猫は好きだし一匹くらい引き受けたいところだが、うちはペット不可のマンションなのだ。
残念。
「うん、そうか。
悪かったね、忙しいのに呼び出して」
一瞬、残念そうな顔をしたあと、彼は笑って取り繕ってきた。
「いえ。
もう戻っても?」
「うん、ごめんね」
「いえ。
では、失礼します」
部屋を出ると廊下の角からこちらをうかがっている年かさの女性行員がいた。
私が出てきたのに気づいて慌てて隠れたが、バレバレだ。
……暇人ですね、と。
彼女が私が安高課長と別れたのをいい気味だと言ってまわっているのは知っている。
しかしそんなのは相手にするだけ無駄なので、気にしないようにしていた。
その後も窓口業務をこなす。
ふと見知った人が視界を横切った気がしてそちらを見ると、猪狩さんがそこにいた。
目があって、彼がひらひらと手を振ってくる。
瞬間、カウンターの下に隠れたくなったが、お客様の相手をしている最中だったので、かろうじて耐えた。
おふたりお客様を経て、彼の順番がまわってくる。
というか、窓口は三つほど開いているのに、なぜ私のところにまわってくる?
「よっ、ひなちゃん」
「ちょっ、あんまり親しそうにしないでください!」
なるべく周囲に聞こえないように声を抑えてこそこそと話す。
すでに数人、こちらに聞き耳を立てているのが気配でわかった。
「職場にわざわざ、なんの用ですか」
まさか、働きぶりを見に来たとか言わないよね?
「ん?
ひなちゃんのいる銀行で口座開設するって言っただろ?」
彼がカウンターに置いたのはまさしく、口座開設の申込書だった。
「今どき、わざわざ来店しなくてもアプリから口座開設できるんですよ」
つい抗議していたが、仕方ない。
「それじゃひなちゃんに手続きしてもらえないから意味ないだろ」
へらっと締まらない顔で彼が嬉しそうに笑い、私の口からため息が落ちていった。
てきぱきと手続きを進めていく。
これは仕事、そう仕事なのよ、雛乃。
相手が猪狩さんってだけで。
なにかプライベートな話をされたらどうしようとどきどきしていたが、彼はひと言も持ち出さなかったので安心した。
「これでお手続きは完了ですが、なにか質問などございますか」
「いや、ない。
というかひなちゃんが立派な銀行員しててびっくりした」
はぁーっと猪狩さんは感心しているが、もう就職して四年も経つのだ。
立派な銀行員になっていないといろいろ問題がある。
「ごめんね、手間かけさせて。
でもこれから銀行関係はひなちゃんに相談すればいいから安心だ。
ありがとう」
眼鏡の奥で目尻を下げてにこっと笑われるとなんでも許してしまいそうになるほど、彼の笑顔には抜群の破壊力があった。
「いえ、仕事ですから。
このたびは口座開設、ありがとうございました」
それでも顔に力を入れ、平静を装う。
「ん、ほんとにありがとね。
……あ」
カウンターから離れかけた彼が、なにかを思いだしたかのように顔を寄せてきた。
「今日、非番なんだ。
あとでメッセージ入れとくから、見てね」
内緒話をするようにこっそりと話し、顔を離した彼が器用に私に向かって片目をつぶってみせる。
そのまま今度こそ、猪狩さんは帰っていった。
「だからー」
思わず愚痴が出そうになって、慌てて口を噤む。
変な噂を立てられたらどうしようとさりげなくあたりを見るとすでに隅でこそこそ話している二人組がいて、頭が痛んだ。
結婚、しよ?』
爆弾発言をしたあと、猪狩さんは私の返事など待たず飛行機の時間があるからと帰っていった。
「えっ?
は?
えっ?」
わけもわからず混乱したままその後を過ごし、気づいたときには住んでいるマンションに帰り着いていた。
それほどまでに私には想定外の出来事で、頭が理解を拒否していたのだ。
「あー、家、落ち着くー」
ソファーにいつも置いてある、猫のキャラクターの大きなぬいぐるみに抱きつく。
ちなみに六つの誕生日に猪狩さんが買ってくれたものだ。
「もう、猪狩さん、結婚しようとか冗談きついよね」
両親とも別れ、ようやくひとりになれて現実が戻ってくる。
うん、きっとあれは冗談だったんだよ。
じゃないといくら小さい頃を知っているとはいえ、私と結婚しようなどと彼が言ってくるはずがない。
「うんうん、きっとそうだ」
……と、私は片付けたんだけれど……。
それからしばらくは何事もなく過ごした。
いや、何事もなくは嘘だ。
職場ではなにやら、不穏な空気が漂いはじめている。
「愛川さん、ちょっと」
「はい?」
支店長代理に呼ばれ、他の人に窓口を代わってもらって席を立つ。
連れていかれたのは会議室で、彼とふたりきりだ。
「その、さ。
んーっと……」
気のいいおじさんという感じの、父ほどの年の彼は口を開いたものの、なにやら言いにくそうだ。
「あっ、お兄さん!
