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40 転居
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国家連合の職員が寮を訪ねて来た。
勇者認定証を発行してあるのだから、直ぐにでもメトロノ王国の聖都城へ移り住めという話かと思って身構えたのだが、違った。
民区に部屋を用意したからそこへ移り住め、そこから第一群の高等部へ通えと言う話だった。
飛び級と言うことらしかった。
部屋の場所を確認したら、店の近く、高級料理店が並ぶ通りの一画だった。
朝夕の食事は、商人ギルドのはんこが押してあるチケット綴りを渡すので、周辺の高級料理店で自由に食べて良いと言うことだった。
迷宮での実地訓練は、第四群で子供達を引率して行い、夜のバイトも続けることを条件に了承した。
ーーーーー
ローズ王国モンクリフ公爵家 長男デボラ
親父から連絡が来た。
竜殺しの勇者を、カリオペとランディーニのクラスに編入させることは成功したが、ローズ聖都城の庭続きにある館へ住まわせることには、失敗したらしい。
何処からか、王族以外の大きな勢力が横槍を入れたらしく、今、その勢力について調べていると書いてあった。
勇者が移された先は民区、群域と違い、第一群の生徒が立ち入ると、品位を疑われる良からぬ噂が話をたてられてしまう。
メトロノの王女を遠ざけることができたが、カリオペとランディーニも遠ざけられてしまった。
第三勢力が勇者の利用を意図しているのなら、第一群域内で陳列した方が効果的な筈だ。
第三勢力の意図が読めない。
ーーーーー
新しい部屋は面白い建物の中に有った。
外見は二階建ての普通の料理店なのだが、魔素の目で見ると四階建ての建物なのだ。
隣接する建物との間の路地から勝手口に入り、入り口直ぐ脇の階段を昇る。
両脇に宴会用の個室が並ぶ廊下を真っ直ぐ進むと、フロアの中程に料理運搬用の厨房へ降りる階段が有る。
その階段を下ると、三階へと登るのだ。
部屋の鍵に魔法が仕掛けてあるらしく、一緒に下りても、店の従業員はそのまますたすたと厨房へ降りて行く。
三階には店が並んでいる。
一応薬屋とか魔法屋とか道具屋とか本屋なのだが、怪しげな物に二桁くらい違う額の正札が付いており、怪しげな人達が大勢店先で商品を吟味しており、結構賑わっている。
発禁本入手とか、禁呪入手とか、禁制魔道具大量入手とか、呪いの魔剣入手とか、怪しげな台詞が大書された札が店頭にぶら下っている。
迷路の様に通路が入り組んだフロアの中程、顔色の悪いビキニ姿の幼女が店番している本屋と、呪文を唱えながら大釜を掻き混ぜている婆さんのいる薬屋の間に四階へ上がる見えない階段がある。
認識阻害の魔法が掛っている様で、だれもその不自然な空間に気が付かない。
四階は屋根裏部屋の様な場所なのだが、台所、トイレ、風呂場、倉庫、応接間、客間、書斎、寝室がひと通り揃っている。
北側の窓を開けると、眼下の僕の働いている店の庭園が広がっている。
南側は表通り、東と西は隣接する建物の屋根が通路の様に続いており、屋根の煙突から煙が棚引いている。
魔素の目で見たら、庭園の中の別荘が丸見えだった。
幸、この時間帯は清掃作業中だった。
朝は乗合馬車に乗って第一群域へと向かう。
第一群域の学院へ通勤している人達も多く、学院前まで運んでくれる。
校門を入ると、カリオペとランディーニを筆頭に、各国の王女達が待ち受けており、教室へと連行される。
一日中王女達に囲まれており、蔓のセクハラは、疲れたので黙認することにしている。
カリオペとランディーニは、教室で僕の脇にぴったり並んで座っている。
一人用のスペースに三人並んでいるのだから、狭くて仕方が無い。
でもランディーニがお気に入りの蔓には都合が良いようで、一日中ランディーニを撫でまわしている。
授業は遅く始まり早く終わる。
しかも二鐘の昼休みがあり、第四群の生徒達と違い、ここの生徒達は殆ど勉強しない。
さらに、自由選択時間という勉強しなくて良い時間まである。
空いた時間は、男は勉強会、女はお茶会と称して、御喋りを楽しんで過ごしている。
男は僕を誘う気など毛頭ないので、もっぱらお茶会に呼ばれている。
僕もリュトルを爪弾いて詩を歌い、楽しませて貰っている。
恋の歌を奏でた後に、瞳を潤ませキスをせがんで来る子が結構いる。
子供用のキスであやしてやると、結構喜んでいる。
上級生からのお茶会も増え始め、結構忙しくなったある日、送迎の馬車で帰る王女達を見送った後、乗合馬車の停留所へ向かおうと振り向いたら、目の前に初等部の制服を着た子供が立っていた。
にっこりと天使の様に微笑み、口を大きく開けた。
犬歯だけじゃなくて、口の中全体がスパークしている。
マルカートからの招待状が五枚溜まると、少し焦げ臭い歯型がプレゼントされるらしい。
ーーーーー
第一群魔法学院中等部二年 勇女ハル
中等部の王女達は、高等部に編入した勇者の噂話に夢中です。
以前十五歳と聞いていたのですが、もう少し年上だったようです。
噂話を聞く限り、リゥトルで恋歌を奏で、身体を撫で廻したり唇を奪う、物凄くチャラくて嫌な男の様です。
ローズとリリーという大国の王女様も、誑し込まれているようです。
アキちゃんと同じクラスのマルカートちゃんという王女様と結婚しているようで、
「私という妻が有りながら!」
と怒っていたそうです。
可愛そうに、マルカートちゃんもこの下劣な男に騙されたようです。
タケさんの様に誠実で正直な人が、なんで勇者じゃなかったのでしょうか、なんかとても悔しいです。
”トントン”
「姉ちゃん、居る?」
もう一人の性格に問題がある勇者が、久々に遊びに来ました。
「入りなさい、ユウ」
「姉ちゃん、リュトルの弾き方教えてくんない。俺も噂の勇者に対抗しようと思ってさ」
・・・・こいつは、こいつは、この大馬鹿は。
なんか目の前が暗くなって来ました。
タケさん、何処にいるの。
勇者認定証を発行してあるのだから、直ぐにでもメトロノ王国の聖都城へ移り住めという話かと思って身構えたのだが、違った。
民区に部屋を用意したからそこへ移り住め、そこから第一群の高等部へ通えと言う話だった。
飛び級と言うことらしかった。
部屋の場所を確認したら、店の近く、高級料理店が並ぶ通りの一画だった。
朝夕の食事は、商人ギルドのはんこが押してあるチケット綴りを渡すので、周辺の高級料理店で自由に食べて良いと言うことだった。
迷宮での実地訓練は、第四群で子供達を引率して行い、夜のバイトも続けることを条件に了承した。
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ローズ王国モンクリフ公爵家 長男デボラ
親父から連絡が来た。
竜殺しの勇者を、カリオペとランディーニのクラスに編入させることは成功したが、ローズ聖都城の庭続きにある館へ住まわせることには、失敗したらしい。
何処からか、王族以外の大きな勢力が横槍を入れたらしく、今、その勢力について調べていると書いてあった。
勇者が移された先は民区、群域と違い、第一群の生徒が立ち入ると、品位を疑われる良からぬ噂が話をたてられてしまう。
メトロノの王女を遠ざけることができたが、カリオペとランディーニも遠ざけられてしまった。
第三勢力が勇者の利用を意図しているのなら、第一群域内で陳列した方が効果的な筈だ。
第三勢力の意図が読めない。
ーーーーー
新しい部屋は面白い建物の中に有った。
外見は二階建ての普通の料理店なのだが、魔素の目で見ると四階建ての建物なのだ。
隣接する建物との間の路地から勝手口に入り、入り口直ぐ脇の階段を昇る。
両脇に宴会用の個室が並ぶ廊下を真っ直ぐ進むと、フロアの中程に料理運搬用の厨房へ降りる階段が有る。
その階段を下ると、三階へと登るのだ。
部屋の鍵に魔法が仕掛けてあるらしく、一緒に下りても、店の従業員はそのまますたすたと厨房へ降りて行く。
三階には店が並んでいる。
一応薬屋とか魔法屋とか道具屋とか本屋なのだが、怪しげな物に二桁くらい違う額の正札が付いており、怪しげな人達が大勢店先で商品を吟味しており、結構賑わっている。
発禁本入手とか、禁呪入手とか、禁制魔道具大量入手とか、呪いの魔剣入手とか、怪しげな台詞が大書された札が店頭にぶら下っている。
迷路の様に通路が入り組んだフロアの中程、顔色の悪いビキニ姿の幼女が店番している本屋と、呪文を唱えながら大釜を掻き混ぜている婆さんのいる薬屋の間に四階へ上がる見えない階段がある。
認識阻害の魔法が掛っている様で、だれもその不自然な空間に気が付かない。
四階は屋根裏部屋の様な場所なのだが、台所、トイレ、風呂場、倉庫、応接間、客間、書斎、寝室がひと通り揃っている。
北側の窓を開けると、眼下の僕の働いている店の庭園が広がっている。
南側は表通り、東と西は隣接する建物の屋根が通路の様に続いており、屋根の煙突から煙が棚引いている。
魔素の目で見たら、庭園の中の別荘が丸見えだった。
幸、この時間帯は清掃作業中だった。
朝は乗合馬車に乗って第一群域へと向かう。
第一群域の学院へ通勤している人達も多く、学院前まで運んでくれる。
校門を入ると、カリオペとランディーニを筆頭に、各国の王女達が待ち受けており、教室へと連行される。
一日中王女達に囲まれており、蔓のセクハラは、疲れたので黙認することにしている。
カリオペとランディーニは、教室で僕の脇にぴったり並んで座っている。
一人用のスペースに三人並んでいるのだから、狭くて仕方が無い。
でもランディーニがお気に入りの蔓には都合が良いようで、一日中ランディーニを撫でまわしている。
授業は遅く始まり早く終わる。
しかも二鐘の昼休みがあり、第四群の生徒達と違い、ここの生徒達は殆ど勉強しない。
さらに、自由選択時間という勉強しなくて良い時間まである。
空いた時間は、男は勉強会、女はお茶会と称して、御喋りを楽しんで過ごしている。
男は僕を誘う気など毛頭ないので、もっぱらお茶会に呼ばれている。
僕もリュトルを爪弾いて詩を歌い、楽しませて貰っている。
恋の歌を奏でた後に、瞳を潤ませキスをせがんで来る子が結構いる。
子供用のキスであやしてやると、結構喜んでいる。
上級生からのお茶会も増え始め、結構忙しくなったある日、送迎の馬車で帰る王女達を見送った後、乗合馬車の停留所へ向かおうと振り向いたら、目の前に初等部の制服を着た子供が立っていた。
にっこりと天使の様に微笑み、口を大きく開けた。
犬歯だけじゃなくて、口の中全体がスパークしている。
マルカートからの招待状が五枚溜まると、少し焦げ臭い歯型がプレゼントされるらしい。
ーーーーー
第一群魔法学院中等部二年 勇女ハル
中等部の王女達は、高等部に編入した勇者の噂話に夢中です。
以前十五歳と聞いていたのですが、もう少し年上だったようです。
噂話を聞く限り、リゥトルで恋歌を奏で、身体を撫で廻したり唇を奪う、物凄くチャラくて嫌な男の様です。
ローズとリリーという大国の王女様も、誑し込まれているようです。
アキちゃんと同じクラスのマルカートちゃんという王女様と結婚しているようで、
「私という妻が有りながら!」
と怒っていたそうです。
可愛そうに、マルカートちゃんもこの下劣な男に騙されたようです。
タケさんの様に誠実で正直な人が、なんで勇者じゃなかったのでしょうか、なんかとても悔しいです。
”トントン”
「姉ちゃん、居る?」
もう一人の性格に問題がある勇者が、久々に遊びに来ました。
「入りなさい、ユウ」
「姉ちゃん、リュトルの弾き方教えてくんない。俺も噂の勇者に対抗しようと思ってさ」
・・・・こいつは、こいつは、この大馬鹿は。
なんか目の前が暗くなって来ました。
タケさん、何処にいるの。
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