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25 旅の詩
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偽の認識票の僕の名前はスノウ、歌の女神の信徒となっている。
髪の色は、この世界では比較的多い紫に染め、目の色は、光魔法で明るい茶色にしてある。
サラワへ逃げて来てから三週間が過ぎた。
顔役の予想通り、二週間程前に、酒場やギルドへ、獣皮紙に書かれた僕の手配書を警備兵が貼り出しに来た。
人相書きは上手に描かれており、赤と銀の髪を逆立てた物凄く凶悪な顔が睨んでいる。
でも僕にはあまり似ていない。
賞金は金貨十枚で凶悪犯より高く、高価な白い獣皮紙に書かれた手配書は、薄汚れた布に書かれている普通の手配書の中で目立っている。
罪状は変質者で、以下の様な注が書かれていた。
”この者幼き少女を拉致し、服を奪いて緊縛す。嫌がる少女を弄び、欲望を吐き出したる変質者なり”
うーん、少し脚色してあるが、でっち上げとも言い難い微妙な内容だ。
なんか、とっても悪い奴の様に思えて来る。
でも、手配書の人物が僕だとは、誰も思わない。
険しい峰々を越える悲壮な逃避行すら想定して身構えていたのに、なんか拍子抜けだった。
「ねえスノウ、こいつって人間のクズよね。早く捕まって殺されちゃえば良いのよ」
「・・・・・ああ、そうだな、人間のクズだ」
「ねえ、私の部屋で飲み直す?」
「ああ」
大人しくしていようと思っていたのだが、女が数人出来てしまった。
僕が悪い訳じゃ無い、蔓が勝手に抱き寄せてしまうのだ。
女達は、僕が強引に抱き寄せたと勘違いしている。
蔦が酒場で抱き寄せる女は、二十代後半から三十代半ば、僕のストライクゾーンより十歳程上だ。化粧の濃い目立つ美人が多く、僕の腕の中で、みんな好色そうに目を輝かせるので、僕も煩悩に負けてしまう。
部屋で軽く飲んでから戦闘開始。
蔓も最初は手伝ってくれるのだが、途中から徐々に女をくすぐり始め、次第に弱点捜しに、一生懸命になってしまう。
この間の侵入者の件で、味を占めてしまったのだろうか。
事が終わった後、僕は毎回女達から殴られる。
その時は怒っているのだが、それはそれで癖になるらしく、蔓が抱き寄せるとなぜかホイホイと付いて来る。
情の深い女が多く、他の女を目の前で抱き寄せたら、後ろからズブリと刺されそうでおっかない。
それだけじゃない、真剣に女へ惚れているのだろう、実直そうな職人が物陰から襲って来たり、真面目な商人が震えながら女に切り掛かるなど、僕が物凄く悪い奴みたいな立場に立たされることが多くなった。
「また貴様か。貴様も臭い飯を食ってみるか」
その度警備兵のご厄介になるのだが、次第に僕は厄介者としてマークされ始める。
僕が悪い訳じゃ無い、悪いのは蔓だ。
でも僕の脛には大きな傷がある、詳しく取り調べられたら、きっと埃やぼろが出る。
少しずるずると長居をし過ぎたのだろうか、女達と分かれて、この町から出ることにした。
ベットの上でコインを投げる、裏だったら河下、表だったら河上だ。
コインは裏だった。
「スノウ、何してるの」
「何でもない」
船でトリネトス河を下ることにした。
トリネトス河は、対岸が霞んで見える程広い河だ。
河港には、大きな定期客船が一杯並んでいる。
僕は百人乗りの下りの客船に乗り込んだ。
何処から伝え聞いたのか、ベットを共にした女達が、十人程泣きながら見送ってくれた。
「よう詩人さん、ずいぶんと良い思いをしてたみてーじゃねえか」
背後に立っていた、頭の悪そうな、人相の悪い五人連れから因縁を付けられた。
周囲の人達は、皆見ない振りをして、目を逸らしている。
「ちょっとその辺で、歌でも歌って貰おうか、兄ちゃん」
取り囲まれて、船尾の荷物室の影へ連れて行かれた。
「良い声で鳴いてくれよ」
男達が殴り掛って来た。
「アップ、助けて、ウップ」
「ヒー、ゲホッ、ワプ」
「ウプッ、アプッ、ヒプッ」
問答無用で、蔓が男達を河へ放り込んだ。
足に蔓を絡ませて、水の中を出し入れしている。
溺れそうになると、ちょこっとだけ外に顔を出させ、再び水中へ引き込んでいる、うん、エグイ。
男達が疲れ切って、反応が悪くなった。
飽きたのか、蔓は甲板の上へ男達を引き上げた。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。先生、申し訳無い」
僕の魔法だと思ったのだろう、男達が土下座して謝った。
男達は、王都へ向かう途中だった。
王都の裏社会では、今抗争が勃発していて、周囲の町から助っ人を集めているそうなのだ。
「先生、俺達の組織の助っ人になってくれ。後生だ」
土下座の延長で頼まれてしまった。
周囲に野次馬が増え始めたので、仕方なく了承してしまった。
行く当ては決めていなかったので、流されるのも一興だ。
男達も僕も寝る場所は中甲板、一番安い客室だ。
広い甲板で適当に雑魚寝する。
窓も無く天井も低いが、男達が隅の場所を確保していたので、酒盛りを始める。
飲んでみると、結構気さくな男達で、自分達には恋人も居ないのに、十人の女に見送られている僕が、物凄く悔しくて理不尽に思えたらしい。
もて方を教えてくれと言われたので、恋のバラードを二曲ほど歌ってやる。
周囲の女達が目をキラキラさせて寄って来たが、全然参考にならなかったようだ。
飲んで騒いで二日程が直ぐに過ぎた。
都が見えて来たと言うので、上甲板へ出ると、河のど真ん中に石垣で囲まれた大きな都市が浮かんでいた。
王城なのだろうか、街の中心に、空に向かって延びる尖塔が何本も見える。
船は石垣に囲まれた大きな門を潜り、街の中に作られた水路へ入って行った。
頭上の橋を何本も見送り、船は大勢の人で賑わう河岸へと横付けされた。
髪の色は、この世界では比較的多い紫に染め、目の色は、光魔法で明るい茶色にしてある。
サラワへ逃げて来てから三週間が過ぎた。
顔役の予想通り、二週間程前に、酒場やギルドへ、獣皮紙に書かれた僕の手配書を警備兵が貼り出しに来た。
人相書きは上手に描かれており、赤と銀の髪を逆立てた物凄く凶悪な顔が睨んでいる。
でも僕にはあまり似ていない。
賞金は金貨十枚で凶悪犯より高く、高価な白い獣皮紙に書かれた手配書は、薄汚れた布に書かれている普通の手配書の中で目立っている。
罪状は変質者で、以下の様な注が書かれていた。
”この者幼き少女を拉致し、服を奪いて緊縛す。嫌がる少女を弄び、欲望を吐き出したる変質者なり”
うーん、少し脚色してあるが、でっち上げとも言い難い微妙な内容だ。
なんか、とっても悪い奴の様に思えて来る。
でも、手配書の人物が僕だとは、誰も思わない。
険しい峰々を越える悲壮な逃避行すら想定して身構えていたのに、なんか拍子抜けだった。
「ねえスノウ、こいつって人間のクズよね。早く捕まって殺されちゃえば良いのよ」
「・・・・・ああ、そうだな、人間のクズだ」
「ねえ、私の部屋で飲み直す?」
「ああ」
大人しくしていようと思っていたのだが、女が数人出来てしまった。
僕が悪い訳じゃ無い、蔓が勝手に抱き寄せてしまうのだ。
女達は、僕が強引に抱き寄せたと勘違いしている。
蔦が酒場で抱き寄せる女は、二十代後半から三十代半ば、僕のストライクゾーンより十歳程上だ。化粧の濃い目立つ美人が多く、僕の腕の中で、みんな好色そうに目を輝かせるので、僕も煩悩に負けてしまう。
部屋で軽く飲んでから戦闘開始。
蔓も最初は手伝ってくれるのだが、途中から徐々に女をくすぐり始め、次第に弱点捜しに、一生懸命になってしまう。
この間の侵入者の件で、味を占めてしまったのだろうか。
事が終わった後、僕は毎回女達から殴られる。
その時は怒っているのだが、それはそれで癖になるらしく、蔓が抱き寄せるとなぜかホイホイと付いて来る。
情の深い女が多く、他の女を目の前で抱き寄せたら、後ろからズブリと刺されそうでおっかない。
それだけじゃない、真剣に女へ惚れているのだろう、実直そうな職人が物陰から襲って来たり、真面目な商人が震えながら女に切り掛かるなど、僕が物凄く悪い奴みたいな立場に立たされることが多くなった。
「また貴様か。貴様も臭い飯を食ってみるか」
その度警備兵のご厄介になるのだが、次第に僕は厄介者としてマークされ始める。
僕が悪い訳じゃ無い、悪いのは蔓だ。
でも僕の脛には大きな傷がある、詳しく取り調べられたら、きっと埃やぼろが出る。
少しずるずると長居をし過ぎたのだろうか、女達と分かれて、この町から出ることにした。
ベットの上でコインを投げる、裏だったら河下、表だったら河上だ。
コインは裏だった。
「スノウ、何してるの」
「何でもない」
船でトリネトス河を下ることにした。
トリネトス河は、対岸が霞んで見える程広い河だ。
河港には、大きな定期客船が一杯並んでいる。
僕は百人乗りの下りの客船に乗り込んだ。
何処から伝え聞いたのか、ベットを共にした女達が、十人程泣きながら見送ってくれた。
「よう詩人さん、ずいぶんと良い思いをしてたみてーじゃねえか」
背後に立っていた、頭の悪そうな、人相の悪い五人連れから因縁を付けられた。
周囲の人達は、皆見ない振りをして、目を逸らしている。
「ちょっとその辺で、歌でも歌って貰おうか、兄ちゃん」
取り囲まれて、船尾の荷物室の影へ連れて行かれた。
「良い声で鳴いてくれよ」
男達が殴り掛って来た。
「アップ、助けて、ウップ」
「ヒー、ゲホッ、ワプ」
「ウプッ、アプッ、ヒプッ」
問答無用で、蔓が男達を河へ放り込んだ。
足に蔓を絡ませて、水の中を出し入れしている。
溺れそうになると、ちょこっとだけ外に顔を出させ、再び水中へ引き込んでいる、うん、エグイ。
男達が疲れ切って、反応が悪くなった。
飽きたのか、蔓は甲板の上へ男達を引き上げた。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。先生、申し訳無い」
僕の魔法だと思ったのだろう、男達が土下座して謝った。
男達は、王都へ向かう途中だった。
王都の裏社会では、今抗争が勃発していて、周囲の町から助っ人を集めているそうなのだ。
「先生、俺達の組織の助っ人になってくれ。後生だ」
土下座の延長で頼まれてしまった。
周囲に野次馬が増え始めたので、仕方なく了承してしまった。
行く当ては決めていなかったので、流されるのも一興だ。
男達も僕も寝る場所は中甲板、一番安い客室だ。
広い甲板で適当に雑魚寝する。
窓も無く天井も低いが、男達が隅の場所を確保していたので、酒盛りを始める。
飲んでみると、結構気さくな男達で、自分達には恋人も居ないのに、十人の女に見送られている僕が、物凄く悔しくて理不尽に思えたらしい。
もて方を教えてくれと言われたので、恋のバラードを二曲ほど歌ってやる。
周囲の女達が目をキラキラさせて寄って来たが、全然参考にならなかったようだ。
飲んで騒いで二日程が直ぐに過ぎた。
都が見えて来たと言うので、上甲板へ出ると、河のど真ん中に石垣で囲まれた大きな都市が浮かんでいた。
王城なのだろうか、街の中心に、空に向かって延びる尖塔が何本も見える。
船は石垣に囲まれた大きな門を潜り、街の中に作られた水路へ入って行った。
頭上の橋を何本も見送り、船は大勢の人で賑わう河岸へと横付けされた。
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