お兄さん、結婚したそうだね。
おめでとう」
「ありがとう、ございます」
なにかを思いついたかのようにぱっと顔を輝かせて支店長代理は言ってきたが、きっと本題はこれではない。
それでも一応はお礼を言う。
「最近、さ。
……なにか変わったこと、ない?」
そろりと彼が、気まずそうに上目遣いで私をうかがってくる。
支店長代理はいったい、なにが言いたいのだろう?
変わったこと?
ああ、あれか。
私と上司――安高課長との関係を言いたいのか。
「安高課長とはきっぱり別れました」
「ああ、そう……」
私の答えを聞いて支店長代理はあきらかにほっとした顔をした。
本店の、部長のお嬢さんと結婚の決まっている男が支店員と付き合っているとか大問題だもんね。
「ほかにさ。
ほかにこう、……なんか、ない?」
曖昧に笑い彼がさらに聞いてくる。
しかし私にはもう、心当たりがない。
「特になにもありませんが?」
強いて上げるとすれば用もないのに毎日のように来るお婆ちゃんちの猫が子供を産み、押しつけられそうになっていることくらいだが、これは絶対に支店長代理が求めるものではないだろう。
ちなみに猫は好きだし一匹くらい引き受けたいところだが、うちはペット不可のマンションなのだ。
残念。
「うん、そうか。
悪かったね、忙しいのに呼び出して」
一瞬、残念そうな顔をしたあと、彼は笑って取り繕ってきた。
「いえ。
もう戻っても?」
「うん、ごめんね」
「いえ。
では、失礼します」
部屋を出ると廊下の角からこちらをうかがっている年かさの女性行員がいた。
私が出てきたのに気づいて慌てて隠れたが、バレバレだ。
……暇人ですね、と。
彼女が私が安高課長と別れたのをいい気味だと言ってまわっているのは知っている。
しかしそんなのは相手にするだけ無駄なので、気にしないようにしていた。
その後も窓口業務をこなす。
ふと見知った人が視界を横切った気がしてそちらを見ると、猪狩さんがそこにいた。
目があって、彼がひらひらと手を振ってくる。
瞬間、カウンターの下に隠れたくなったが、お客様の相手をしている最中だったので、かろうじて耐えた。
おふたりお客様を経て、彼の順番がまわってくる。
というか、窓口は三つほど開いているのに、なぜ私のところにまわってくる?
「よっ、ひなちゃん」
「ちょっ、あんまり親しそうにしないでください!」
なるべく周囲に聞こえないように声を抑えてこそこそと話す。
すでに数人、こちらに聞き耳を立てているのが気配でわかった。
「職場にわざわざ、なんの用ですか」
まさか、働きぶりを見に来たとか言わないよね?
「ん?
ひなちゃんのいる銀行で口座開設するって言っただろ?」
彼がカウンターに置いたのはまさしく、口座開設の申込書だった。
「今どき、わざわざ来店しなくてもアプリから口座開設できるんですよ」
つい抗議していたが、仕方ない。
「それじゃひなちゃんに手続きしてもらえないから意味ないだろ」
へらっと締まらない顔で彼が嬉しそうに笑い、私の口からため息が落ちていった。
てきぱきと手続きを進めていく。
これは仕事、そう仕事なのよ、雛乃。
相手が猪狩さんってだけで。
なにかプライベートな話をされたらどうしようとどきどきしていたが、彼はひと言も持ち出さなかったので安心した。
「これでお手続きは完了ですが、なにか質問などございますか」
「いや、ない。
というかひなちゃんが立派な銀行員しててびっくりした」
はぁーっと猪狩さんは感心しているが、もう就職して四年も経つのだ。
立派な銀行員になっていないといろいろ問題がある。
「ごめんね、手間かけさせて。
でもこれから銀行関係はひなちゃんに相談すればいいから安心だ。
ありがとう」
眼鏡の奥で目尻を下げてにこっと笑われるとなんでも許してしまいそうになるほど、彼の笑顔には抜群の破壊力があった。
「いえ、仕事ですから。
このたびは口座開設、ありがとうございました」
それでも顔に力を入れ、平静を装う。
「ん、ほんとにありがとね。
……あ」
カウンターから離れかけた彼が、なにかを思いだしたかのように顔を寄せてきた。
「今日、非番なんだ。
あとでメッセージ入れとくから、見てね」
内緒話をするようにこっそりと話し、顔を離した彼が器用に私に向かって片目をつぶってみせる。
そのまま今度こそ、猪狩さんは帰っていった。
「だからー」
思わず愚痴が出そうになって、慌てて口を噤む。
変な噂を立てられたらどうしようとさりげなくあたりを見るとすでに隅でこそこそ話している二人組がいて、頭が痛んだ。
67
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました
藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。
そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。
ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。
その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。
仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。
会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。
これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。
エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」
(三度目はないからっ!)
──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない!
「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」
倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。
ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。
それで彼との関係は終わったと思っていたのに!?
エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。
客室乗務員(CA)倉木莉桜
×
五十里重工(取締役部長)五十里武尊
『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる