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Ⅲ 西部
9 クスク山地帯東方
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翔・・・主人公、十六歳
彩音・・主人公の妹、十四歳
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、黒竜騎士団会計騎士隊騎士
ペペ・・・遺物に封じ込まれていた霊魂
ジレノミラ王国・・・翔達が飛ばされた国の名前
ジリウス国・・・ジレノミラ王国の西側の隣国
クスク山地帯・・・・ジレノミラ王国西部とジリウス国との間の国境山地
ケクル・・・クスク山地帯の南端ににある港町
ククル・・・下流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
キクル・・・上流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
カクル・・・ダム湖最上流の大断層直下の湖畔の船着き場
グロッサ草・・・蟻退治に使用する神経麻痺殺虫剤
ゲンゲジ草・・・蟻用の麻痺剤
ーーーーー
(カケル)
町の人達からの要望もあって、取り敢えず被害の大きいジレノミラ王国側から手を付けることにした。
カクルの船着き場から船でジレノミラ王国側の岸に渡り、蟻の残した踏み後を辿って行く。
最初の急な上り坂はジリウス国側と同じだが、こちらの方が少々長い。
喘ぎながら急坂を登り切ると、樹木に覆われた見通しの利かない尾根道に出た。
勿論この間、炎を飛ばして周囲の警戒は続けている。
二キロ先の炎が蟻の群を感知した、百匹程だろうか、まだ百匹相手はこの隊には荷が重いと判断し、木の上への退避を指示する。
五分も掛からずに蟻の群の行列がやって来た。
百匹が縦一列になって船着き場を目指して黙々と動いている、機械仕掛けの玩具のようだ。
山蟻は普通の蟻に比べやや小振りだが、その分動きが早く攻撃性に富んでおり、少々手強い。
燃え上がらせた木を進路に倒し、後ろの二十匹を分離した、丁度良い蟻討伐の実戦練習だ。
こちらは百人、五人で一匹なら楽勝と思って見ていたのだが結構手間取っている。
討伐方法は同じ、背後からよじ登り、頭に片刃の鶴嘴を打ち込んでから薬筒を取り付けハンマーで叩いて薬液を脳に注入するだけだ。
だが、そもそも背後に回ってよじ登ること上手く出来ていない、折角よじ登ぼれてもへっぴり腰で鶴嘴が上手く打ち込めない。
仕方が無いので五匹残して俺が退治し、その五匹を使って順番によじ登る練習をやらせた。
少し様になって来始めたと思ったら、船着き場から蟻が戻って来る気配が有った。
急いで五匹の蟻を処分して、木の上に退避する。
再び木の下を通り過ぎる蟻の後ろの奴らを二十匹程切り取って隊員達に襲わせる、多少危なっかしいが、最初に比べれば少し慣れたのだろう、なんとか頭に薬を打ち込むところまでは出来ている。
十匹はグロッサ草ではなく、ゲンゲジ草の汁で動きを麻痺させて、グロッサ草と藁で縒った太縄をぐるぐると急いで身体に巻き付け、縄端に灰で包んだ種火を仕込んで放つ。
仕込んだ種火を頼りにしばらく追跡するが、蟻が山道を移動する早さに追い付けず直ぐに見失なってしまう。
まあ、それも折り込み済みだ、その後は黙々と蟻の踏み後を辿って深夜まで山奥へ分け入って行く。
谷への下りと尾根への登りを何度か繰り返し、見晴らしの良い、水場が近い尾根道の樹上で一旦幕営する。
彩音はカクルの町の治療所への往診があるので砦に残して来ている。
なのであくまでも、蟻討伐に協力して貰う目的で俺のテントにマーニャを呼び寄せる。
実はまだペペに大丈夫と言われながらもまだ試してないのだ。
「カケル、その板は何なんだ。なんか変な音がするぞ」
”カシャ、カシャ、カシャ”
「明日の天気を占うだから気にするな、じゃっ今度はベットで横になってくれ」
逸る気持ちを抑えて十分に感じさせる、そして恐る恐る押し当ててみる、うん、本当に女神様がいらっしゃらない、腰に力を入れ体重を乗せる。
「うっ、痛い、カケル痛い」
「ちょっと我慢してくれ、直に良くなるから」
「でも、痛、おい、痛」
更に体重を乗せる。
「うわっ、痛、こら動くな、痛、痛、痛」
”ドピュ”
背中から空気中の何か入り込み、マーニャに流れ込んで行く。
「うわっ、なんだこれ、あっ、あっ、あっ、あー」
ビリビリがマーニャに流れ込みマーニャからもビリビリが返ってくる、良かった、マーニャも物凄く感じている様だ。
さて仕事だ、炎の感覚を伸ばし行く、居た、種火を持った蟻が居た。
巣まではだいぶ遠いい、かなりジレノミラ王国側に入ったところだ、地温が高いから大断層から熱湯が噴き出ている場所に近いのだろう。
東部下マナ原の蟻程の規模はないが、数十万単位の規模はありそうだ。
ここからでは遠すぎて巣の入口を探る炎の蜘蛛の巣が張れない、もう少し山奥に入らないと駄目だろう。
じゃっ、仕事はここまで、今日は納得が行くまで頑張ろう。
うん、国産品の慎ましさも好みだが、この舶来品のダイナミックさも捨てがたい。
ただ少し気になることが有る、少し離れた気の上から俺達を見張っている奴がいるのだ。
物凄く巧みに気配を消しており、普段の俺なら探っても気が付かないだろう。
明日皆に教えて置こう、だが今は、よしっ、四回連続で昇かせた、意識が飛んだようだ。
ぱちりと目を見開いてペペが乗り移った、じゃっ、改めてもう三発。
彩音・・主人公の妹、十四歳
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、黒竜騎士団会計騎士隊騎士
ペペ・・・遺物に封じ込まれていた霊魂
ジレノミラ王国・・・翔達が飛ばされた国の名前
ジリウス国・・・ジレノミラ王国の西側の隣国
クスク山地帯・・・・ジレノミラ王国西部とジリウス国との間の国境山地
ケクル・・・クスク山地帯の南端ににある港町
ククル・・・下流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
キクル・・・上流の谷を堰止めた場所に出来た町の名前
カクル・・・ダム湖最上流の大断層直下の湖畔の船着き場
グロッサ草・・・蟻退治に使用する神経麻痺殺虫剤
ゲンゲジ草・・・蟻用の麻痺剤
ーーーーー
(カケル)
町の人達からの要望もあって、取り敢えず被害の大きいジレノミラ王国側から手を付けることにした。
カクルの船着き場から船でジレノミラ王国側の岸に渡り、蟻の残した踏み後を辿って行く。
最初の急な上り坂はジリウス国側と同じだが、こちらの方が少々長い。
喘ぎながら急坂を登り切ると、樹木に覆われた見通しの利かない尾根道に出た。
勿論この間、炎を飛ばして周囲の警戒は続けている。
二キロ先の炎が蟻の群を感知した、百匹程だろうか、まだ百匹相手はこの隊には荷が重いと判断し、木の上への退避を指示する。
五分も掛からずに蟻の群の行列がやって来た。
百匹が縦一列になって船着き場を目指して黙々と動いている、機械仕掛けの玩具のようだ。
山蟻は普通の蟻に比べやや小振りだが、その分動きが早く攻撃性に富んでおり、少々手強い。
燃え上がらせた木を進路に倒し、後ろの二十匹を分離した、丁度良い蟻討伐の実戦練習だ。
こちらは百人、五人で一匹なら楽勝と思って見ていたのだが結構手間取っている。
討伐方法は同じ、背後からよじ登り、頭に片刃の鶴嘴を打ち込んでから薬筒を取り付けハンマーで叩いて薬液を脳に注入するだけだ。
だが、そもそも背後に回ってよじ登ること上手く出来ていない、折角よじ登ぼれてもへっぴり腰で鶴嘴が上手く打ち込めない。
仕方が無いので五匹残して俺が退治し、その五匹を使って順番によじ登る練習をやらせた。
少し様になって来始めたと思ったら、船着き場から蟻が戻って来る気配が有った。
急いで五匹の蟻を処分して、木の上に退避する。
再び木の下を通り過ぎる蟻の後ろの奴らを二十匹程切り取って隊員達に襲わせる、多少危なっかしいが、最初に比べれば少し慣れたのだろう、なんとか頭に薬を打ち込むところまでは出来ている。
十匹はグロッサ草ではなく、ゲンゲジ草の汁で動きを麻痺させて、グロッサ草と藁で縒った太縄をぐるぐると急いで身体に巻き付け、縄端に灰で包んだ種火を仕込んで放つ。
仕込んだ種火を頼りにしばらく追跡するが、蟻が山道を移動する早さに追い付けず直ぐに見失なってしまう。
まあ、それも折り込み済みだ、その後は黙々と蟻の踏み後を辿って深夜まで山奥へ分け入って行く。
谷への下りと尾根への登りを何度か繰り返し、見晴らしの良い、水場が近い尾根道の樹上で一旦幕営する。
彩音はカクルの町の治療所への往診があるので砦に残して来ている。
なのであくまでも、蟻討伐に協力して貰う目的で俺のテントにマーニャを呼び寄せる。
実はまだペペに大丈夫と言われながらもまだ試してないのだ。
「カケル、その板は何なんだ。なんか変な音がするぞ」
”カシャ、カシャ、カシャ”
「明日の天気を占うだから気にするな、じゃっ今度はベットで横になってくれ」
逸る気持ちを抑えて十分に感じさせる、そして恐る恐る押し当ててみる、うん、本当に女神様がいらっしゃらない、腰に力を入れ体重を乗せる。
「うっ、痛い、カケル痛い」
「ちょっと我慢してくれ、直に良くなるから」
「でも、痛、おい、痛」
更に体重を乗せる。
「うわっ、痛、こら動くな、痛、痛、痛」
”ドピュ”
背中から空気中の何か入り込み、マーニャに流れ込んで行く。
「うわっ、なんだこれ、あっ、あっ、あっ、あー」
ビリビリがマーニャに流れ込みマーニャからもビリビリが返ってくる、良かった、マーニャも物凄く感じている様だ。
さて仕事だ、炎の感覚を伸ばし行く、居た、種火を持った蟻が居た。
巣まではだいぶ遠いい、かなりジレノミラ王国側に入ったところだ、地温が高いから大断層から熱湯が噴き出ている場所に近いのだろう。
東部下マナ原の蟻程の規模はないが、数十万単位の規模はありそうだ。
ここからでは遠すぎて巣の入口を探る炎の蜘蛛の巣が張れない、もう少し山奥に入らないと駄目だろう。
じゃっ、仕事はここまで、今日は納得が行くまで頑張ろう。
うん、国産品の慎ましさも好みだが、この舶来品のダイナミックさも捨てがたい。
ただ少し気になることが有る、少し離れた気の上から俺達を見張っている奴がいるのだ。
物凄く巧みに気配を消しており、普段の俺なら探っても気が付かないだろう。
明日皆に教えて置こう、だが今は、よしっ、四回連続で昇かせた、意識が飛んだようだ。
ぱちりと目を見開いてペペが乗り移った、じゃっ、改めてもう三発。
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